おそらく近代の建築物では世界最大?
5年前から、Ringと同じ敷地内にあるSteve Jobs Theaterには入れて、遠くから眺めてはいたが、スケール感のわからない建物だった。
直径500m、4階建て。スケール的には、東京オリンピックのために建てられた隈研吾氏の新国立競技場が4〜5個すっぽり入るぐらい……と言うと、サイズ感が分かるだろうか? いや余計に分からないか(笑)
スティーブ・ジョブズ氏が計画し、死(2011年)の直前までプランを推し進めていたと言われている。完成したのが2017年だから、あと6年生きて、完成したApple Parkを見て欲しかった。
高層ビルではなく、4階建て。広大な公園のような用地の中に建てられており、土地は起伏も含めて計画に基づいて造成され、そのために植えられた木は9000本。カリフォルニア中の植木屋から、選定された木が集められたという。
1km四方ほどの敷地には、このリングが本社として建てられており中央には虹色のアーチや、円形の池のある広場がある。今回発表会のあった広場は下の写真(アップルMapより)の右側。下の方の白い小さな丸が発表会のあるSteve Jobs Theaterの入り口の地上部分(本体は下の丘の中に埋められている)で、左の2列の建て物が社員用の駐車場(らしい)。
道を隔てた手前の建物だけが通常訪れた人が入れるApple Park Visitor Center。Apple Store的な機能を持つ。
ちなみに、この航空写真はおそらく完成直後に撮られたものだと思うが、ここからだいぶ芝生が育ち、木が密生して、より自然な雰囲気になっている。
最初の2017年には、植えられたばっかりの木が、環境に馴染んでおらず、全体に肥料の匂いがした(臭かった(笑))のだが、すっかり植物がなじんで、大きく育っている。
環境に配慮された設計
非常に環境に配慮されて建てられており、全面に採光の良いガラスが使われており、適切な長さのひさしで直射日光を遮ったり、この土地の風向きを考えて、自然の空気の流れで換気したりできるようになっている。その様子はApple Park Visitor Centerを使った模型に専用アプリの入ったiPadをかかげると、ARで浮かび上がるようになっている。
ちなみにこのアプリでは、屋根を持ち上げて、中をのぞき込むこともできる。
本社と駐車場の屋根はソーラーパネルで埋め尽くされており、カリフォルニアの強力な日光を活かした太陽光発電で、Apple Park全体のエネルギーを賄っている。
あまりに途方もないスケールと、美しさ
はじめて近づいたRingの威容。
本当にまるで宇宙船のような存在だ。
見ていて気付いたのだが、普通のビルのような窓ガラスの汚れがまったくない(そういえばアップルストアもそうだ)。そもそも、汚れが付きにくいコーティングが施されているのかもしれないが、頻繁に掃除もしているのだろう。
内側と外側、両側に廊下があるようで、延々と歩いて会場に急ぐ。余計な心配だが、会議室を間違えたりしたら、時間内にはとうてい間に合いそうにない。アップルの社内の人は、どうやってこの広大な社内を移動しているのだろう?
アップルのマップアプリを見ると、Ringは不均等な9つの部分に分かれており、カフェのあるSection 1から時計回りにSection 9と呼ばれているようだ。あとで地図を見ると、我々はSection 2から入ってSection 1に移動したようだ。それでもあれだけ時間がかかるのか……。
ところどころにある放射状の方向の廊下は、吹き抜けになっている。床は最新のApple Storeで使われているような大理石っぽい素材で、同じく壁は石材。
天井面はパネル全体が光るSFのような照明。確認したわけではないが、当然のことながら電力消費量の少ないLED照明だと思われる。
室内にも木が配置されているが、これはサンフランシスコのApple Store Union Squareなどにもある、移動できるタイプの植栽。この小さな部分に根が張っていて、枯れずに育てられるというのは、どういう構造になっているのだろう……。
巨大なオープンスペース、Cafe Macs-Apple Park
今回の会場になったのは、Section 1のCafe Macs-Apple Parkと呼ばれているフードコートのような場所。普段は吹き抜けのレストランとして使われているようで、左右ではエンジニア達のために食事が提供されているようだった(メディアパスでは入れなかった)。
今回のWWDCの発表はこのCafe Macs-Apple Parkから外に向けて、開かれたスペースを作り、野外フェス会場のように広い場所に椅子を配置して行われた。
椅子は何種類か使われていたが、我々が座った場所の椅子は、Cafe Macs-Apple Parkや、社内のミーティングスペース、Apple StoreのBOARDROOMなどで使われている深澤直人氏デザインのマルニ木工のHIROSHIMAという椅子。10万円以上する椅子が見渡す限り並べられている様子は圧巻……。
マルニ木工 HIROSHIMA
https://webshop.maruni.com/fs/maruni/c/armchair
このガラスドア、いったいどうやって動作するのか?
