今も米国はヴィンテージ宝島! まだ見ぬギターを探し求めて。

  • 2023.05.24

楽器の街、御茶ノ水の老舗ギター・ショップ『ウッドマン』。オーナーの坂尻誠一氏が1998年9月にオープンしたお店で、ギターだけではなくバンジョーやマンドリン、そしてウクレレまで、オーナー自らアメリカで買い付けてきた価値のある品々が並ぶ。今もアメリカに憧れ続ける坂尻誠一氏に買い付けの魅力について聞いた。

「Woodman」代表・坂尻誠一さん|大手楽器店から独立し、1998年9月にウッドマンをオープン。愛車は1965年製ムスタング。店内ではアロハを着用し、アメリカへの想いも全開だ。ギターの買い付けも再開予定!

ひとつひとつに違った歴史が詰まっているのもヴィンテージ・ギターの魅力。

ー坂尻さんにとってアメリカはどんな存在ですか?

坂尻:私の年代だと子供の頃、テレビでアメリカのドラマを放送していたんです。例えば『奥様は魔女』とか。私は、石川県の能登の山奥にある田舎で育って、それこそ藁葺き屋根の家に住んでいましたから、海外ドラマの家は別世界でしたね。家に冷蔵庫があって、自家用車に乗ってという……それはもう憧れていましたね。その後、中学校から音楽を聴き始めて、高校からバンドを始めるとボブ・ディランとか、ザ・バンドとかアメリカ音楽も好きになって、アメリカのカルチャーにも興味を持ちました。当時は、映画の『イージー・ライダー』からもすごく影響を受けて、バイクの免許も取りましたよ。

ー坂尻さんは現在でも旧いアメリカ車に乗っていますし、アメリカへの憧れは続いていますよね?

坂尻:変わらないのは当時のアメリカへの憧れですね。あの時のインパクトが今でも続いています(笑)。もう歳ですから、アメリカの現実は知っています。でも当時、ああいう音楽や文化を作り上げた魅力は変わらないですね。それに、今ではアメリカ人の友達もたくさんいて、当時の自分が知らなかったことも含め、相変わらず面白い国だと思っています。

ーウッドマンはアメリカの楽器店のような雰囲気ですが、坂尻さんのアメリカ&ギター好きが高じてオープンしたのですか?

アメリカの楽器店のように開店当初から店内に設けられたリペア・ブース。買い付けたヴィンテージ・ギターは、ここでしっかりと修理、調整してから販売される

坂尻:そうですね。当店は1998年9月にオープンし、昨年25 周年を迎えました。お店を始める前にアメリカの楽器店を巡り、こういうお店を作りたいなと参考にさせてもらいました。まだ足元にもおよびませんが、グルーン・ギターとかノーマン・レア・ギターといった有名なお店も参考にしています。

一番こだわったのは、店内にリペア・ブースを併設すること。当時のアメリカの楽器店では一般的だったんですが、日本でまだあまり無かったと思います。アメリカのヴィンテージ・ギターを取り扱うので、それをお店で修理、調整するサービスをお客さまに提供したいと思ったんです。

ー開店当初から仕入れはアメリカでの買い付けですか?

坂尻:店をオープンする前にアメリカで1度買い付けをし、それから年に何回かギター・ショーに足を運んで仕入れをしています。今では直接、仲の良いディーラーから送ってもらうこともあります。

ー最初の買い付けは苦労しましたか?

坂尻:独立する前は大手楽器店で働いていて、その時に何回か買い付けに行ったことがありました。だから、その時に知り合ったディーラーとコネクションがあったので、そこまで苦労しなかったですね。当時知り合った方々は、とても親切にしてくれました。アメリカのディーラーはほとんどが個人で、私が独立すると言った時には歓迎してくれて助けてくれました。

2007年のアーリントン・ギター・ショーで発見したギブソンの “Style-U”。珍しい楽器も仕入れている

ー気になるのはどのような所で買い付けをするのかという点です。何かそういった専門のマーケットがあるのですか?

