早稲田大学教授に聞いた! 闇市起源の横丁の歴史とは?

戦後の闇市と横丁の関係は、密接に結びついていることをご存知だろうか。闇市を起源とする横丁の歴史をスペシャリストである早稲田大学 人間科学学術院 橋本健二教授に解説していただき、横丁酒場を訪れるときのちょっとした楽しみを持ってもらいたいという願いがある。さぁ、闇市と横丁の歴史、酒場の世界へ飛び込もう。

早稲田大学 人間科学学術院 教授 橋本健二|1959年、石川県生まれ。東京大学教育学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)。専門は理論社会学。主な著書に「『格差』の戦後史」(河出書房新社)、「階級都市」(ちくま新書)など

闇市横丁の歴史の流れは戦後日本の縮図となっている。

そもそも横丁って何のこと?」と思われる方も少なくないだろう。辞書的に説明すると、メインストリートから横に入った道のことをすべて〝横丁〟というのだ。しかしそれでは扱う範囲が広大なので、今回は【戦後の闇市をきっかけにして生まれた、昭和レトロな雰囲気の飲食店街】を取り上げる。

横丁の歴史についてお話を伺ったのは、早稲田大学の橋本健二教授。闇市や階級社会を研究するスペシャリストだ。橋本教授いわく、横丁は大きく3つに分けられるという。

「ひとつ目が当時の闇市がそのまま残っている横丁。ふたつ目が戦後の早い時期(1948年~49)GHQの命令などによって移転させられて、代わりの場所が提供された横丁。3つめが闇市の場所で建て替えられて、飲食店街になった横丁です。つめのパターンが非常に多くありますね。なかでも珍しい例としては、新橋第一ビルが挙げられます。闇市があった場所にビルが建てられ、地下に闇市の店舗を集約させたのです」

この3つの分類で、各地の横丁を考えてみると新しい発見があるに違いない。東京にある横丁の定番メニューは〝もつ煮〟だろう。これにも歴史があると橋本教授は説明してくれた。

「もともと日本では獣の内臓を食べる習慣はあまりありませんでした。しかし戦前には労働者などの力仕事を担う人々が、安くて栄養源になるので食べていたのです。戦後になると物資が統制されましたが、なぜか内臓肉だけは手に入りやすかった。そこで駅前闇市の飲食店で、内臓肉を焼いた〝やきとり〟やもつ煮込みを提供するようになります。こうしてできたのが、駅前大衆酒場の始まりです」

もつ料理は闇市がきっかけとなって広まったという歴史、とても興味深い。橋本教授のお話は、いま平成世代の間で流行っている横丁酒場ブームにまで及んだ。

「いま若い世代は横丁酒場でお酒を飲むことが人気です。平成に生まれた世代がそのようなところに集まるのは、ふたつの理由があると考えています。ひとつは、端的に言えば安いから。若者はお金がないので、安くて美味しい酒場を探す。その時に横丁酒場のようなお店はまさしく彼らの求めていた場所なのでしょう。もうひとつは、パブリックな社会とは全く対極にあるようなものを求めているから。

IT化した現代は、お金と情報がめまぐるしいスピードで飛び交っている。そのような世の中を生きるからこそ、グローバルに対してのローカ ル、猛スピードに対してのスローペースである空間を求めているのではないでしょうか」

技術が進歩すればするほど、こうした横丁酒場の魅力は増してゆくのかもしれない。一方で、恵比寿横丁のような「ネオ横丁」の存在に対し、橋本教授は「若者がはじめにそういった場所に行き、そのあとで本物の横丁酒場に行くきっかけになればいいのではないか」とほほ笑んでいた。

横丁分類表

1.当時の闇市がそのまま残っているもの。

例/新宿「思い出横丁」、吉祥寺「ハモニカ横丁」など

2.戦後の早い時期に移転させられて、代わりの場所が提供されたもの。

例/池袋「美久仁小路」、新宿「ゴールデン街」、三軒茶屋「三角地帯」など

3.闇市の場所で建て替えられて、飲食店街になったもの。

例/新橋「新橋第一ビル」、大井町エリア、赤羽エリアなど

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

ロンドン生まれのアイウエアブランド「CUBITTS」が日本に本格上陸! 人気の秘密に迫る。

  • 2026.05.19

英国・ロンドン生まれのアイウエアブランド「キュービッツ」。日本へ本格上陸したばかりでまだ多くを知られていない、その全容を紐解く。 ロンドン生まれ質実剛健な実力派 2013年にロンドンで創業、2025年に日本へ本格上陸を果たした「キュービッツ」。本国では、新鋭ながら圧倒的な知名度を誇り、ビスポークも手...