そして驚くべきはこの開口部。
この部分は、冬や、天候が悪い時には閉めることができるのだそうだ。なんと、4階建ての天井まで動く1枚板のガラス……。いったい、どれほどの強度のガラスで、どうやって製造して、どうやってここに運んで来たのだろう……。
人類が使ってるガラスドアの中で、ここのガラスドアが一番大きいのではないだろうか? 「継ぎ目のない、一枚板のガラスでなければいけないんだ」……とはジョブズが言いそうな言葉だが、それを実現する技術力と経済力には本当に驚いてしまう。
開閉されるところを、見てみたい……。そして動画に撮りたい……。
床面を見てみると、レールがない。これまたどういう構造になっているのかわからないが、床にはこういう板でフタがされている。埋設されたレールがあるのだろうか? それとも、全部が天井からぶら下がっているのだろうか?
Steve Jobs Theaterの2階のホールにも床に跡のない大きなシャッターがあるが、あれと同じ構造なのだろうか。建てた人に話を聞いてみたい……。ちなみに、サンフランシスコのApple Store Union Squareも、これほどのサイズではないが、開閉する巨大なガラス窓があるので、あれと同じ構造なのかもしれない。あの場所なら開閉するのが見られると思うのだが。
内側にある芝生のスペースとレインボーアーチ
こちらはリングの内側。どこを見ても床から天井までの1枚板のガラスで、カリフォルニアのクリアな光が室内を照らしている。ただし、ひさしが上手く機能して、陽光で暑いということはない。
早朝や夕方には日が差し込むこともあるのかもしれないが、ひさしの角度や高さなどが絶妙に計算されているのだろう。
内側のベンチやテーブルは常設のように見えた。Cafe Macs-Apple Parkのフードを持って出て食べられるのだろう。そういう経験がしてみたい……。
こんな注意書きも……。池もあるはずだから、かるがもの親子が暮らしているのかもしれない。上空には多くの鳥が飛ぶのが見えたから、自然豊かなApple Parkは野鳥や小動物にとっても憩いの場になりつつあるのだろう。
そして、リングの内側。芝生の広場があり、よく動画でティム・クックの背後に見えるレインボーカラーのアーチが立っている。歴史あるリンゴの6色だが、多様性を象徴してもいる。
この芝生でランチ食べたい……。
そのあと、Steve Jobs Theaterの1階のエントランスでMacBook Airの展示を見たのでした。
というわけで、おそらくメディアに記事として公開できるのは初めての機会……ということで、みなさんが気になっているであろうMacBook Airの記事より先に、『Apple ParkのRing』をご紹介した。個人的には、Apple Park公開が今回の一番大きな収穫。
ジョブズは、この建物の完成をどれほど見たかったことだろう? まだまだ入れない場所もいっぱいあるし、そもそもどういう構造で、どういう素材が使われているのか……などの話が聞ければ、とても面白いのだろうけれど、とりあえず分かる範囲でのRingの取材でした。
こんなことになると分かってたら、もっと広角のレンズとかを持ってきたかった……(EOS 6D Mark IIの24-70mm F4とiPhone 13 Proだけでした)。というか、プロカメラマンに撮って欲しいな。
予想外の記事かとは思いますが、今回私が一番気になったApple ParkのRingでした!
おそらく今回集まった開発者さんに公開された場所
あ! もうひとつ。こちらが、今回新たにオープンしたという、開発者向けの設備、Developer Centerだそうです(伝聞なので、確証はなし)。こちらは、一般に入れる道に面しており、Apple Park Visitor Centerの少し奥にあります。
わざわざ来たからにはここの取材ツアーがあるのかと思っていましたが、そういうのはなかったですね(もしかしたら、私が呼ばれていないだけかもしれませんが)。
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