機内食から“ハワイ料理店”への転身。店づくりのヒントは「USDM」。

アメリカ市場で販売されたスタイルそのまんまを再現するカーカスタムスタイル「USDM(United States Domestic Market)」。そんなカルチャーにどっぷりハマったオーナーの御園明弘さんが、そのスタイルをリスペクトし、オープンさせたハワイ料理店が、「DA PLATE LUNCH 808(ダ・プレートランチ808)」。その経緯と、店について詳しく訊いた。

「DA PLATE LUNCH 808(ダ・プレートランチ808)」オーナー・御園明弘さん|1968年千葉県匝瑳(そうさ)市 生まれ。中学時代からアメリカンカルチャーに魅かれるようになる。成田のエアライン向けの機内食をつくる会社や、西海岸の老舗カーアクセサリーブランドが運営するカフェのシェフなどを経験。2021年に千葉県佐倉市にハワイ料理店『DA PLATE LUNCH 808』をオープン

ハワイの食材、ハワイの椅子。ココがホンモノである理由。

グリーンのベンチとテーブルはアメリカ製。カウンターの高さはハワイの標準と同じに。プラスチックのプレートやカトラリーケースも本場のそれ……。「っぽい」ではなくて、本物を揃えて、ハワイから移築したような雰囲気にしてあるのだ

ハワイのロードサイドでは雑貨店なんだか食堂なんだか、よくわからない小さな店が、よくある。こじんまりとしたカウンターの中にいる陽気な店主に話しかける。すると香ばしい「ガーリックシュリンプ」やローカルに愛される麺料理「サイミン」などを、たらふく頬張れる。そして口の中に、美味いとアロハとマハロが入り乱れ、じんわり幸せになれる。

『ダ・プレートランチ・808』は、そんなオアフやマウイでよく見かける食堂みたいな店だ。いや。“みたいな”と書いたが、実のところ“そのまんま”。千葉の佐倉市にあるから戸惑うが、ノースショアから持ってきたような風情が漂う。味も店構えも、まるでハワイそのもの、なのだ。

駐車場前のテラス席。ヘビーデューティなアメリカンフェンスが佐倉をカイルア・コナにする

オーナー・御園明弘さんは2年前にこの店をつくった。店のホンモノ具合は、ハワイが好きだったことも当然関係しているがもうひとつ、「『USDM』好きも影響している」と言う。

「『United States Domestic Market』の頭文字で、日本車をアメリカ国内仕様に変えて楽しむカスタムカルチャー。僕は日産のNV200をいじって、パーツやアクセをすべてUSモノで固めている。あとは車内に置く雑貨やタバコ、缶ジュースなんかもアメリカのホンモノで揃えないと雰囲気が出ない。クルマも店も同じです」

『アメリカン・グラフィティ』と不良文化が青春だった。

今でこそUSDM乗りだが、若い頃はヤンキー車乗りだった。1968年生まれ。ヤンキー文化花盛りな’80年代初頭に千葉で育った御園さんは、高校時代はヨンフォアに跨がり、卒業してからはフェアレディで走り回った。

「たいてい蛇行運転でしたけど」

就職もまあまあ蛇行した。最初は「家から近いから」と成田空港のパーラーに。その後、設備工事の会社や整備会社などを転々とした。そしてアメリカを思い出す。

「立ち止まって考えたら『アメリカン・グラフィティ』が好きだったことを思い出した。その頃はアメリカのミニトラックに乗り、’50年代っぽい格好をしていましたし。あと強烈に魅かれたのが……」

アメリカンダイナーだった。劇中に出てくる『メルズ・ドライブイン』のような、パステルカラーを使ったポップな店内で、バーガーやシェイクを出すのに憧れた。

レジ周りのこのごちゃっとした感じ。うん、まさにハワイのグローサリーストアまんまです
無骨な意匠のドリンク冷蔵庫ももちろんMade in USA。ステッカーチューンもお約束だ

「あんな店がつくりたい。そう考えて飲食の世界に進んだんです」

最初は洋食店やイタリアンレストランへ。パーラー時代に調理師免許をとったため仕事そのものは問題なかった。ただハードワークなのに薄給なのがこたえた。

「もう30歳近くでしたから。料理は好きだけどもっと稼げる仕事がないかな、と探したら、慣れ親しんだ成田にあったんです」

エアライン向けにビーフやチキンを提供する。そう、機内食だ。

ずっと後で、今につながる「ムーンアイズ」との出会い。

成田空港などの空港周辺には機内食を専門につくる会社がある。たいていホテルの厨房などにいた料理人が転職してくる場。珍しく一般募集していたのを見つけ、御園さんは飛び込んだわけだ。

