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Adobe MAX 2024発表のキモ!【非クリエイターにも分かる!】

フロリダ州マイアミで開催されたクリエイターの祭典『Adobe  MAX』に取材に来ている。まずDay 1では、世界中から集まった数多くのクリエイターに向けて、100を超える機能が発表されたが、その中でも特に重要な3つのテーマについて分かりやすく解説しよう。『デザイン』はとても大事。非クリエイターの人こそ知っておいた方がいい発表が、数多く含まれている。

生成AIは、人間の創造性の代わりではなく、ツール

とにかく、重要なのが『生成AI』のパワーだ。

それは、世の中の他のテック系の企業と同じ。

しかし、アドビは早くから、生成AIのテクノロジーをよりコントローラブルで、権利的に安全なものにしようと努めてきた。

アドビの生成AIは、権利的に問題のないアドビ自身が権利を持つAdobe Stockと、著作権フリーのデータから学習されている。反AIの方は理解されていないが、学習というのはコピーするのではなく、その絵柄の要素を抽出するということだ。我々が数多くの絵画を見て、その作法を学ぶのと、それは同様のことだ。また、生成AIを利用して生成したコンテンツには、その履歴が残る仕組みになっている。

アドビにおいては、生成AIはクリエイターの仕事を奪うのではなく、仕事を加速するために存在するのだ。

アドビのデジタルメディア事業部門代表のデイビッド・ワドワーニさんは『私たちは、生成AIを、人間の創造性の代わりではなく、ツールとして捉えています』と話していた。

他のAI画像サービスでは何か絵柄を生み出すことができても、それが何かクリエイティブの助けになるわけではないことが多い。絵を描けない人が「私でも、こんな絵が出来た」というだけの話であったりする。

クリエイティブの世界では、与えたいインプレッションがあって、それに向けて、さまざまなトライをし、微妙なニュアンスを調整して結果を得ていることが多い。偶然できたものでは目的を達成できないのだ。

アドビでは生成AIは、叩き台やサンプルを生成する、最後の一歩を補完する……という目的に使われることが多い。それは、クリエイターが作品を作ろうとする一助になる。

生成AIを使うFireflyの利用はオン/オフできる

前者は例えば、Adobe Fireflyのwebアプリで提供される動画生成機能だ。プロンプトや、既存の画像を動かして動画を作成することができる。これは、完成作品のために使われるというよりは、「こういう映像を撮って欲しいんだ!」というモックアップとして使われるイメージだと思う。

対して、Premiere Proの『生成拡張』は、微妙に足りない部分、たとえば音楽に合わせるために、1〜2秒足りない部分の動画を生成したり、10秒までの音(声や音楽ではなく、環境音など)を生成することができる。長い動画は生成してもプロクリエイターの助けになるわけではない。ただ、1〜2秒動画を延長することで、編集の可能性が広がり、再撮影の手間が減ることは確かだ。

これらについて、アドビは常にクリエイターに意見を求めており、『何秒なら助けになるか?』という点において検討された結果の2秒なのだ。

Photoshopの『削除ツール』に設けられた新機能で、電線や不要な人物などを生成AIで消す機能についても、従来だったら修正ブラシで延々と細かな作業をしなければならなかったのが、ワンクリックで不要な部分を(しかもキレイに)消すことができる。

これら生成AIの機能は、利用することもできるし、利用しないこともできる。

生成AIを使うFireflyの利用はオン/オフできて、たとえば報道写真のように、生成AIを使わずに仕上げる必要がある場合は、最初から生成AIの利用をオフにしておくことができる。あくまで、クリエイターの省力化、可能性の拡大というところがキモなのだ。

クリエイティブの来歴をたどれる『コンテンツ認証イニシアチブ』

アドビは5年前から、『コンテンツ認証イニシアチブ(Content Authenticity Initiative= CAI)』という世界的な取り組みを共同設立し、クリエイターの権利を保護しようとしている。

誰の作ったクリエイティブで、だれが編集し、誰がパブリッシュしたのか……ということが、画像の中に暗号化されて残るようになっているのだ。

例えば、カメラで撮影した画像を、Photoshopで編集加工合成したとしても、CAIの仕組みでチェックすれば、もとの画像を撮影した人が分かるというわけだ。

たとえば、災害写真を合成してSNSに投稿するデマ投稿のようなことを行ったとしても、チェックすればその信憑性が分かるというわけだ。たとえ、jpeg書き出ししても、他の写真と合成したりしても、来歴は残り続ける仕組みとのこと。(しかし、残念ながら一部のSNS巨大企業が参画しないので、この取り組みは今のところ完全に働いているわけではない)

生成AIについても、アドビの生成AIを使った場合、生成AIで加工された画像だという来歴は残るようになっている。だから、たとえば報道機関などが、生成AIを利用していないということを担保することも可能だ。

生成AIで強力になったAdobe Expressで、あなたもクリエイティブの花を咲かせよう

もうひとつ、興味深い取り組みがある。

それが、Adobe Expressの活用だ。

Adobe Expressはノンクリエイター向け簡易編集アプリ。無料でもAdobe IDを取得するだけで一応使える(何かの有料プランを契約してるとプレミアムプランで使えるので、最安はPhotoshopプラン、もしくはIllustratorプランの1180円/月)アプリケーション。

本来、企業内でポスターやバナーなどのちょこっとした簡易なクリエイティブを作ったり、PTAや町内会やプライベートな趣味の活動で、チラシなどを作るのに適したサービスなのだが、このAdobe Expressでも生成AIが利用できるようになって、爆発的にパフォーマンスが上がっている。

ロゴを作ったり、バナーを作ったり、プレゼン用の画像を作ったりできるのだが、『拡張してサイズ変更』という機能で、さまざまなバナーやSNS向きに画像サイズを拡張変更できる。他にもスプレッドシートに用意したデータを使ってバリエーションを作ったり、企業内で決められたブランドを適用したり、テンプレートをブランドで管理したり、SNS投稿のカレンダーを管理したりさえもできるのだ。

また、従来のPhotoshopファイルや、Illustratorファイルに加えて、InDesignやLightroomとも連携が可能になったので、たとえばデザイナーがIllustratorで作ったバナーを、最後に広告営業担当がAdobe Expressで開いて文字を修正するとか、キャンペーンによる素材バリエーションを現場の人が作ったりということが可能になった。

過去、アドビはクリエイターをエンパワーしてきたが、いよいよ『クリエイター以外の人』もエンパワーするというわけである。興味のある人は生成AIで強力になったAdobe Expressをぜひ使ってみて欲しい。

まだまだ新しい機能がいっぱい

大きく、3つのテーマに分けて解説したが、コンテンツを管理できるFrame.ioや、立体データを作って、ベクターデザインのイラストを生成できるProject Neoや、さまざまなクリエイティブを集めて、ミックスして、複数人で新たなアイデアをマッシュアップできるProject Conceptなど、興味深いサービスはまだまだ数多く発表されている。

それらも追って解説していきたい。何よりも、Adobe MAX会場に満ちているクリエイティブのポジティブなパッションに圧倒された。これから、クリエイターはまだまだ足りなくなるそうだから、興味のある人はAdobe CCを学んでみてはいかがだろうか?

(村上タクタ)

※渡航費、取材中の滞在費はアドビに負担いただいていますが、発信については報酬はありません。発信内容はThunderVoltと筆者の見解です。

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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