アウトドア衣料に革命を起こした世紀の大発明

1920年創業の米国シアトル発アウトドアブランド「エディー・バウアー」。その膨大なアーカイブと現行プロダクトを照らし合わせ、これまでの100年から、これからの100年の名品を考える。今回は同ブランドの代名詞とも言えるアイコニックモデル「スカイライナー」をご紹介。

すべてのダウンジャケットはこの1着から始まる

街やアウトドアフィールドで当たり前のように着用されている「ダウンジャケット」。現代においては誰もが持っている当たり前のアイテムだが、その歴史を辿っていくとひとりの男に辿り着く。その男の名前はエディー・バウアー。アメリカ・ワシントン州のシアトルで創業したアウトドアブランド「エディー・バウアー」の創業者である。1935年、エディーはアメリカ・ワシントン州西部にあるオリンピック半島へ仲間と共に釣りへ出かけた。真冬という季節に加え、元々寒さの厳しいシアトルという土地柄、釣りといっても極寒の寒さで命を落とす人も少なくはない。若い頃からハンティングや釣りを嗜んできた根っからのアウトドアズマンであったエディーは、シアトルという寒い地域での釣りの危険性も熟知していたはずだった。

その日もいつものように防寒対策を万全にし、釣りを楽しんでいたが、途中で予期せぬ雨に見舞われた。雨によって濡れた服と、釣り上げたスチールヘッド(ニジマス)背負っていたバッグは瞬く間に凍りつき、エディーは低体温症による眠気に襲われた。動けなくなってしまったエディーは空中に銃弾を3発放ち、先に行った釣り仲間へ合図、戻ってきた仲間に助けられ一命を取り留めたのだ。

そんな体験をしたエディーは、伯父に聞いた話を思い出していた。それは日露戦争時代にダウンを使用した温かく軽量なジャケットのことであった。その話から、ダウンの有用性を知っていたエディーは、アメリカ北西部とアラスカの雪に立ち向かうアウトドアズマンのために、人生を賭けグースダウンを使用したジャケットを製造していくことになる。そして、九死に一生を得る体験をした翌年の1936年にアメリカ初のダウンジャケット「スカイライナー」が誕生したのだ。

1936年に誕生したアメリカ初のダウンジャケット。動いてもダウンが偏らないように施されたダイヤモンドキルトは画期的であり、1940年代にはアメリカで特許が取得された。生地は撥水加工が施されたコットンナイロン生地なので、多少の雨でも保温性を保持する。各3万8500円

「スカイライナー」の特徴はリブ素材になっている襟だが、発売当初はシャツのような襟付きのものが「スカイライナー」、現在のようなリブ襟のものを「オリジナルモデル」として展開していた。1945年にはシャツ襟とリブ襟が選べる仕様に変更されどちらのモデルも「スカイライナー」となる。

「エディー・バウアー」の名作をトラッドに着こなす

ダウンジャケット3万8500円/エディー・バウアー(水甚TEL058-279-3045)

【DATA】
水甚
TEL058-279-3045
https://eddiebauer.jp/

この記事を書いた人
なまため
この記事を書いた人

なまため

I LOVE クラシックアウトドア

1996年生まれ、編集部に入る前は植木屋という異色の経歴を持ち、小さめの重機なら運転可。植物を学ぶために上京したはずが、田舎には無かった古着にハマる。アメカジ、トラッド様々なスタイルを経てアウトドア古着に落ち着いた。腰痛持ちということもあり革靴は苦手、持っている靴の9割がスニーカーという断然スニーカー派。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

【BIG SMITH×2nd別注】米軍の名作バッグをデニムで再構築! 経年変化が楽しめるデニムのエプロンバッグ。

  • 2025.09.22

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! BIG SMITH × 2nd ワーカーズエプロンバッグ 1940年代のアメリカン・レッドクロス(米国赤十字社)が製...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

Pick Up おすすめ記事

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

【BIG SMITH×2nd別注】米軍の名作バッグをデニムで再構築! 経年変化が楽しめるデニムのエプロンバッグ。

  • 2025.09.22

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! BIG SMITH × 2nd ワーカーズエプロンバッグ 1940年代のアメリカン・レッドクロス(米国赤十字社)が製...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...