ついに、海外取材が復活した!
ともあれ、WWDCが一部開催され、現地に行くことができた。これは、ポストコロナの時代の始まりであり、少しずつ世の中が回復していく予兆だと思う。感染爆発といえる状況は過ぎており、死者数も減っている。もちろん、新たな変異株などのリスクはあるが、完全にコロナを根絶するまで待っていては、経済的に死が訪れる人たちも増える。十分に気をつけながら動き出す時期になったといえるだろう。
筆者が以前書いたように、アップルはコンピュータの会社でありながら、リアルコミュニケーションを重んじる会社でもある。早晩、現実に取材に行く機会が訪れるだろうと思っていたが、その機会がついにやってきたというワケだ。
面倒かつ、緊張感のあるアメリカ入国書類集め
ちなみに、WWDCは今年もオンライン開催と宣言されていた。しかし、一部エンジニアは抽選で現地に行くことができる的な発表もあり、もしかして、我々メディアも取材に行く機会があるのではないかと期待していた。
実際のところ、守秘義務があるので詳しいことは言えないが、ギリギリのタイミングで声がかかり、行くことが出来るようになった。
出入国の手続きについては、次第に緩和されていくはずなので、その時々の情報を参照いただきたいが、取材時の状況を簡単に書くと、①ワクチン接種証明書/②ウイルス検査の陰性証明書/③CDCの宣誓書/④CDCへの情報提供書類⑤ESTA……が要る。
②ウイルス検査の陰性証明書が一番面倒で、出発72時間前以降に医療機関で検査を受け、海外渡航用の証明書を書いてもらわなればけならない。当日空港で受けることもできるが、万が一結果が出るのが遅かったら飛行機に乗れなくなってしまうので、前日までに結果を手にしておきたい。筆者は前日に横浜で受けた。費用は2万円だった。
空港は2カ月前に筆者がオーストラリアに行ったときよりもだいぶ賑やかになっていた。感染が怖くはあるが、これまで日々膨大な赤字を出しながら耐えるしかなかった航空産業、旅行産業の方々にとっては、涙が出るほどうれしい光景だろう。
なんとか無事出国!
ちなみに、アメリカ入国のための書類の手続きは、航空会社のカウンターでだいたい行われる。考えてみれば、アメリカまで行って書類に不備があって、送り返される……なんて、誰にとっても面倒でしかないので、そういう仕組みになっているのだろう。
ちなみに、手続きは面倒だが、今回日本からの取材陣の10人は、ひとりも引っ掛かることなく飛行機に乗れた。誰もが搭乗の時まで「書類に不備はないかな、大丈夫かな?」と不安だったと思う。「パスポートとクレジットカードがあればどこでも行けるよ!」と強気だった以前とは大違いだ。
イベント会場に行くために抗原検査を
アメリカのホテルに着くと早速セルフテストの抗原検査。
この結果をアップルがイベントのために構築した特設サイトにアップロードして、OKをもらわないとプレスパスが支給されない仕組みになっている。2日前にPCR検査をしたばかりとはいえ、ここで引っ掛かったら取材ができないかと思うと、これまた結果が出るまで緊張する。
検査結果を写真に撮り、その結果と顔写真を一緒に動画に撮ってそれぞれをアップロード。『Results are being verified(結果は検証中)』の状態が長くてビビるが、翌朝には『Hi, Takuta』と日本人からするとやたら馴れ馴れしいメッセージが来て『Verified』であることを告げられる。良かった(笑)。
なぜ、太陽の対策が必要だったのか?
さて、前日にもらった、イベント参加者の記念品がこちら。
アップルの取材イベントは、翌日どこへ行ってどんなことがあるのか、例によって極秘で一切情報がないのだが、この記念品を見て気付くべきだった。そう。水筒、帽子、SPF35の日焼け止め。つまり、会場は屋外だったのだ。
ちなみに、マスクはKN-95表示のものとアップルデザインのものがあって、我々は会場ではKN-95のものが必要だと聞いていたので、それをして行ったのだが、多くの人はアップルデザインのをしていた。たぶん、アップルデザインの方もKN-95だったのだろう。ちなみに、冒頭の写真で、ティム・クックCEOがしているのがそのマスク。口元が楽そうだった。
というわけで、翌朝、無事プレスパスを入手。ここまで来て、やっと確実に行けることになってホッとした。
(これに限らず、写真の時は表情が見えるように、その時だけマスクを取っている場合があります)
アメリカ人はマスクをしているか?
