中目黒の元バーガー職人が創った、素晴らしきホットドッグ専門店。

素材と調理に本気でこだわって、ファストフードのイメージを一変させた「グルメバーガー」。『スクーカム・ホットドッグ・ダイナー』のオーナー飯田優作さんはその轍をホットドッグでなぞる。最高の食材を、丁寧なクラフトマンシップで美味しく仕上げる、『SKOOKUM(他にはない)』ホットドッグ。某有名グルメサイトで、ホットドッグ部門1位になった。そこに至るまでの経緯、店をオープンしたきっかけなど、飯田さんに話を聞いた。

「SKOOKUM HOTDOG DINER(スクーカム・ホットドッグ・ダイナー)」オーナー・飯田 優作さん|1986年愛知県名古屋市生まれ。大学時代グルメバーガーにハマり、名古屋周辺から東京までハンバーガー専門店を食べ歩くように。店を開くことを考え、やがて東京の有名店で修業、店長になる。ハンバーガー専門店がかなり増えたことで、ハンバーガーではなくホットドッグにしようと2021年独立。中目黒に『SKOOKUM HOTDOG DINER』をオープンする。

ハンバーガーが走った轍を ホットドッグで駆け抜ける。

店の広さは約15坪・35席。アメリカを感じさせつつも「やりすぎない」店づくりで、誰しも入りやすい雰囲気に。NFLやNHLなどスポーツの映像を流すのは、「ホットドッグ=スタジアムグルメ」の世界観を感じさせるためとか。確かに!

「最高」「素晴らしい!」とか、「他にはない」なんて意味らしい。飯田優作さんが2021年、中目黒に開いた店の名『SKOOKUM(スクーカム)』のことだ。正式名称は『スクーカム・ホットドッグ・ダイナー』。日本では珍しいホットドッグの専門店だ。

「野球場とかコンビニとかカフェとか。ホットドッグを食べられる場所は多い。けれど、専門店って意外と少ないんです。『手軽で・安くて・まあまあ美味い』なんてイメージが強いですからね」

飯田さんは二カッと大きな笑顔をたたえながら言葉を続けた。

「ただうちのは違います。手軽だけれど、それなりのお値段もいただく。そして“かなり美味い”」
本当だ。手作りのソーセージは、まず1本155gとボリューミー。そいつと自家製ベーコンにBBQソース、アボカドなんかをサクッと食感のパンにはさんでほおばる幸せときたら、ない。1500円の値段も納得の、まさに“最高”なホットドッグなのだ。

「僕が作っているのはグルメドッグ。グルメバーガーのホットドッグ版ですからね」

ホットドッグは、何とソーセージから店で手作り! まごうなき「グルメドッグ」なのです」
店のそこかしこにホットドッグにまつわる雑貨や玩具が溢れる。「結構、巷にあるものなんです」

ビーン・ブーツで小学校に通っていた。

「コレだ!」

大学2年の夏、飯田さんは初めて1000円を超えるハンバーガーを口にして、声が出たという。

「2006年かな。グルメバーガーが流行りはじめ、地元・名古屋でもちょっとずつ店ができた。最初に食べたとき『コレこそがオレが追い求めたモノだ』と感動した。マックのバーガーが100円以下だった頃だから、なお。以来、バーガー店めぐりをはじめたんです」

多くのバーガーショップがアメリカを感じさせる店構えだったことも、強く魅かれた理由だった。何せ小学校に501やビーンブーツを履いて通う、やたら渋いアメカジ少年だったからだ。

「父親がアメカジ好きだったんです。馴染みのショップに連れて行かれ、NFLなんかの映像が流れる中、いつも試着させられてました。それが刷り込まれちゃって」

高校時代はアイスホッケーに励んだのも、英才教育の影響だったのかもしれない。いずれにしてもバーガー店めぐりは、大学卒業後、地元メーカーに就職してからも続いた。遠征まではじめたほどだ。東京出張とあわせて首都圏の話題のバーガー店を食べ歩き。『フェローズ』、『ブラザーズ』、『フランクリン』……。とコチラがメインかというほど食べ歩いた。

そして「自分もバーガー店をやろう!」と決断する。入社して4年間、ビジネスの一線にいた経験も、影響したようだ。

「働いて誰かに喜ばせて対価をもらう。仕事って煎じ詰めれば同じ。なら、オレは本気で好きなこと、楽しいことで稼ぎたいなって」

二足のわらじからはじめた。名古屋のグルメバーガー店で夜と週末、バイトした。パテを練り、焼き、挟む日々。学生時代の調理の経験と、数百個のグルメバーガーを食べ歩きした知見が活きた。

「やはり手を動かすと『あそこのバーガーはこうやっているのかな』とか『バンズはこんな感じで焼いているかも』と見えてくる。昼も夜も働きづくめでしたが、研究するのが面白かった」

1年もするとこの世界でやっていく自信も芽生えた。そして向かった世界の中心は、グルメバーガーの震源地、東京だった。

中目黒駅から徒歩7分ほど。目黒川から1本入った1階にある。目印は飯田さん所有のやたら渋いショベルヘッド

世田谷の有名店で挫折と栄光を味わった。

26歳で世田谷の某バーガー店に転職。独立を視野に入れた修行を始めた。アメリカ好きだった父も『ハンバーガー? いいじゃないか』と背中を押した。

『結構やれるだろ』

過信だった。競争の激しい東京で毎日行列が耐えないのは、伊達じゃなかった。スピードも調理のレベルも段違いで、こなすのがやっと。朝から晩までつくり、店長にドヤされ、毎日くたくたになった。

「キツかった。まるで修行僧でしたね。ただ充実感もあった。自分の糧になると思っていたから」

筋力や経験値は負荷が重いほど、身につくものだ。別の世界から飛び込んで、誰よりモチベーションも高かった飯田さんは、日に日に腕をあげ、メキメキと頭角を現した。『バーガーを焼けるまで3年はかかる』。言われていたが、2年ちょっとでバーガーを焼くシェフ兼店長にまで昇格していた。

地獄はそこからはじまる。『何やってんだ!』『遅い。遅いよ!』『おまえ、向いてないよ』飯田さんが店長になってから店にキツ目の声が聞こえるようになっていた。忙しさからくるのとはまた別の緊張感も流れ始めた。起点はすべて飯田さんだった。

「プレッシャーだったんです。バーガーランキングでトップに立つ店の店長を任された。喜びより先に『あいつが店長になってダメになった』と言われるのが怖かった。だから120%の力で、すべてを捧げて仕事に向かったんです」

けれど店にいるみんなが同じ熱量のはずなかった。結果、社員が辞め、バイトと自分だけで店をまわさざるを得ないこともあった。

「辛かった。自分を責め、メンタルをやられた時もありました」

どうせ働くなら楽しみながら、好きなことで。そう思って飛び込んだのに、暗くつらい日々を過ごしている自分にうんざりした。

「結局、自分が変わるしかなかった。マネジメントの本とかとにかく読みあさったりましたね」

少しずつ、少しずつだ。しゃにむに働くのは変わらなかったが、押し付けるのはやめた。ニコニコ……とまではいかなかったが、怒鳴るのもやめた。徐々に社員がまた増えて定着、某グルメサイトでバーガー部門の1位にもなった。気づけば、7年半もその店にいた。

「父が死んだのはその頃でした」

リーバイスのフラッグと左の星条旗は父親の部屋に飾ってあったもの。開店以来、店を見守る
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