改めて感じたいノーマルルックの魅力。
’90年代後半から’00年代前半にストリートを席巻したバイクブーム。事の始まりは原宿界隈の美容師が、通勤の足としてヤマハのTW200を使い始めたのがそもそものルーツと言われている。
ハーレーはカッコいいけど、高いし車検もある。それに比べてTWは250㏄で車検もなく、狭い都心でもスイスイ走れる。そして(当時は)不人気で安い。何しろ太いリアタイヤがカッコいいじゃん!……という至極明確な理由から。もちろん吊るしで乗っていても面白くないので、それこそハーレーでチョッパーを作るように、カスタムをして自分のスタイルに仕上げて楽しんでいたのがストリートカスタムの始まりだ。
この時に流行したカスタムのひとつが「スカチューン」。これはサイドカバーを外し、中に収納されているエアクリーナーやバッテリーなどを変更や移設、もしくは取り外してフレームの中を見えるようにするカスタムのこと。ちなみにこのスカチューンの名前の由来を「スカスカ」だから「スカチューン」だと思っている人も多いが、実はこれは間違い。スカチューンカスタムが生まれた際に、フレーム越しに風景が「スカッ」として見えるからスカチューンと呼んだというのが真相のようだ。
当時のストリートバイクとして人気を博したアンダー250㏄のバイクの多くは、このスカチューンなど、多かれ少なかれ何かしらのカスタムが施されている。また乗りっぱなしの車両も多く、まともな状態で残っている個体はまれだ。当時はカスタムするのが当たり前だったが、今見るとどのバイクもノーマルの姿でも十分に個性的だし、美しくもある。そして素材も今のようにプラスチックが多様されておらず、鉄やアルミが多く使われており、質感も高い。メーターもデジタルではなく、アナログなのがポイント。オドやトリップも「距離を刻む」という表現がふさわしい回転式だ。
まさにネオヴィンテージと呼びたくなるストリートバイクだが、ほぼストック状態で販売しているショップを発見! それが神奈川県茅ケ崎のジェーデポだ。ノーマルルックの’90年代バイクが並ぶ様は当時のバイク好きにはまるでタイムスリップした感覚に陥るほど。
今乗るならノーマルのスタイルを崩さずに、経年した風合い味わいながら街乗りを楽しみたい!
鉄やアルミを多用した、シンプルで美しい小さなバイクたち。
2001 YAMAHA TW200
1987年に発売されたTW200。フルノーマルのこの個体は’00 ~’01年に発売されたE型。角型ヘッドライトから丸目に統一され、フロントはディスクブレーキ化。そして特徴的な亀甲パターンのタイヤというストリート向けの仕様で発売。翌年から排気量が225㏄となる。34万8000円
1989 HONDA GB250 CLUBMAN
最新モデルのGB350が大人気だが、GBといえばこのクラブマンという人も多いだろう。1983年から1997年まで、マイナーチェンジを繰り返しながら販売されたロングセラーモデルだ。クラシックスタイルだが、軽量高剛性のセミダブルクレードルフレームなど当時の最新技術を多数採用。52万8000円
1996 YAMAHA RENAISSA
250㏄クルーザー・ビラーゴの空冷Vツインエンジンを搭載したイタリアンスタイルのネイキッド。兄弟分のSRVと同様に、高い質感を持つ美しいデザインが特徴。初期型はマフラー、エンジン、フロントフォークケースがブラックアウトされているのが特徴。後期ではシルバーになる。37万8000円
1997 YAMAHA BRONCO
セロー225をベースにしたストリートスクランブラー。デザインの完成度が高すぎたせいか、カスタムパーツもあまり販売されることもなくストリートバイクブームではどちらかというと目立たない存在だった。この個体はスーパートラップマフラーに換装され、社外のリアキャリアを搭載。42万8000円
【DATA】
J-depot
神奈川県茅ヶ崎市本宿町2-6
TEL0467-39-6913
営業/10:30~19:00
休み/水曜日
https://www.j-depot.com/
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)
Text/M.Sasaki 佐々木雅啓 Photo/D.Katsumura 勝村大輔
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