試行錯誤を繰り返して完成した藍染のホースハイド。
The REAL McCOY’SのA-2と言えば、ラフウエア社のモデルを忠実に再現したモデルと、素材やディテールは忠実に、パターンのみをアレンジしたオリジナルスペック「REAL McOY MFG.CO.」の2型が、長年、ブランドの象徴的アイテムとして君臨し続けている。これらの人気は言わずもがな。
しかし、時折スポットで発表される柿渋染め、黄櫨染といった、日本の伝統技法を用いたA-2も好評を博してきた。両者はいずれも、オリジナルのA-2に近い茶系色だったが、今季の注目は、なんと天然藍で染めた、藍色のA-2である。
天然藍は気温や湿度などの影響を受けやすく、色が安定しにくい。さらに、革が染まりにくく、製品化するには困難を極める。理想の色を出すために、弛まぬ研究と、試行が繰り返され、やっと到達した。写真の1着は、そんな試練を乗り越えて完成したファーストサンプルである。
2着目、3着目と製品が作られていくが、まったく同じ表情の革を作ることは不可能と言ってよい。転じて考えれば、まったく同じ表情のものは存在し得ない、唯一無二の存在となるのだ。かつてA-2はユニフォームであり、軍の規定で、同じものを大量に生産することが求められていた。そんなA-2の基本的な概念を覆す、ロマンに満ちたA-2が、この藍染のモデルなのである。
ベジタブルタンニングのホースハイドは美しい経年変化が大きな魅力であるが、このA-2に限って言えば、表情の変化も、ベジタブルタンニング・ホースハイドの常識、天然藍の常識の範疇で、想像することしかできない。なぜなら、地球上にひとりとして、この藍染A-2を着込んだ者は、まだいないのだから。
着用から1年後、5年後、10年後……、果たしてどんな美しい表情を見せてくれるのか? 天然藍で染められたA-2の熟成した藍色はいかなるものか? その解を知ることができるのは、手に入れることができた者の特権となる。
まだ誰も知らない天然藍の経年変化。
桶に溜めた天然藍の染料に無染色のベジタブルタンニング・ホースハイドを浸す。これほど濃い染料でも、この段階では、ほとんど藍色に染まった様子は見られない。
一度、染料桶から取り出し、真水で表面に付着した染料を洗い流す。この洗い用の真水にも、こだわりがあるそうだ。長い年月をかけて革と藍に向き合ってきた研究の成果が発揮される。
まったく染まっているようには見えないが、ホースハイドの線維の中に染料の成分はしっかりと入っていく。しかし、天然藍は革に「入りにくい」、つまり染めるのが困難なのだ。
染料を真水で洗い流した状態で空気に晒すことで、酸化され、みるみるうちに革は藍色を帯びてくる。しかし、この染色、洗い、酸化の工程を繰り返すことで、藍色は濃くなっていく。
スクモと呼ばれる天然藍染料を使う。藍の葉を乾燥させたのち、発酵、熟成させ、堆肥状になったものがスクモ。発酵することで水に溶けない藍を可溶化させる伝統的な染色方法だ。
スクモに使っているのはタデ藍と呼ばれる種類の葉で、古くから日本では藍染に使われてきた。適度な熟成と発酵を見極めるのは職人の経験。気温や湿度に合わせて微調整が行われる。
【DATA】
ザ・リアルマッコイズ
東京 TEL03-6427-4300
京都 TEL075-708-5456
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https://therealmccoys.com
※情報は取材当時のものです。
(出典/「CLUTCH2023年11月号 Vol.93」)
Photo by Hiroto Yorifuji 依藤寛人 Yoshika Amino 網野貴香 Text by CLUTCH Magazine 編集部
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