大谷石と鉄骨の無機質なコントラストが唯一無二のモール。
宇都宮市街地から少し外れた下川俣町。住宅や田畑が入り混じる、ちょっとした郊外のこの場所に、鉄骨造で壁材
に大谷石を使った倉庫が3棟ある。
それぞれ大きなひさしを持ち、広い敷地の中、L字に囲むように配置されたこの場所は、寂れた倉庫群から華やかな店舗群へと生まれ変わった大空間。内装は基本的に大谷石むき出し、鉄骨むき出し、屋根下地むき出し。しかもよく見ると文字や数字が走り書きされ、かつての倉庫時代を物語る。しかしその荒々しさが逆にアジトのような、好奇心をくすぐる味わい深い雰囲気を醸し出している。
全区画5店舗のモールには、セレクトショップや創作和食の店があり、異業種同士の多彩な顔ぶれを見せる。この場所に集う店舗に共通するのは、「この敷地の、大谷石倉庫の雰囲気が好き」という思い。同じ好みのモノ同士が集った場所だからこそ、個性あふれる面々の世界観はそのままに、ゆるやかで居心地のよい場所を築き上げている。
使う人が魅力的なら、倉庫は自ずと魅力的になる。そんな思いから、壁材として積み上げられた大谷石の多孔質になぞらえ、この場所は「ポーラス」という名前が付けられた。たくさんの孔が吸収性を生み出すように、いろんな人が集まって、余地がいっぱいの倉庫にいろんな色や匂いが吸収されていく。そんな懐の深い場所になってほしいという願いは、いま確実に叶えられえている。
セレクトショップ「HoBow」
大谷石倉庫群の雰囲気に惹かれ、ポーラスに出店を決めたというセレクトショップ「HoBow」。その店舗は緑色に塗られた美しいトビラが目印。
洋服や雑貨を扱うため、大谷石特有のもろくて細かい粉じんは大敵だったという。そこでリノベーションの際、壁一面にニスを塗装した。作業は大変だったというが、大谷石がもたらす美しい雰囲気は何物にも代えがたかったそうだ。もちろん大谷石は店内の商品展示にも有効活用されている。
【DATA】
HoBow
TEL028-660-7112
http://hobow1984.com
大谷町ならではの大谷石を使った倉庫群。その素朴な魅力を持つ大空間には、モールとして活用することで新たな魅力が宿った。また人の心を楽しませる“衣”や“食” が存分に堪能できるので、大谷石倉庫の景観とともに味わってみてほしい。
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(出典/「Lightning 2018年2月号 Vol.286」)
Text/Y.Murosaku 室作幸江 Photo/A.Ochiai 落合明人