必要最低限の装備しか備わらないスパルタンな内容が男心をくすぐる。
三菱とラリーの歴史は古く、’60年代にはコルトで海外のラリーに参戦。以降も積極的にラリー活動を続けてきた。そんな長きに渡る三菱ラリー史を語る上で欠かすことのできない車種が、ランサーエボリューション、通称「ランエボ」だ。
5ナンバーボディであるランサーに、ひと回り大きな車格のギャランVR4に搭載されている2リッターターボエンジンや4WDシステムを詰め込み、WRCのグループAホモロゲーションを取得。パワーウエイトレシオは同時代のスカイラインGT︲Rを超える市販車としては異例のパフォーマンスを誇った。
ランエボにはランサーGSRをベースとしたGSRエボリューションと、競技用に不要な装備を徹底して省いたランサーRSをベースとしたRSエボリューションの2種類が存在する。
RSはパワーウインドーや電動格納ミラー、エアコン、オーディオなどの快適装備や競技に不要な電子制御などを省くだけでなく、のちに社外品に交換されることを前提として低グレードランサーのファブリックシートや、シンプルなブレーキと鉄ホイールを装着して販売された。’90年代の車両とは思えないほどストイックな競技向け車両だ。
ここに紹介するランエボ3RSは、4代目ランサーRSをベースとしたランエボ第一世代の最終モデル。初代エボやエボ2のウィークポイントを克服し、完成度は高い。ちなみにGSRと比べてRSは圧倒的に生産台数は少なく、エボ3ではGSRが約9000台に対して、RSは約1000台と言われている。
多くの場合競技に使用するため、ロールバーを装着したり、足周りを改造されているケースが多いが、「これほど手付かずの状態をキープし、新車当時の姿を色濃く残した個体は珍しい」と、この車両を保有している水上自動車工業の水上社長が評する通り、販売当初の姿を色濃く残している貴重な個体だ。
電動デバイスや安全装備が当たり前の現代で、マニュアルシフトでウインドウも手動というシンプル極まりない車両に乗るのは、ある意味贅沢な楽しみ方だ。
1995 MITSUBISHI LANCER RS EVOLUTIONのディテールを拝見!
本来RSにはエアコンは備わらないが、この車両はオプションのマニュアルエアコンを装備。さらに社外のオーディオも前オーナーによって装着された。
シートは交換されることを前提としているので、低グレードのファブリックシートが備わる。この車両はなんとそのままの状態をキープしている。
手動のウインドウクランク。スピーカーグリルも塞がっている。前オーナーはこのディティールをあえて残すため、リアにスピーカーを搭載している。
エボ3から標準でサイドスカートが装着されるようになった。このRSのドアノブやミラーは未塗装樹脂のブラックのまま。
元々ギャランVR-4に搭載されていたエンジンは、各部の見直しを図り、初代エボの250PSに対して270PSまでパワーアップ。
RSは本来シルバーのスチールホイールとなるが、この車両はそんな雰囲気をキープしつつ、軽量なスーパーR.A.Pアルミホイールを装着する。
【DATA】
水上自動車工業
埼玉県北足立郡伊奈町小針新宿717-1
TEL048-729-1330
営業/9 :00〜18:00
http://www.mizukami-auto.com/
(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)
Text & Photo/K.Daisuke 勝村大輔
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