1.革ジャン
『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』モデル
一作目で採用されたジャケットは、著名なコスチュームデザイナー、デボラ・ナドールマンによってデザインされ、当時独占契約を結んでいたバーマン&ネイサンズのために、英国ウェステッドレザー社の前身となるレザー・コンセッションネアが製作。
ポケット下のピッチが狭く、裾にアウトステッチが施されているのが初代の特徴。また上下のスナップボタンもまだない。
二作目以降と比べ台襟が低めに設定され、襟先もやや丸みを帯びている。お馴染みのA-2から着想を得たという。
アームは立体的なラインを確保できる二枚仕立て。辺ともに巻き縫いで仕上げられている。
プロトタイプではD管が採用されたものの、薄いラム革のストラップを保持できないことから⻑方形に置き換えられた。
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』モデル
二作目で採用されたクーパー社のジャケットは、モデリングに問題があり、撮影当時ハリソン・フォードが着用を拒否。一方でこちらは、最新作までのテンプレートとなる。監修はウェステッドレザー代表だった故ピーター・ボットライト。
台襟が高めに設定され、よりジェントルな印象へと一新。カラーも軽めのチョコレートへと変遷している。
前二作同様にラム革を採用。より広い可動域を確保できるようアーム内側の縫製が巻き縫いから脇割りへと変遷している。
ポケット下のピッチがやや広めにとられ、裾ステッチも撤廃。幅広のストームフラップにはスナップボタンが見て取れる。
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』モデル
LA在住のレザースミスにして、かの『ターミネーター』のジャケット製作も担当したトニー・ノワク氏が手掛けたオフィシャルメイド。肩口がかなり太めに作られており、、使用レザーもラムからワイルドなカウハイドへと変遷している。
インディファンであるグラフィックデザイナー、猫印さんがお子さんのためにトニー氏にカスタムメイドしてもらったというキッズモデル。
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』モデル
2023年6月に公開の最新作のレプリカジャケットもすでに販売されている。製造はウェステッドレザー社。スナップボタンがなく、巻き縫いの袖など初代にほど近い仕様を踏襲していることから、一作目との特別な関係性を期待しているファンも少なくないとか。
撤廃されたスナップボタンが原点回帰を匂わせるものの、裾ステッチは見られない。
アクションプリーツ部のアジャスターには、初代プロトタイプと同じくDリングが採用されている。
2.フェドーラハット
ジャケット同様、「シルエットを見ればすぐにそれとわかる」という条件から先述したデボラ・ナドールマンによって考案され、定番ギアのひとつとなったフェドーラハットも、じつは作品ごとに異なる特徴を持ち、よりアイコニックに進化している。
『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』モデル
英ハーバート・ジョンソン社製。高い位置でタイトなピンチを与え、中央に深いバッシュを加えたクラウン、リボンの上のわずかに歪んだ逆テーパーが特徴的。
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』モデル
二作目は未だ非公開だが、ファンのリサーチからLAに拠点を置くバロンハッツ社製とほぼ断定。クラウンがやや低くピンチが簡略化されよりシンプルに。
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』モデル
再びハーバート・ジョンソン社製に回帰。クラウンがやや高めに設定され、ブリムの背面には、一作目同様にわずかな上向きカールが見て取れる。
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 』モデル
アドベンチャービルド社が製作。クラウンやバッシュ形状など前作までのいいとこ取りながら、素材は今までのラビットファーフェルトからビーバーフェルトに変遷。
3.パンツ
第二次世界大戦時の米陸軍と陸軍航空隊の士官用トラウザーズから着想を得てノエル・ハワードにより製作された2プリーツ仕様。前開きはボタンフライ、ヒップはフラップポケット、ややピンクがかったウールツイルを採用。写真はファン御用達のウェステッド社製。
4.シャツ
19世紀の典型的なサファリウェアをベースにノエル・ハワードが製作したオリジナルデザイン。二作目と三作目はボタン色がやや暗く、四作目では前身頃のプリーツに切れ目のないものが採用されている。
『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』モデル
エポレットを備えたコットン100%のサファリシャツ。フラップポケットと肩から裾へと伸びる2本のプリーツが特徴的。写真はウェステッドレザー社製。
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 』モデル
コマ送りや一時停止を駆使してディテールワークを研究し、唯一意匠の異なる四作目仕様をDIYで再現。インディファン猫印さんのコレクションのひとつで、奥様のお手製。素晴らしいクオリティ。
(出典/「Lightning2023年7月号 Vol.351」)
Text/T.Hakusui 白水健寛 Photo/Y.Roppongi 六本木泰彦
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