書類、名刺、レシートなどすべてデータ化 リモートワークの必需品 ScanSnap iX2500

アドビの生成AIのさらなる充実を発表【Adobe MAX Japan 2025レポート・後編 】

2月13日に東京ビックサイトで行われたクリエイターの祭典、Adobe MAX Japan 2025のレポート、後編をお届けする。アドビは生成AIをゼロから使い道のわからない画像や動画を産み出すために使おうとはしていない。日常のクリエイティブをサポートするために使おうとしている。その活用シーンは多岐にわたる。

シャンタヌ・ナラヤンCEO来日、AI関連多数新機能発表【Adobe MAX Japan 2025レポート・前編 】

シャンタヌ・ナラヤンCEO来日、AI関連多数新機能発表【Adobe MAX Japan 2025レポート・前編 】

2025年10月27日

根本部分の更新で、処理能力向上を図るIllustrator

Illustratorの話をしてくれたのは、『前髪パッツン』の岩本崇さんだ。

ご存知のように、企業ロゴから、看板、ポスター、タイトル画像……など、Illustratorで作られるものは多い。特に日本は世界的に見てもIllustratorユーザーが多いのだそうだ。

それもあってか、昨年秋に日本語の文字組み機能が全面刷新された。

写植時代からのさまざまな細かいルールの多い日本語組み版の世界だが、Illustratorでは長年アップデートにアップデートを重ねた状態になっており、複雑なデータを組むと日本語の処理が重くなっていた。

この日本語の文字組のシステムがゼロから再構築さて、非常に軽快に動くようになった。

しかし、この更新により文字組に微妙な差違が出るため、古いデータを使う際には『文字組更新機能』を通して、デザインをアップデートする必要があることには注意されたい。

また、Illustratorの基盤となる描画システムにも大幅なアップデートが施されている。現在、Illustratorの描画機能にマルチスレッドの導入が推進されており、一部の機能の処理が5〜10倍速くなっているという。

すべてのレイヤーにドロップシャドウを施す……というような処理も非常に高速化されており、ご覧のような複雑な画像の全面にドロップシャドウを施すようなシーンで、最大5倍高速化されているという。

フォントライブラリには新たに数十種類の日本語フォントが追加され、全部で1300種類以上の日本語フォントが利用できるようになった。

とりわけ注目は、アドビが独自に開発したフォント『百千鳥(ももちどり)』だ。このフォントは史上初のバリアブルフォントで、可変の仮想ボディを持つのが特徴。

昔の印刷物などで使われていた書き文字の世界では、文字スペースに合わせて長体、平体、文字の太さなどが使い分けられていた。

しかし、従来のデジタルのフォントで長体や平体をかけると、線の太さ自体も変わってしまっていた。

百千鳥は4種類マスターを持つことで、長体、平体をかけても線の太さは変わらない。そして線の太さはまた別のパラメーターとして調整できるようになっている。

これにより、文字スペースに対して、しっかりと収まり、強く自己主張するフォントが出来上がった。この和文バリアブルフォントの開発には、何と10年以上の年月がかけられているのだという。

下は、Adobe MAXの会場に作られていた百千鳥のブース。

レトロなホーロー看板などでは、スペースに合わせて、長体、平体を自在に使った手描き文字デザインが使われていたものだが、百千鳥はそれを再現することができるというわけだ。

少し、レトロなテイストではあるが、使い方によって表情の変わるフォントなので、これからさまざまなシーンで使われることになりそうだ。

2Dデザイナーでも3DなデザインができるProject Neo

もうひとつ、Illustratorユーザーにとって嬉しいのが、Project Neoのパブリックベータ版の提供だろう。

Project Neoは、Illustratorのベクターデータを元に、簡単に3D風デザインを構築できるシステム。

平面図形を、押したり引いたり、回転させたりすることで、立体風デザインを作ることができる。

下の写真はそうやって作った左の3D映像を元に、Fireflyを利用することで右のようなイラストが生成されるというデモ。

動画作成でも生成AI機能が大活躍

Premiere Proにも生成AIを活かした機能が用意された。人物など動いてるものを選択してマスクを作ることができるようになった。

これにより、背景のみをモノトーンにしたり、人物の後ろにロゴを合成したりできるようになった。さまざまなシーンで使えそうな新機能だ。

さらに、他言語の音声を生成することもできるようになった。自分が日本語で話した動画の英語版を作ることができるのだ。YouTuberの方は、英語が苦手でも世界進出が可能になった。

大量のキャンペーンコンテンツ生成にも対応

マーケティングツールであるAdobe GenStudioでも生成AIが使える。

SNSなどによって、必要とされる画像サイズや、キャッチや本文の文字数は違うものだが、Adobe GenStudioを使うことによって、マーケターがブランドのルールに応じたキャンペーンコンテンツを大量に作れるようになったという。

そうした広告を受けとる側としては、大量に生成された広告コンテンツが押し寄せてくると思うとゾッとするが、より自分にフィットした広告が表示されるのなら望ましいといえるだろう。

Adobe ExpressやAcrobatでも生成AIを活用

個人商店を営んでる人や、非クリエイティブ部門の人が、クリエイティブなコンテンツを作ることができるAdobe Expressについて語ってくれたのは、デジタルメディア事業部門およびGTM兼セールス部門担当SVPのマニンダ・ソーニー氏。

デザインに関する素養がなくても、アプリの使い方に詳しくなくても、プリセットされたデザインから選んで一部を変更していくだけでロゴやチラシやバナーを作ることができるAdobe Express。