飛行機の中や、空港ではみんなキッチリマスクをしているし、現地も我々が当初行動していた範囲では日本とマスクをしている人の割合は変わらないように見えた。
特に、店舗の店員の方などは必ずマスクをしている。しかし、郊外の光景として見ると、マスクを外して歩いている人も多い。このあたり、そもそも人との距離が遠く、自家用クルマでの移動が多いアメリカを、日本と同じ目線で比べるわけにもいかないように思う。そもそも人の密度が低いのだ。
また、実際に渡米して思ったのだが、日本語はマスクをしてボソボソ話しても伝わるが、英語は口が見えないと伝わりにくいような気がする。欧米の人がマスクをしたがらないというのは、そういう言語の性質上の理由もあるかもしれない。
アップルが苦労して出した、その結論
それはともあれ、既報の通り、WWDCのイベントは屋外で、かなり人数を限って行われた。これは室内で行うよりオープンエアで人数を限って行った方が感染リスクを低下させられるからだろう。まずは実験的なスタイルということなのかもしれない。
「どうやってリアルイベントを開催するか?」ということは、アップルの社内ではきっとずっと議論されていたのだろう。
その中で、「半分は屋外、半分は屋内で日差しも避けられる広大なスペースが社内にあるじゃないか!」ということで、Caffé Macsの大きなドアをあけて、半分はCaffé Macsのスペースに、半分は屋外に椅子を置いて、日陰のある屋外……というような状況で開催したのだろう。
そういう議論の中で、これまで社外の人を入れてこなかった本社Ring内に人を入れるというハードルも解決していったのだろう。2017年に完成して以来、一部メディアしか内部には入れておらず、その場合にも自由に写真を撮ることは許されなかったスペースである。また社員も社内で、写真を撮ってSNSにアップしたりすることは厳しく禁止されていたスペースだ(おそらくSNSに写真をアップしただけで首になるリスクさえあると思う)。反対する意見もあったことだろう。
その一方で、この素晴らしい建築物、素晴らしいスペースを多くの人に見てもらいたい、自慢したい……という気持ちあったことだろう。
中国、台湾は不参加で、おそらく人数は250人位と少ない
また、燦々と照りつけるカリフォルニアの太陽の下でも問題なく見える高輝度、高彩度のディスプレイや、聞きやすい音響、これだけの人がいても快適に繋がるWi-Fiなど、設備面での優秀性というのも伝えておきたい。これは簡単なことではない。おそらく数多いテストがあったのだろう。
目算だが、プレスの人数は250人ぐらいだったと思う。いつもの取材だと1000人入るSteve Jobs Theaterがいっぱいになるのだから、社内関係者がかなりの割合でいるとしても500〜700人ぐらいのプレスは来ていたと思う。それが250人ぐらいになっているんだから、かなり少なく抑えているのだと思う。
知る限りでは、中国、台湾のメディアは来ていなかった。タイも半分ぐらいは来られなかったという。アメリカのメディアもいつもより限られていたように思う。他にも来られなかった国もあるだろう。
それに加えて、抽選で選ばれた開発者の参加者が500人ぐらい、社内スタッフが250人ぐらい、合計1000人というところではないだろうか?
ちなみに、多くのスタッフの方がガッチリKN-95のマスクをしていたし、取材側もマスクを外している人はほとんどいなかった。アップルフェローのフィル・シラー氏は、記念写真をお願いすると、その時だけマスクを外して応じてくれた。これはアメリカ人のサービス精神というものだろう。
帰路もまたPCR検査が必要
そして、イベントが終わったらいったんホテルに戻って、そこからクルマで30分ぐらいかかる場所で、今度は帰路用のPCR検査である。そんなことより早く原稿を書きたいのに!
こんなに頻繁に検査していたら、前と結果は同じに違いない(そもそも、往路の飛行機で感染しても、日程が短過ぎてこの時点では検出できないだろう)。
それはそうと、陽性になってこちらで療養する破目になったら、ホテル代はいくらかかるんだろう? あまりに物価が高い(ホテルは1泊3万〜6万円ぐらい)ので、陽性になるわけにはいかない気がした。
さて、最後に帰路の話。4月にオーストラリアから帰った時は、抗原検査もあって飛行機が着いてから空港から出るまで2〜3時間かかったものだが、今回は乗り継ぎ便の人を優先したり、書類手続きに手間がかかったりはしたが、それでもだいぶ手間は減っている。以前の、隔離期間が必要だった時に比べると、本当に手間は減ってる(書類を集めるのは大変だが)。
このまま妙な変異株が出ずに、9月のiPhoneの発表会も行けるといいのだが。
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