1.VOLKSWAGEN TRANSPORTER(フォルクスワーゲン トランスポーター)|ドイツ
世界中のバンに影響を与えたといわれるタイプ2をはじめ、ワーゲンのトランスポーターは、世界中で愛されているロングセラーのバンである。時代にフィットしたデザインや使い勝手はもちろんだが、ウエストファリアなどキャンピング仕様のモデルも年式を問わず多く存在していることからも、アクティブな人に愛されるクルマとしての伝統もしっかりと受け継がれている。
【T1(1950~)】世界中のバンがお手本としたワーゲンバス。
’50年に登場して以来、商業車やレジャーヴィークルとして、世界中で愛されるタイプ2。フロントウインドーが二分割になっているのがこのモデルの最大の特徴。その使い勝手の良さは世界中のバンに影響を与えたエポックメイキングな車両といえる。アメリカをはじめアジア、アフリカにも輸出され、ビートル同様、いまも世界中で愛されているバンである。
【豆知識】カスタムバンカルチャーはヒッピー文化とも密接にリンク。
’50年登場のVWバスに触発され、’60年代半ばには各メーカーからバンがリリースされ、これらバンをカスタムし、サーフビークルなどに使う若者が登場する。これがカスタムバンの始まりだ。その後、’60年代後半のヒッピーカルチャーとも密接にリンクし、バニング文化が花開いていくのだ。
【T2(1968~)】大きさを変えずに外装デザインを大幅にアップデート。
レイトバスの愛称で親しまれるトランスポーターの二世代目は、’68年に初の大きなモデルチェンジを行い、フロントウインドーは湾曲した一枚になったことから、ベイウインドーとも呼ばれる。フロントをはじめ、デザインはかなり変化したが、基本的なボディの大きさや構造は変更キープしている。
【T3(1979~)】外装だけでなくエンジンも大幅に変更した。
’79年のモデルチェンジでは、ボディがひとまわり大型化。エンジンは引き続きリアに水平対向4気筒を搭載していたが、’83年からはヘッドやシリンダーを水冷化。日本ではカラべル、北米ではバナゴンと呼ばれている。近年では次世代の旧車として注目され、価格も高騰し始めている。
【T4(1990~)】ミニバンとしてのスタイルを確立した4世代目。
ついにT4モデルからはFFレイアウトとなり、車格も大きくなり、よりモダンなデザインへと変更。いわゆるミニバンと呼ばれるスタイルで前期モデルのみ日本に正規輸入されたが、その後日本での取り扱いはなくなってしまった。
【T5(2003~)】T4のスタイルを引き継いだ、モダンなデザイン。
T4モデルの途中から生産がVW商用車部門に移管したことに伴い、日本やアメリカへの輸出が行われなくなった。そのため日本で見かけることは少ないが、欧州らしいスタイリッシュなデザインだけに、日本でもコアなファンが多い。
【T6(2015~)】ドライブトレインを大幅に変更した現行モデル。
’15年のモデルチェンジで6代目となったトランスポーター。外装に関してはT5のデザインを継承しているため、ぱっと見はあまり変わっていないがLEDヘッドライトや、ドライブトレインなど、細部が現代的な仕様へ変更された。
2.FORD ECONOLINE [E series](フォード エコノライン)|アメリカ
フォードがGM、クライスラーに先駆けてデビューさせた、キャブオーバーレイアウトのワンボックスバンがエコノラインだ。’80年以降はアメリカのフルサイズバンで最大のシェアを持ち、’14年の生産終了まで58年にわたって製造された、フォードで第二位のロングセラーモデルだ。
【ECONOLINE VAN / FALCON ECONOLINE(1961~)】キャブオーバースタイルの小型バンとして登場。
VWタイプ2の対抗モデルとして、’60年にファルコンエコノラインとして発表された。3列シートのパッセンジャーバンと、側面に窓のないカーゴバン、そして後部が荷台となるピックアップが存在した。とぼけた顔のヘッドライト&ベゼルが大きな魅力。
【ECONOLINE VAN(1968~)】最初のモデルチェンジで大型化&エンジン搭載位置変更。
初代同様にユニボディ構造ながら、ボディの大型化に伴って各部は大幅に強化された。ホイールベースはショートボディで15インチ、ロングボディでは33インチも延長。また初めて搭載されるエンジンに、302ciのV8エンジンがラインナップされた。
【ECONOLINE VAN(1975~)】より強固な作りを目指してボディオンフレーム構造に。
ユニボディ構造からフレーム構造を持つフルサイズバンとしてモデルチェンジ。フレーム構造となることで、キャンピングカーなどに使うカッタウェイシャシーが登場。またコンバージョンモデルのベースとしても人気を博した。