坂尻:基本はアメリカ各地で行なわれているギターのトレード・ショーです。そのイベントの前後にディーラーに宿泊しているホテルまで持ち込んでもらい、個別に交渉したりすることもあります。それからショーにはディーラーだけでなく、一般の人が持ち込む楽器もあるので、良い物があればそれを買ったりします。

個人で買い付けるようになってからは、ギター・ディーラーとプライベートな関係を築けるようになりました。ギターの売り買いだけでなく、すごくフレンドリーな人ばかりなんです。ショーが終わった後、ビールを片手にみんなで飲みながらギターを弾いたりするのが楽しいですよね。だから商売だけの関係ではないですね。

ーそれは楽しそうですね。ショーなどで出品されているギターのコンディションはどうですか?

坂尻:基本的に日本みたいにきっちり調整されているギターは、ほぼ無いですね。修理もアメリカン・クオリティー。ただ弦高が少しぐらい高いギターでも、「これは最高の音だぜ」って彼らが弾くと、すごくカッコいい音が鳴る。それがアメリカ。

ただその状態のままだと、やはり弾きづらい。だから日本に持って帰ってきてから、しっかりセットアップして販売します。特にヴィンテージ・ギターは、それが大切です。ちゃんと調整された弾きやすいヴィンテージ・ギターの魅力を知ってほしいと思って販売しています。

ーこれまで購入したギターで、特に印象的なギターは?

坂尻:あり過ぎて絞れないですが、最近なら1968年製のプロトタイプのD-45です。ギターの歴史を作った博物館のギターを、自分が手にしていいのかなと思いましたね。音楽の歴史を作ったギターですので、思い入れが強いです。

ーヴィンテージ・ギターには前の持ち主の思い出が残っていたりもしますよね?

坂尻:よくあります。ケースの中に前の持ち主の思い出の品など、色々な物が入っていたり。だから、ギターの歴史まで丸ごと買っている感覚です。単純にギターのクオリティーだけじゃない、何人かの人たちが弾いてきた歴史を含めてヴィンテージ・ギターだと思います。高い安いは関係なく、ギター1本、1本に物語があるんです。それもヴィンテージ・ギターの魅力です。

2016年のスパータンバーグで見つけた、ロバート・ジョンソン・ファン憧れの1928年製ギブソン“L-0”

ーコロナが収束しつつありますが、今後の買い付けは?

坂尻:今年の夏頃からまた再開しようと思っています。ただ円安になってしまい、ヴィンテージ・ギターの相場がかなり高騰してしまったので、購入できるギターが少なくなっていきそうですが。でも、アメリカに行くことで旧知の仲のディーラーとも会えますし、マーケットの状況なども肌で感じることができます。だから体が動くうちは、アメリカでの買い付けは続けて行きたいですね。良いギターを仕入れますので、ぜひウッドマンに遊びに来てくださいね。

コロナで買い付けに行けなかったが、2021年に再開。フィラデルフィア・ギター・ショーにて旧い友人と

Woodman厳選! ビンテージアコースティックギター3選。

【1968年製】Martin D-45 Prototype

1968年に復活するマーティンのフラッグシップ・モデル“D-45” のプロトタイプ。当時2本作られたうちの1本で、このギターが無ければ音楽史が変わっていた可能性も。

【1957年製】Gibson J-45

ギブソン製アコギの中で最も人気のモデル。国内外の有名ミュージシャンが愛用する。塊で飛ぶ音と、別名“ワークホース” とも呼ばれ、過酷なツアーに耐えるタフさも魅力。

【1965年製】Fender Malibu

エレキ・ギターで知られるフェンダー社は、主に1960年代にヘッドがストラトのようなデザインの個性的なアコギも作っていた。ネックがボルトオンである点も特徴だ。

【DATA】
Wood man
東京都千代田区神田小川町2-10 宇野ビル2F
TEL03-5283-3422
営業/11:00〜20:00
休み/水曜
http://www.woodman.co.jp/

(出典/「Lightning2023年5月号 Vol.349」)

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