ついに『枯れたボディ』なんて言わなくてもよくなった
従来の『MacBook Pro 13インチ(M1、M2)』に使われていたボディは、2016年に登場したもので、すでに7年もの年月を経ている。そのボディに最新のチップを乗せ、『Pro』と称して販売していたのが、これまでのMacBook Pro 13インチだ。
ティム・クックは2022年のWWDCで『世界で2番目に売れているノートパソコン』と言っていたが、筆者としては、その素性からあまりお勧めできるパソコンだとは思っていなかった。上の原稿にも書いた通り、ほぼ同じ価格なのであれば、ディスプレイ、全体の設計も新しいMacBook Air(M2)の方が安心して勧められる。それでも『Pro』という名に惹かれて買う人がいたら、それは誤解というものだ。
しかし、ようやくMacBook Pro 13インチ(M2)がラインナップから去り、MacBook Pro 14インチ(M3)が登場することになった。実質的な世代交代だ。
新しいMacBook Pro 14インチ(M3)は、現行のMacBook Pro 14インチのボディにM3チップを積んだもの(少々変更はあるが、それについては後述)。つまりは最新鋭のチップと、美しいLiquid Retina XDRディスプレイ、素晴らしい音を奏でるフォースキャンセリングウーファーを内蔵した6スピーカーサウンドシステム、多彩なポート……にM3チップを付け加えることになった。
たしかに、 兄貴分であるM3 Pro/Max搭載機ほどのパワーはないかもしれないが、『プロフェッショナル』の仕事のニーズはさまざまで、マシンパワーの必要性はほどほどでも、プロレベルのディスプレイやスピーカー、拡張性が必要な人はいる。今回のMacBook Pro 14インチ(M3)はそういう人のためのマシンとしてジャストフィットだと思う。
グレードの高い『Pro』ならではの本体
実際使ってM3チップのパフォーマンスを体感する前に、このモデルの詳細を愛でてみよう。
ディスプレイは上位モデルと同じ、3,024×1,964ピクセルのLiquid Retina XDRディスプレイ。このディスプレイはバックライトにマイクロディミングシステムを持つミニLEDバックライトを内蔵している。どういうことかというと、従来のディスプレイは全体がバックライトで光って、その一部を液晶が覆うことによって明るさを表現していたのだが、マイクロディミングシステムは一部分だけを消灯する、もしくは明るさを調整することができるのだ。
これにより、黒の部分は本当に光がないことになり、100万対1という途方もないコントラスト比を実現している。従来のディスプレイでは完全な黒を表示していても、一定の明るさで光っているバックライトの光が少し漏れてきていた。完全な黒にはならなかったのだ。しかし、MacBook Pro 14インチディスプレイは、そのミクロな部分だけのLEDバックライトを消灯してしまうので、ほぼ完全に黒の表現が可能になるのだ。
音は、上下両側、対称に振動することにより、振動を打ち消しながら迫力のある低音を実現するフォースキャンセリングウーファーを含む6スピーカーで空間オーディオを実現している。マイクは3アレイで周囲の雑音を消し、ビデオ会議用のカメラは1080pと高画質で、iPhoneと同様コンピューテーショナルビデオにより、明るさや彩度が美しくなるように制御されているので、ビデオ会議で健康的な顔を相手に見せることができる。
MacBook Pro 13インチ(M2)には外部ポートが電源も含めてThunderbolt / USB 4ポート×2しかなかったが、新しいMacBook Pro 14インチ(M3)では、それに加えてMagSafe 3(電源)、HDMIポート、SDXCカードスロットが設けられており、さまざな周辺機器を同時に使えるようになった。
たとえば、電源に繋いだまま、 SDカードや、外部SSDから外部SSDに直接コピーするとか、アダプターなしでSDカードを読んだり、外部ディスプレイやプロジェクターに繋いだりといった、これまでにできなかったことが色々とできるようになる。
上位モデルと微妙にポートが違う
ちなみに、上位モデルのMacBook Pro (M3 Pro/Max)と違うのは、右側のThunderboltポートがないことと、Thunderboltポートの仕様が微妙に違うこと(Thunderbolt / USB 4→Thunderbolt 4……転送速度などが違う)など。これは、無印Mシリーズチップの制限によるものと思われる。
M3チップの素晴らしいパフォーマンス
ベンチマークテストはワクワクするものだった。例によって、今回もベンチマークにはGeekbench 6を使った。
結果は、アップルの主張するように十分に早く、一部、MacBook Pro(M1 Pro)……つまり筆者の私物マシン……の性能を上回るほどのものだった。
MacBook Air(M2)との差も十分なもので、M2→M3世代の進化をうかがわせる。
参考までに、一番左に、2020年の最後のIntelチップを乗せたMacBook Airのベンチマークを載せておく。たった3年半ほどの差だが、マルチコアで4.4倍、GPUのOpen CLで4.1倍、Metalで5.7倍の差がある。これはもう話にならないほどで、我々が「Intel Macを使ってる人は、一刻も早く乗り換えて欲しい」というのは、これがゆえである。
新しいMacBook Pro 14インチ(M3)は、MacBook Proとしては最下位のラインナップだが、一般的な用途、多くの仕事においては十分以上の性能を持つ。これ以上、つまりM3 Pro/Maxを必要とするのは、ちょっと特殊な仕事(8K映像の複雑な編集とか、3Dレンダリングとか、数百以上のトラックを持つ音楽の制作とか、大きなアプリケーションのビルドとか)をしている人だけだと思う。そして、そういう人は、私の記事なんか読まなくても、どんなマシンが必要かわかってるハズだ(それがプロというもの)。逆に言えば、どういうマシンを買っていいか迷っているがM3でいいのかどうか分からない……という人は、M3で十分だということだ。
ようやく安心してお勧めできる
冒頭にも述べたように、そういう超絶的なマシンが必要でなくても、拡張性や美しいディスプレイ、良いスピーカーが必要な人は数多くいるハズだ。そんな人に、このMacBook Pro 14インチ(M3)は、ピッタリだ。
残念ながら日本では円安の影響で「安い!」とは言いにくい価格だが、MacBook Air 13インチ(M2)、MacBook Pro(M3 Pro/Max)と較べても納得いく価格設定だと思う。アップルの比較ページで、十分に悩んでいただきたい。
Macのモデルを比較する
https://www.apple.com/jp/macbook-pro/compare/
(村上タクタ)
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