【ECONOLINE VAN / E-SERIES(1992~)】3代目の基本構造を継承しつつ内外装を新たにデザイン。
3代目モデルの基本構造を踏襲しつつ、Fシリーズピックアップと多くのパーツを共通化して登場した4代目モデル。さらに’01年からエコノラインの名称は廃止され、Eシリーズという呼称に変更される。
【E-SERIES(2008~)】大幅フェイスリフトでトラックと共通グリルデザインに。
’08年に大幅マイナーアップデートが行われ、フロントグリルをはじめ、フェンダーやフロントフードなど多くのパーツが変更となった。’14年に生産を終了するが、キャンピングカー用のカッタウェイシャシーは継続生産中。
3.CHEVROLET CHEVY VAN(シボレー シェビー バン)|アメリカ
VW(フォルクスワーゲン)タイプ2同様に、リアエンジン構造のシボレーコルベアバンが’65年に生産を終了したことを受け、’64年に登場したのがGシリーズと呼ばれるキャブオーバースタイルのバンだ。CHEVY VAN(シェビーバン)という愛称で親しまれたキュートなバンは、その後幾度ものモデルチェンジを経てフルサイズバンのEXPRESSと名称を変えつつ、現在まで生産を継続している唯一のアメリカンフルサイズバンだ。
【CHEVY VAN(1964~)】コルベアバンの後継モデルは低コストでライバルを圧倒。
コルベアバンの後継として’64年に登場したシェビーバンは、ユニボディ構造の車体に平面ガラスを採用。さらに側面の窓やヒーター、助手席までオプションとする徹底した低コスト設計で販売価格を抑えることですでに発売されているライバルに対抗した。
【CHEVY VAN(1967~)】より強力な輸送力を得るべくV8エンジン搭載モデルが登場。
基本構造はキャリーオーバーしたまま、フロントデザインを変更。またフロントのウィンドーシールドが平面から湾曲したものに変更となった。エンジンルームを拡大し、これまでの直4や直6だけでなく、V8エンジンが選択できるようになった。
【CHEVY VAN(1971~)】時代のニーズに合わせてボディは徐々に大型化。
’71年のモデルチェンジによってボディは大型化され、ビッグブロックが選択可能となったエンジンは、これまでのキャブオーバーからフロントへと移動。短いボンネットが備わるスタイルとなった。
【EXPRESS(1995~)】新型プラットフォームで新世代のバン「エクスプレス」に。
見た目こそ先代と似ているが、全く新しいGMT600シャシーを使った新造車。このモデルからエクスプレスという名称となり、ショートボディで、全長約5.6m、ロングボディは約6mを超える巨大な車両となった。
【EXPRESS(2003~)】大幅フェイスリフトでより現代的なマスクに。
’03年にフェイスリフトを行いピックアップ同様のデザインのフロントフェイスとなった。’14年にライトデューティなG1500の生産を終了。現在はよりヘビーデューティなG2500やG3500が継続して生産されている。
▼エクスプレスについてはこちらの記事をチェック!
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4.DODGE VAN(ダッジ バン)|アメリカ
GMやフォードに遅れること数年が経過した’64年、アメリカビッグ3の一つであるクライスラーはVWタイプ2を意識したワンボックスカー市場に、ダッジブランドから新開発のA100/A108で参入を果たす。その後’71年のモデルチェンジを経て、’03年まで基本構造の変わらないBシリーズが登場。’70年代にはバニングブームの牽引役として’70年代にはトップシェアを誇った。
【A100 / A108(1964~)】ダッジバンの祖先となったクライスラー初のワンボックスモデル。
ダッジバンの原型となったのが、このA100だ。すでにコルベアワゴンやエコノラインが発売され、遅れをとっていたクライスラーは、デビュー翌年にはV8エンジンを設定。キュートなルックスと高い実用性で人気を博した。
【TRADESMAN VAN(1971~)】フルサイズ化し、バニング文化を生み出したベストセラーモデル。
A100よりひとまわり大きなフルサイズバンとしてデビュー。パッセンジャーモデルはスポーツマンと呼ばれた。当初からV8をラインナップし、積極的にRV的な使い方をプロモーションし、バニングの火付け役となった。
【TRADESMAN VAN / RAM VAN(1979~)】基本構造はそのままにフロント周りを中心に大幅フェイスリフト。