今回は、バナーに簡単にアニメーションを入れたりする方法がデモされた。

さらに、Adobe Acrobatでも生成AI機能が日本語に対応。AIアシスタントして、ドキュメントの要約を行ったり、ドキュメント自体に質問したりすることができる。質問にドキュメントが答えてくれるようになるなんて、実に画期的だ。

このように、クリエイティブ部門のアプリだけでなく、マーケティングアプリや、ドキュメントアプリにまで生成AIがサポートしてくれるようになった。

あまりに新機能が多すぎて、本記事でもまったくカバーできていないが、自分が使っているアプリの新機能を探して使って見て欲しい。新機能を積極的に取り入れれば、驚くほど作業が効率的になるはずだ。

(村上タクタ)

アドビ、初の2軸日本語バリアブルフォント『百千鳥』の開発を発表

アドビ、初の2軸日本語バリアブルフォント『百千鳥』の開発を発表

2025年10月27日

マイアミで開催される、クリエイティブの祭典Adobe MAXの取材に行ってきます

マイアミで開催される、クリエイティブの祭典Adobe MAXの取材に行ってきます

2025年10月27日

Adobe MAX 2024フロリダ州マイアミで開催。多数の機能を発表

Adobe MAX 2024フロリダ州マイアミで開催。多数の機能を発表

2025年10月27日

Adobe MAX 2024発表のキモ!【非クリエイターにも分かる!】

Adobe MAX 2024発表のキモ!【非クリエイターにも分かる!】

2025年10月27日

なぜPremiere Proの生成拡張は2秒だけなのか?——他社とのスタンスの違い【Adobe MAX】

なぜPremiere Proの生成拡張は2秒だけなのか?——他社とのスタンスの違い【Adobe MAX】

2025年10月27日

『撮り鉄さん、生成AI使ってみません?』アドビが相鉄とコラボイベント

『撮り鉄さん、生成AI使ってみません?』アドビが相鉄とコラボイベント

2025年10月27日

 

この記事を書いた人
村上タクタ
この記事を書いた人

村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

渋谷、銀座に続き、ブーツの聖地「スタンプタウン」が東北初の仙台にオープン!

  • 2025.10.30

時代を超えて銘品として愛されてきた堅牢なアメリカンワークブーツが一堂に会するブーツ専門店、スタンプタウンが宮城県仙台市に2025年9月20日オープン! 東北初となる仙台店は北のワークブーツ好きたちにとって待望の出店となった。 珠玉の銘品たちがココに揃う。 ブーツファンが待ち焦がれた東北エリア初となる...

革ジャンの新機軸がここに。アメリカンでありながら細身でスタイリッシュな「FountainHead Leather」

  • 2025.10.31

群雄割拠の革ジャン業界において、カルト的な人気を誇り、独自のスタイルを貫くファウンテンヘッドレザー。アメリカンヘリテージをベースとしながらも、細身でスタイリッシュ、現代的な佇まいを見せる彼らのレザージャケットは、どこのカテゴリーにも属さない、まさに“唯我独尊”の存在感を放っている。 XI|シンプルな...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

「BILTBUCK」の2025年は新素材によって既存モデルを再解釈した革ジャンに注目だ!

  • 2025.11.03

伝統と革新を往来しながら、レザーの魅力を追求するビルトバック。2025年のコレクションは、オリジナルレシピで仕立てた渾身の新素材によって既存モデルを再解釈。質感と経年変化、レザーの本質的な美学を磨き上げ、洒脱な大人たち〈Hep Cats & High Rollers〉へ贈る、進化であり深化の...

Pick Up おすすめ記事

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

進化したSchottの定番、冬のレザースタイルはこれで決まり!

  • 2025.10.30

アメリカンライダースの象徴であるSchottが、原点回帰とも言える姿勢で“本気”を見せた。伝統のディテールに、現代的な技術と素材を融合。武骨でありながらも軽快、クラシカルでありながらも新しい。進化したSchottの定番が、冬のレザースタイルを再定義する。 668US SPECIAL HORSEHID...

革ジャン職人が手掛ける、経年変化するレザーハット気にならない?

  • 2025.10.31

気鋭のレザーブランド「KLOOTCH」のレザーハットラインとしてスタートした「Brunel & Co.」独学のレザージャケット作りで磨いた革の感覚を、“帽子”という舞台で表現する──。自らの手仕事で理想の革を探求する職人が辿り着いた、新たなレザークラフトの到達点。 革ジャン職人の手が導く、生...

「BILTBUCK」の2025年は新素材によって既存モデルを再解釈した革ジャンに注目だ!

  • 2025.11.03

伝統と革新を往来しながら、レザーの魅力を追求するビルトバック。2025年のコレクションは、オリジナルレシピで仕立てた渾身の新素材によって既存モデルを再解釈。質感と経年変化、レザーの本質的な美学を磨き上げ、洒脱な大人たち〈Hep Cats & High Rollers〉へ贈る、進化であり深化の...

宮城県大崎市の名セレクトショップ「ウルフパック」が選ぶ「FINE CREEK」の銘品革ジャン4選。

  • 2025.10.31

宮城県大崎市に、ファインクリークを愛してやまない男がいる。男の名は齊藤勝良。東北にその名を轟かす名セレクトショップ、ウルフパックのオーナーだ。ファインクリーク愛が高じて、ショップの2階をレザー専用フロアにしてしまったほど。齊藤さんが愛する、ファインクリークの銘品を見ていくことにしよう。 FINE C...