トタンの壁をくり抜いた窓から紀伊水道の海を望む「rub luck cafe」。
和歌山県有田市は、みかんの主産地として知られているが、実は蚊取り線香の原料、除虫菊の主産地でもある。海岸線に佇む、かつて除虫菊の保管庫として使われていた倉庫は、2008年にリノベーションが施され、「rub luck cafe」という名の広々とした気持ちのよいカフェに生まれ変わった。

土日祝日しか営業していない同店。クリーム色のトタンで覆われた外観には、店の看板らしきものもなく、一見すると本当に倉庫だ。厨房が作られた一階には、当時のままの床と、荷下ろし用のリフトが今も残っている。木製の階段などは新たに作ったもので、どれも無骨な雰囲気を醸している。

チーク材の床板が美しく残る二階は、大空間の客席。ミュージシャンを呼んで音楽イベントをするというときに、当時空いていた床を塞いで、ステージを作った。紀伊水道の海を望む窓は、トタンの壁をくり抜いたワイルドなもので、日中は木で支えて開けておくという。側面の白く塗られた板は、製材所の知り合いから、安値で売ってもらったもの。テーブルや椅子も、知り合いからの貰いものが多いとか。

店主の半田雅義さんは、そんな素敵な繋がりに感謝する一方、自由度が高く、遊び心を持てる倉庫に魅力も感じている。
「秘密基地のようなものを目指して作りました。だから窓にサッシを付けることもできたけど、くり抜くだけに留めたんです。台風など、風雨が本当にすごいときはさすがに閉めますけどね(笑)。でも、本当はそういうところもお客さんに見せたい。ここは夏暑く、冬寒い。目の前に海があって、自然と共に生きている感じがするんです。
ただ良い景色が見たいだけなら、もっといい所があると思うんです。倉庫を改装したこの場所でしか感じられないものを感じてほしい。僕らはそういうところも楽しんでやっています」
地下足袋が似合う半田さんの個性が、空間にも現われていた。


むき出しになった天井の鉄骨やリフトがこのカフェの魅力。広々とした空間に、間を置いて設置されたソファやテーブル。スペースに余裕があるので、プライベート感さえ感じるのもこの店ならでは。“秘密基地” という言葉がぴったりな空間をぜひ味わってみてもらいたい。
【DATA】
rub luck cafe(ラブラックカフェ)
和歌山県有田市千田1470-2
TEL0737-83-0028
営業/11:00〜日没
休み/平日(土日祝日のみ営業)
http://proyect-g.com/rubluckcafe/
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(出典/「Lightning 2018年2月号 Vol.286」)
Photo/M.Nakatani 中谷丸
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