本記事はアップルからの貸与と許可を受け、発売前に先行レビューをお届けする。
『世界に2番目に売れているノートパソコン』なのだそうだが
2022年6月7日(日本時間)に開催されたWWDC(世界開発者会議)で発表された、新世代のApple Siliconチップ『M2』を搭載する最初のモデルとして、MacBook Proの13インチモデルが、6月24日に発売される。
初のM2搭載モデルとして注目を浴びる本機だが、筆者が購入をお勧めしない理由は先日の記事に書いた。つまりは『Pro』と称しながら、筐体、外部コネクターなどの基本構成は2016年発売のMacBook Proの下位ライン(2ポートモデル)のものを流用しており、完全に新設計されたMacBook Pro 14インチモデルとの間に大きな格差があるからだ。仕様に詳しくない方が、『Pro』だと思って買った時に、上位モデルとは大きな性能差があるというのは、誠実ではないと思うのだ。
それでもアップルが『世界で2番目に売れているノートパソコン(1番はMacBook Air)』と言うからには、この2ポートのMacBook Proは過去、かなりの数が売れたのだろう。そして、同じライン、つまり『Proの名を冠したAirに近いモデル』として、今回もけっこうな売上を立てるに違いない。
今回、箱はグリーンの壁紙を使ったMacBook Proのグラフィックが使われている。
パッケージ緩衝材や保護カバーは、最近のプラスチックを使わないタイプのもの。
電源は、67Wのアダプターが付属する。MacBook Airは選択しない限りUSB-Cの30Wか、デュアルUSB-Cの35Wなので、大電流で素早く充電できるという意味ではMacBook Airよりアドバンテージがある(持ち歩くには重いが)。
そして、M2 MacBook Airに対して一番のディスアドバンテージが、ポートがThunderboltポート×2だけだという点だ。M2 MacBook AirはこれにMagSafeポートが加わるので、電源を供給しながらデータ転送などに2ポートが使える。
2ポートだけだと、SDカードを読み取ってそのままSSDに書き込む……というような時に困るのだ。もっとも、それは2016年からそうなのだが。
パワフルな上位モデルであるMacBook Pro 14インチモデルが登場した今となっても、このMacBook Pro 13インチモデルのデザインが古びて見えないのは素晴らしい。そればかりか、分厚い14インチモデルに対して、洗練されたデザインであるようにも見える。
ラインナップ上、唯一Touch Barが残っているモデルで、一般の方が「最新モデルにTouch Barが付いているということは、アップルはTouch Barを捨て去る気はないのだろうか?」などと思わないか不安。
これは単に本機が旧来のボディを使ってるから「残ってしまっている」だけなのだが……。
そのあたり、商品構成として、辻褄が合わない。アップルらしからぬ……と思うのだが、そうまでして残さなければならないほど本機の需要は大きいのだろう。
最新のM2と、M1、M1 Proを比較
さて、お楽しみ。ベンチマークテストの時間だ。結局のところ、M2の力はベンチマークにかけてみないと分からない。
比較したのは3台。本機M2 MacBook Pro 13インチ、これはCPU 8コア(4高性能コア、4高効率コア)、GPU 10コア、メモリー8GBの廉価なモデル。ストレージは256GBで17万8800円(税込)だ。次にひとつの基準としてM1搭載の最初のMacBook Air、CPU 8コア(4高性能コア、4高効率コア)、GPU 8コア、メモリー8GB、13万4800円(税込)(これは現在の価格)。そして最後に私物であるM1 Pro搭載のMacBook Pro 14インチ。CPU 8コア(6高性能コア、2高効率コア)、GPU 16コア、メモリー16GB。私のは2TBモデルだが、512GBなら27万4800円(税込)で買える。ただし、これもWWDCのタイミングでひっそりと値上げされている。
簡単に言うと、M2の最初のモデルであるMacBook Pro 13インチと、その下に位置するM1のMacBook Air、上に位置するMacBook Pro 14インチ、M1 Proの一番安いモデルと比較したということになる。
想定していたより、ベンチマーク性能(特にグラフィック)が高い
まずは、おなじみGeekBench 5。
結果は以下の通り、シングルコアでは10〜12%ぐらい速くなっている。これが、M2シリーズのひとつの基準となることだろう。
マルチコアは高性能コアのコア数(M1 Proは多い)が影響する部分だが、それでもM2はM1 Proに肉薄する数字をたたき出している。
GPUについては、コア数が増えていることもあり、M1より50〜60%の速度向上となっている。さすがにGPU 16コアのM1 Proには水をあけられているが、コア数を追加したことも含め、アップルがM2世代においてGPU性能にかなり力点を置いていることが分かる。
もうひとつテストしたのは、3DMark Wild Life Benchmarkというグラフィック系のベンチマークアプリ。
これも想定以上にいい成績を残した。GPUが10コアになっていること、GPUコア自体の性能が向上していることなどもあるだろうが、メディアエンジンなどのカスタムチップが追加されていることも影響してるのかもしれない。ともあれ、この3台で比べれば、価格の割に性能は高いといえるだろう。
思いの他、実機の印象は良かったのだが……M2 Airが気になる
あらためて3台を並べてみた。
左から、M1 MacBook Air、M2 MacBook Pro 13インチ、M1 Pro MacBook Pro 14インチ。実際、日々持ち歩いてみると、14インチモデルはかなり厚くて重い。今にして思うと、2016年から続くMacBook Pro 13インチは薄くて軽いのだ。
モアパワーと、数多くのポートを収めたから仕方がないとはいえ、悩ましいポイント。そう考えると、本機M2 MacBook Pro 13インチの立ち位置も見えてくるというものだ。
事前の記事では、仕様的に見てM2 MacBook Pro 13インチはお勧めではないと書いた。だが、実際に触ってみるとかなりの魅力を感じる。
しかし、M2 MacBook Airが発売されたとしたらどうだろう。完全新筐体で、軽く、美しく、性能的には同等。そして価格はわずかながら安い。ならばやはりM2 MacBook Airの方がお勧めとなるのではないだろうか?
円安による高い価格設定も含め、もろ手を挙げてお勧めとは言いにくいレビューが続くが、さらに円安が進行するとすれば、現時点で購入しておくのが一番安いという選択になる。アップルファンにとっては、悩ましい日々が続くといえるだろう。
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