磨き続けた伝統が、新たな定番を生み出していく。「アリゾナフリーダム」の新作に注目

  • 2026.06.03

長く愛される定番には理由がある。そして、その定番を更新し続ける覚悟があるからこそ、プロダクツは生き続ける。今回、紹介する新作は、奇をてらった変化ではなく、受け継がれてきた意匠や職人技を礎にしながら、細部にわたり静かな進化を重ねた美しい作品たち。変わらないために進化し続ける。そこには揺るぎないクラフト...

アイヴァン史上初の完全復刻。“ヒストリック コレクション”誕生の裏側に迫る!

  • 2026.05.22

「アイヴァン」2026年春夏の新コレクションとして突如発表された“ヒストリック コレクション”。これまでにもアーカイブを現代に甦らせる試みは幾度か行われてきたものの、どれも細やかなアップデートが施されていた。文字通りの“完全復刻”は今回が初となる。 アイヴァンには立ち返るべき原点がある どこぞのヴィ...

革ジャン好きなら一度は通るべき! 「No,No,Yes!」の最上級オーダー“アルチザン”とは?

  • 2026.06.01

「世界にひとつだけの革ジャンを作る」。それは、レザーラバーの憧れだ。革好き注目のブランド「No,No,Yes!」が誇るオーダーメニューの中でも最上級に位置する「アルチザン」とはいったいなんなのか? その正体に迫る。 革ジャンの伝道師・モヒカン小川が実際に“アルチザン”を体験 これは単なる革ジャンの話...

日本人に最適化された新作の“JAPAN LIMITED”に注目!「MOSCOT」現代に引き継がれるアメリカンクラシックのDNA

  • 2026.05.20

1915年にNYで創業し、アイウエアデザインの王道を形づくった「モスコット」。多様なデザインで溢れるいまこそ、伝統に裏打ちされたクラシックな佇まいに惹かれる。 新作の“JAPAN LIMITED”のラインナップを紹介! 2016年よりスタートした“JAPAN LIMITED”は、インラインにはないノ...

Pick Up おすすめ記事

アメリカンクラシックの原点「ディグナ クラシック」の[ジミー]なら、カラバリ・仕様も豊富で自分好みの1本が見つかる!

  • 2026.05.21

50sアメリカンスタイルを踏襲した「ディグナ クラシック」の[ジミー]は、シンプルなデザインやクラシックな世界観から多くの人に愛される名作。その人気ゆえ、仕様やカラーのバリエーションが非常に豊富な[ジミー]の全容をいま一度おさらいする。 955E“Jimmy”とはどんなメガネ? 1950年代にアメリ...

落語家たちが洋装に身を包む会、第4弾! 落語会「師匠お似合いですよ」の舞台裏で注目の落語家たちをSNAP!

  • 2026.05.18

アメカジを提案するファッションブランド「ゴールデンベア」が主催する落語会、その名も「師匠お似合いですよ」。弊誌も師匠方のスタイリングを担当。第4回目となる今回も大盛況でした。楽屋裏で撮影したみなさまの素敵な着こなしをお届けします! 落語家たちが洋装に身を包む会「師匠お似合いですよ」の舞台裏に潜入! ...

ロンドン生まれのアイウエアブランド「CUBITTS」が日本に本格上陸! 人気の秘密に迫る。

  • 2026.05.19

英国・ロンドン生まれのアイウエアブランド「キュービッツ」。日本へ本格上陸したばかりでまだ多くを知られていない、その全容を紐解く。 ロンドン生まれ質実剛健な実力派 2013年にロンドンで創業、2025年に日本へ本格上陸を果たした「キュービッツ」。本国では、新鋭ながら圧倒的な知名度を誇り、ビスポークも手...

革ジャン好きなら一度は通るべき! 「No,No,Yes!」の最上級オーダー“アルチザン”とは?

  • 2026.06.01

「世界にひとつだけの革ジャンを作る」。それは、レザーラバーの憧れだ。革好き注目のブランド「No,No,Yes!」が誇るオーダーメニューの中でも最上級に位置する「アルチザン」とはいったいなんなのか? その正体に迫る。 革ジャンの伝道師・モヒカン小川が実際に“アルチザン”を体験 これは単なる革ジャンの話...

アイヴァン史上初の完全復刻。“ヒストリック コレクション”誕生の裏側に迫る!

  • 2026.05.22

「アイヴァン」2026年春夏の新コレクションとして突如発表された“ヒストリック コレクション”。これまでにもアーカイブを現代に甦らせる試みは幾度か行われてきたものの、どれも細やかなアップデートが施されていた。文字通りの“完全復刻”は今回が初となる。 アイヴァンには立ち返るべき原点がある どこぞのヴィ...