Bシリーズ初のモデルチェンジは、ボディの基本構造をそのままに前後ライト周りの意匠を中心に変更。’80年以降はラムブランドに統一され、トレーズマンの名称はラムバンに変更となった。
【RAM VAN(1994~)】RAMピックアップに合わせて再びフェイスリフトを慣行よりモダンなスタイルに。
2回目のモデルチェンジも基本構造は変わらず、フェイスリフト中心の変更となった。つまりBシリーズの基本ボディシェルはデビューから’03年の生産終了まで全く変わらなかったということになる。
5.MERCEDES-BENZ V-CLASS(メルセデスベンツ Vクラス)|ドイツ
元々商用グレードだったW638型のVitoをベースに豪華装備で乗用グレード化したのがVクラスだ。VクラスとVitoは他のメーカーではいわばワゴンとバンの関係に近い。貨客両用ではなく、乗用に特化した豪華なが備わるVクラスは、メルセデスベンツの名に恥じないピープルムーバーなのだ。
【MB100[Type631](1981~)】Vクラスの始祖となったFFレイアウトの小型コマーシャルバン。
モデルNo.からも判る通り、Vクラス誕生のきっかけとなったのが、このMB100だ。スプリンターなどのフルサイズバンよりもひとまわり小さなコマーシャルバンとして’81年に登場。そのコンセプトはVクラスに受け継がれた。
【W638](1996~)】商用グレードをベースに豪華装備で乗用グレード化ベンツ初の本格ミニバン。
商用車であるVitoをベースに豪華装備を施し3列シート化したのがVクラスだ。仕向け地やグレードによってさまざまなエンジンが選択可能だったが、日本にはVW製2.8リッターVR6や2.3リッター直4が搭載された。
【W639](2003~)】コンセプトはそのままに自社製V6エンジンを使ってコンポーネンツをFR化。
基本シルエットはほとんど変わりないが、これまでのFFからFRにレイアウトを変更。このためドイツなどではVクラスではなく、新車種Vianoとして登場した。ただし日本市場では’06年以降再びVクラスとして販売された。
【W639](2010~)】ファイスリフトと内装のリニューアルでより近代的に。
’10年にフェイスリフトが行われ、合わせて内装のでデザインも一新された。引き続きドイツではVianoと呼ばれ、新世代のディーゼルエンジンがラインナップに加わったが、日本市場では3.5リッターV6エンジンのみとなる。
【W447](2014~)】ニューモデルは最新のディーゼルエンジンで世界戦略車に。
’14年に登場したニューモデルは、Metrisの名前で初めて北米市場に輸出された。世界的にVクラスが標準名となり、2種類のディーゼルターボエンジンが選択可能。オートマチックは7速化され、燃費も大幅に向上した。
6.TOYOTA HI ACE(トヨタ ハイエース)|日本
トヨエースの小型版として’67年に登場するハイエースは、当時の中小企業に最適な貨客両用のワンボックスとして人気を博した。バブル時代にワゴンが豪華装備となるなど時代に合わせた変化を遂げつつ、いつの時代も働く自動車として活躍し、昨年50周年を迎えるロングセラーモデルだ。乗用車、商用車の両面から見ても傑作バンだ。
【H10系(1967~)】トヨエースの小型版としてモノコックボディのハイエースデビュー。
FR方式のキャブオーバースタイルで、’67年2月デビューのピックアップに続いてワゴンモデルが’67年10月に登場。その後デリバリーバン、そしてロングボディのコミューターと、現在のラインナップはほぼ完成している。
【H20〜H40系(1977~)】丸目二灯の可愛らしいフロントフェイスでラインナップも拡充。
ヘッドライトが丸目四灯から、丸目二灯に変更された2代目モデル。早くもバンには3種類のホイールベースを設定し、荷室面積は大幅に拡大。さらに’79年には2.2リッターディーゼルエンジンも追加される。
【H50系(1982~)】RVブーム搭載でワゴングレードの人気急上昇。
特徴的な縦に並んだ角目四灯ヘッドライトを持つ3代目は、RVブームを追い風にワゴンのグレードを充実。オールフラットシートや、サン&ムーンルーフと呼ばれる天窓を備えたモデルを設定。ファミリーユースが定着した。
【H100系(1989~)】ワゴンを豪華装備化15年販売されたロングセラー。
’89年に登場したH100系は、バンとワゴンの差別化をより明確にし、ワゴンの最上級グレードは内装も非常に豪華なものとなった。また’04年のH200系登場まで15年にわたって生産されたロングセラーとなった。
【H200系(2004~)】ワイドボディを追加し再び商用車重視となった現行モデル。
