革靴巧者のローファーの楽しみ方とは? 「どの国のローファーにも感じるアメリカ」|「GMT」代表取締役・横瀬秀明さん

これまでに様々な革靴を目にし、足を通してきた革靴巧者にローファーについて語ってもらうと、それぞれのローファーに対する考え方や認識の違いが見えてきた。今回は、「GMT」代表取締役・横瀬秀明さんに貴重なコレクションとともに、存分に語ってもらった。

「GMT」代表取締役・横瀬秀明|1965年、東京生まれ。83年に靴の輸入販売を手掛ける「ワールドフットウェアギャラリー」に入社。94年に独立し、GMTを設立。最近の趣味は、様々な靴でウォーキングをし、靴を試すこと

「どの国のローファーでも、根幹にはアメリカが宿っているんです」

革靴業界で、約40年間経験を積み重ねてきたGMTの代表取締役、横瀬さん。その長いキャリアの始まりは1足のローファーを目にしたことに始まる。

「高校生の頃、渋谷にあったセレクトショップ『ミウラ アンド サンズ』にかざってあった、『リーバイス』の[501]に赤いソックス、そこに黒のペニーローファーを合わせたディスプレイを見て、その格好良さに衝撃を受けました。当時、価格は2万8000円ほどで、現在であれば安く感じますが、当時のローファーでは高級で、学生の自分にはどうしても手が届きませんでした。

その時の印象がずっと頭の中に残っていて、『どうにかしてジーエイチバスのペニーローファーを手に入れたい』という下心から、卒業後に『ジーエイチバス』を取り扱う靴の輸入販売会社に入社をしました。

入社後すぐに、念願だった『ジーエイチバス』のペニーローファーを社販で買いました。営業も担当させてもらい、『やっと、念願かなった』という思いでした。

1980年当時、アメカジがものすごく流行っていて、『ジーエイチバス』や『コンバース』、『スペリートップサイダー』などをかなりの人数が履いていました。『持っていないと、ダサい』、そんな空気感があるほどに人気がありました。しかし、ファッションのトレンドがめまぐるしく変わっていく時代で、『アメリカのシューズは、少し旧い』といった流れになり、『ジーエイチバス』をはじめ、アメリカのブランドが売れなくなるんです。

私自身、そういった流行に流されるというわけではなく、アメリカがずっと好きだったのですが、仕事としてフランスやイタリアなどのブランドも取り扱っていくことになり、そこで様々なブランドに触れていきました。『パラブーツ』もその頃、一気に火がつきました。そういった時代の流れを、『ローファーが欲しい!』という下心をきっかけに経験をしたことで、いまのGMTがあります。

ファッションの流行と靴の流行はまったく違い、靴というものは、売れていなくとも何かのファッションが流行る時には、選択肢として市場に存在していなければいけない。世界中の靴に触れたことで、そういったシューズの独特の文化を学ぶことができましたね」。

その後、1994年にGMTを立ち上げる横瀬さん。様々なファッションの流行を経験し、やはりアメリカの靴が好きなんだと再認識していく。

「高校生の頃に見た、デニムに赤いソックス、黒いローファーのスタイルがずっと心の底に引っかかっていて、アメリカやフランス、イタリアなど様々な国のファッションを経て、アメリカがやっぱり好きだなって気がついたんです。とは言っているものの、僕が持っているローファーはアメリカ以外のものが多く、言っていることと、やっていることが合っていないと思われそうですが、私にとってはローファーというシューズ自体が、アメリカなんです。

『ジーエイチバス』がローファーの元祖と言われるように、どのブランドのローファーもどこか“アメリカ的”であると私は思うんです。例えば『ビルケンシュトック』はドイツのブランドですが、アメリカのヒッピーファッションで火がつき、現在に至る。そうして、アメリカのファッションの足元として定着すると、『ビルケンシュトック』は欠かせないものになっていくんです。

私の中では、そういった理由からローファーはアメリカの文化なんだなと思うんです。学生の頃に『ジーエイチバス』のローファーに憧れ、この業界に飛び込み、ローファーをずっと見てきました。履く人や時代が変わってもその年代に順応し、どんなスタイルにも寄り添う懐の深さを感じると、『やっぱりローファーっていいな』と思わずにはいられないんですよね」。

いまなお革靴への愛情と探究心を失わない横瀬さん。まさにその姿勢が、靴業界を面白く、そして豊かにしていく原動力なのかもしれない。

右から、アメリカ、フランス、イタリアと国ごとに並べられたローファー。これがすべてではないそうだが、当日に履いていたものと合わせると20足。すべて、かなり履き込まれているが、きちんと手入れがされ、使用・保管を繰り返している
横瀬さんがローファーを着用する際の、こだわりのひとつがカラーソックスを合わせること。ノークッションのパンツで、足元に彩りを加えたスタイリングを楽しんでいる
GMTが現在開発中という、スウェード靴補色用のチョーク。意外と手入れの仕方がわからないスウェード靴のお手入れが手軽にできる。発売開始まであと少し、続報を待て

(出典/「2nd 2025年6月号 Vol.212」)

この記事を書いた人
なまため
この記事を書いた人

なまため

I LOVE クラシックアウトドア

1996年生まれ、編集部に入る前は植木屋という異色の経歴を持ち、小さめの重機なら運転可。植物を学ぶために上京したはずが、田舎には無かった古着にハマる。アメカジ、トラッド様々なスタイルを経てアウトドア古着に落ち着いた。腰痛持ちということもあり革靴は苦手、持っている靴の9割がスニーカーという断然スニーカー派。
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