「『街場の料理人あがりか』とちょっとバカにされましたけどね」

いい修行の場になった。フレンチの基本である野菜のシャトー剥きやキノコの切り出しをいやというほどやらされたからだ。クルマをいじるのと同様、凝り性だったため、みるみる腕をあげた。USDMにハマり始めたのもこの頃だ。そしてクルマが縁で知り合っ友人から「シェフを探している店がある」と転職先を紹介される。

「横浜の『ムーンカフェ』でした」

アメリカ車のクルマ部品や雑貨を扱う老舗ブランドが運営するアメリカンダイナー。憧れたアメグラの世界で、シェフになれたわけだ。

「海外研修して味を学ぶほど本格的なダイナー。最高でした。その店に立てたのは貴重な財産です」

もっとも、そこも4年弱で辞める。結婚を機に、より安定していた機内食の会社に戻ったからだ。そして満足な給料をもらいながら、休日はUSDMのクルマをいじる充実した生活に。ふらふらとした蛇行運転は、いつしか安全でまっすぐな巡航をしていたわけだ。

コロナ禍に入るのは、そんな時だ。2020年、世界中がロックダウンになり旅客用飛行機が飛ばなくなった。機内食の仕事は激減。

「週1日しか出社せず、機内食ではなく弁当をつくったりしてね」

「それなら違う仕事を……」と考えたとき、浮かんだのが自分の店。ハワイのプレートランチを出す小さな食堂を開くことだった。なぜダイナーじゃなかったか?

「ハワイの食堂って朝食の時間に開店して夕方で閉まる。けれどそのスタイルならやりやすいなと」

しかも、ハワイの食堂ならUSDMスタイルの「本場ハワイの内装や小物を置く」にしても、ダイナーより資金を抑えられた。

オアフやマウイにあるような、ローカルの食堂をイメージした『DA PLATE LUNCH 808』。だから店先にある消火栓も、このように黄色だ。「ハワイは消火栓も消防車もすべて黄色ですからね。これはお客さんからのプレゼントなんです」

「何よりハワイの料理は日本風に変えなくても日本人の口に合う」

こうして2021年に『ダ・プレートランチ808』が生まれた。808はハワイの市外局番だ。オープン当時はまだコロナ禍がおさまっていなかった。しかし、千葉県内はもちろん遠くは大阪からクルマを飛ばしてあさイチで来る人をはじめ、常連客は多い。

「オアフで食べたあの味だ」、「ハワイにいったあの店みたい……」。コロナ禍で、大好きなハワイへ行けなくなった人たちが大勢いた。家族がハワイでプレートランチ店をやっているアメリカ人が「懐かしい。最高!」と声をあげたのも、忘れられないという。

「いろいろあって辿り着いた店だけど、今が一番仕事が楽しいかな」

時に蛇行も悪くない。ハワイも人生ものんびりだからいいんだ。

Garlic Shrimp Plate。ハワイといえば、な香ばしいガーリック×エビの逸品。ハワイの某有名店と同じレシピで仕上げてある。これはビールとぜひ。1815円
Chili Frankfurt Plate。フランクに自家製チリビーンズソースを添えたボリューミーな品。「タパティオのホットソースでさらに辛くするのもオススメ」。1485円
Ube Pancake。紅山芋(ウベ)を使ったパンケーキ。コクのあるまったりとしたソースがクセになる。1320円
Melona Haupia Pie。ココナツミルクをふんだんに使う「ハウピアパイ」。メロン味で色もいい! 506円
料理はすべてオーナー・御園さんが手がける。レシピも食材もほぼハワイと同じものだ

【DATA】
DA PLATE LUNCH 808
千葉県佐倉市王子台3-2-4
TEL043-312-3180
営業/10:00〜15:00(月〜木曜)、7:00〜20:00(土曜)、7:00〜16:00(日・祝)
休み/金曜
instagram:@daplatelunch808

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning 2024年8月号 Vol.364」)

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