先代のワゴンの豪華グレードはアルファードに統合したことで、再び商用車の性格が強くなった現行モデル。また初めてワイドボディが登場し、積載能力が格段に向上した。デビューから15年が経過したロングセラーでもある。
7.NISSAN CARAVAN(ニッサン キャラバン)|日本
先行してデビューしたトヨタのハイエースに対抗すべく、キャブオーバースタイルのワンボックスとして登場したキャラバンは、時代に合わせた装備の拡充やモデルチェンジを続け、現在は5代目モデルとなるE26型が現行型となる。日産を代表する働く自動車として日本全国で活躍中だ。
【E20系(1973~)】特徴的な丸目四灯のフロントマスクを持つ初代モデル。
グリルにインストールされた丸目四灯ヘッドライトが特徴的な初代モデルは、デビュー当初から標準ボディとロングボディの2種類をラインナップ。3/6人乗りのバン、9人乗りのコーチ、15人乗りのマイクロバスが設定された。
【E23系(1980~)】キープコンセプトながら各部が近代化された2代目モデル。
初代モデルのコンセプトを継承しつつ、ヘッドライトを角目四灯に変更するなど、よりモダンとなった2代目モデル。コーチには電動サンルーフ、回転体座シート、ボディサイドのデカールなど、豪華な装備が多数用意された。
【E24系(1986~)】V6エンジンやデジタルメーターなど豪華装備が充実。
乗用モデルはデジタルメーターやVG30E型3リッターV6エンジン、プラネタルーフなどハイエース同様に装備の豪華化が進んだ。また乗用モデルは’97年にエルグランドとして独立。再びグレード体系が簡素化された。
【E25系(2001~)】エルグランド独立で再び商用グレード中心のモデル体型に。
エルグランドが独立したことで、バンとマイクロバスのみとなったE25型は、ロングと、スーパーロングの2種類を設定。さらにモデル中盤に再び乗用のコーチを復活。11年もの間活躍するロングセラーとなった。
【E26系(2012~)】ハイエースに対抗すべく全面刷新された5代目モデル。
NV350キャラバンとしてモデルチェンジした5代目モデル。ハイエース同様にワイドボディやハイルーフなど豊富なボディバリエーションを誇り、ワゴンにはエンジンのインテリジェントキーやプッシュスターターなどが備わる。
8.MITSUBISHI DELICA(三菱デリカ)|日本
ハイエースとほぼ同時期に市場投入されたデリカは、元来ピックアップの派生車種として登場したワンボックスを始祖に持つ。その後オフロードテイストを持つ独自路線を採りながら現在まで進化を続けている。
【COACH(1969~)】初代モデルからRVユースを意識。
’69年登場のデリカバンには、当初からコーチと呼ばれる乗用モデルがリリースされ、キャンピングキットなどのオプションが設定されるなど、早くからRV志向の販売形態をとっていた。
【STARWAGON(1979~)】小型車枠いっぱいにサイズアップを果たした2代目。
小型車枠いっぱいにサイズアップを果たした2代目は、早くからフルリクライニング機構や回転対座シートなどを採用。さらに’82年にフォルテのシャシーを流用した国産小型キャブオーバー車初の4WDを追加する。
【STARWAGON(1986~)】モノコックボディが採用された3代目。
モノコックボディが採用された3代目は、キープコンセプトながら中身が大幅に進化。また4WD車は大型バンパーガードが装着されるなど、オフロード性能をより追求。またクリスタルライトルーフなども人気を博した。
【SPACE GEAR(1994~)】
同じデリカながら、2代目パジェロをベースとした派生車種に変更。キャブオーバーからフロントエンジンとなり、ボディも大型化された。パジェロ譲りの4WD性能で、オフロードイメージはより強くなった。
【D:5(2007~)】再びフルモデルチェンジを経て、D:5に。
再びフルモデルチェンジを経て、D:5の名前がつけられた。アウトランダーなどと共通プラットフォームとなり、従来のFRベースからFFベースとなった。4WDシステムも電子制御式に進化。走行中でも切り替えが可能となった。
【D:5(2019~)】ガソリンエンジンは廃止し、エンジンはディーゼルのみに。
フェイスリフトを中心に大幅アップデート。ダイナミックシールドコンセプトの厳ついグリルが話題となった。ガソリンエンジンは廃止し、エンジンはディーゼルのみの設定に。インパネ周りも大胆に意匠変更された。
(出典/「Lightning 2020年8月号 Vol.316」)
Text/D.Katsumura 勝村大輔
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