アドビは日本を重視している
Keynoteは午前10時から始まったが、会場には早くから、多くのクリエイター、メディアなどがぎっしりと詰めかけた。
そもそも、US以外でAdobe MAXが開催されているのは日本だけ。そのぐらい日本はクリエイティブの世界において、アドビにとって、重要存在として位置づけられているようだ。
Illustratorや、InDesignにおいても、縦組みの日本語組み版という非常に複雑な処理を、日本のために構築している(それはその後、中国や韓国などの漢字文化圏で役に立っている)。CEOシャンタヌ・ナラヤン氏、CMOララ・バッシュ氏、マーケティング戦略およびコミュニケーション担当VPのステイシー・マルティネ氏、デジタルメディア事業部門およびGTM兼セールス部門担当SVPのマニンダ・ソーニー氏と、早々たるメンバーが訪れ、登壇したのも日本という市場を重視しているからだといえる。
今回、日本向けに発表された機能も数多い。シャンタヌ・ナラヤン氏は、IllustratorやInDesignの日本語テキストエンジンが20年ぶりにアップデートされたことや、Premiere Proのスタイルブラウザーの改善、モリサワとのパートナーシップなど、数多くの日本市場における取り組みについて詳しく語った。
また、当然のことながら、Fireflyを始めとして、生成AIを活用した機能についても、数多くの説明があったが、その中で、アドビの生成AIは許諾を得た素材のみを使っており、ユーザーコンテンツからは学習しないことなど『安全なAI』であることを強調した。
Firefly Video Modelで、動画でも生成AIを利用可能に
マーケティング戦略およびコミュニケーション担当VPのステイシー・マルティネ氏は、アドビの生成AIであるFireflyが動画に対応した『Firefly Video Model』をベータ版として公開すると発表した。
アドビの生成AIは、プロンプトから画像を生成することも可能だが、むしろクリエイティブワークの中で、実際的に便利に使えることが重視されているようだ。
たとえば、動画のすき間を埋めたり、背景に使ったりするBロールを生成したり、静止画を『少し』動かしてシーンの間を繋いだりすることができる。『どうみても生成AIだね』と思われるカットを普段のクリエイティブワークで使うのは難しいだろうが、シーンの繋ぎや背景として使うなら便利に使えるだろう。アドビの生成AIの使い方は、現実的で、日常の『困りごと』を解決してくれるのである。
ステイシー・マルティネ氏の後に、アドビ日本法人の轟啓介氏が登壇。Fireflyの利用を実演した。
これは動画なのだが、背景として舞うパーティクルなどが生成AIで作られたもの。2枚の写真を元に、美しく舞う光が生成された。生成AIはどれほどにリアルな映像を作れるか? などが話題になるが、学習画像においてクリエイターの権利を侵さず、クリエイターのサポートを行うというところに、アドビの生成AIに対するスタンスがよく見てとれる。
Photoshopの生成AI機能は、日常の利便性を向上
Adobe CCエバンジェリスト仲尾毅氏がデモしたのはPhotoshop。Photoshopには、一般に使えるバージョンでもAdobe Firefly Image Modelを使った生成AIの機能がふんだんに盛り込まれている。
たとえば、このチラシ。
元の写真は横長で、歩行者や駐車中のクルマ、電線など邪魔なものがいっぱいあったのだが、すべて生成AI機能で消し去り、空を大きく伸ばして、金箔を貼ったようなロゴを作って見せた。そこまで、かかった時間はものの数分。生成AIが、クリエイティブワークを非常に効率的に、しかも身近なものにしてくれるということがよくわかった。
後編に続く。
(村上タクタ)