「ペンランドカフェ」代表・荻敏英さん
年代を問わずメーカーすら対応してくれない万年筆の修理にも対応する万年筆のプロ。他店で購入したものでも修理に対応してくれる強い味方。
慣れれば代々使える筆記具の王様・万年筆。
今も昔も筆記具の王様として君臨する万年筆。その歴史はおよそ200年といわれ、様々な改良を経て、1883年にルイス・エドソン・ウォーターマンが現在のような、インクを補充して毛細管現象を利用してペン先からインクが流れるようなペン芯を発明したものが現在の原型となっている。
万年筆の基本的な構造として知っておきたいのが「ペン先」と「吸入機構」のふたつ。
まず、「ペン先」で知っておきたいのが素材。大きく分けると、ステンレススチールの「鉄ペン」と金を使った「金ペン」の2種類。ステンレススチールは硬めの書き心地で価格は安価、金は柔らかな書き心地で価格は当然お高め。金はさらに14Kや21Kなど含有率が異なり、数字が大きいほど柔らかくなる。
ちなみに金の方が高級だし万年筆独特の柔らかい書き味が楽しめるからいいのかというとそうでもない。書き味の好みもあるし、ヴィンテージに関してはステンレスでも十分に馴染んでいると滑らかな書き味を持つものもあるので、あくまでも個体差があるようだ。
そして、もうひとつが「インクの補充方法」。インクを様々方法で吸上げる「吸入式」、カートリッジを差し込む「カードリッジ式」、その両方使える「両用式」などがある。
個体差もあるので試してから購入が吉。
旧い歴史を持つ万年筆だけに当然ヴィンテージ、さらにアンティークの世界も存在するが、これから始めるらまずは1940~’70年代のヴィンテージがオススメ。
「語り所はたくさんありますが、初めてなら持った時の重さや大きさのバランスと、ボディデザインの好みで選ぶといいですね」
とは、ヴィンテージの万年筆販売と修理も手がける数少ない専門店「ペンランドカフェ」(愛知県名古屋市)代表の荻さん。
「ペン先の素材もありますが、これは個体差があります。いい具合に使われてきてこなれたモノだと鉄ペンでも柔らかいものもあるし、書く文字の大きさや用途に応じて好みもあるので一概にどれがいいというのはありません。ただ、個人売買やオークションで気をつけたいのがインクを吸い上げなかったりペン先が壊れているモノもあるということ。修理も可能ですがかえって高くつくこともあるので注意が必要です」
いいモノに出会えるかどうかは運次第。いきなりヴィンテージを選ぶもよしだし、まずは安い現行品を試してからヴィンテージの世界へ足を踏み入れるのもありだ。
ともあれ、これを機に粋な大人の小道具としてお気に入りの万年筆を手に入れてみてはいかが?
インクの充填方法もさまざま。
インクの充填方法は主に使い捨てのカードリッジを装着する「カードリッジ式」、インク瓶からインクを吸い上げる「吸入式(コンバーター)」の2種類。吸入式はさらにいろんな方法がある。
両用式
カートリッジと吸入式両方ともに使えるタイプ。手軽さと万年筆の楽しみにであるインク選びにハマる「インク沼」も楽しめる。
回転(ピストン)式
現在、最も普及している方式で尻軸を回すことにでペン内部のピストンが上下し、ペン先をボトルに浸し尻軸を回して吸い上げる。
プランジャー式
インクの充填方法は主に使い捨てのカードリッジを装着する「カードリッジ式」、インク瓶からインクを吸い上げる「吸入式(コンバーター)」の2種類。吸入式はさらにいろんな方法がある。
レバーフィラー
ボディにあるレバーを立てることでゴムチューブが押し込まれ真空状態を作り出し、ゴムが復元する時にインクを吸い上げる。
市場価格を知る!
万年筆は実用的な道具でもあるため「実際に書けるかどうか」が大切。修理されていてもペン先が変更されていたり、オリジナルの状態から大きく変わっていると価値は激減する。個人売買やオークションではジャンク品が安く売られているが状態によって修理も高くつくの注意が必要。レアな名品だと数10万~ 100万円を超えるようなモノもあるが、定番品などは1~2万円代でも購入可能だ。
モンブラン
ペリカン
パイロット
◆
ここ10年ほどのヴィンテージ市場の状況を伺ってみても、レア品は徐々に値上がりしているものの市場は比較的安定した模様。奥は果てしなく深いがビギナーにも参入しやすいジャンルといえそうだ。
【DATA】
ペンランドカフェ
愛知県名古屋市中区大須2-27-34
TEL052-222-3355
営業/11:00~ 20:00
休み/水曜
https://pen-land.shop-pro.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2022年12月号 Vol.344」)
Text/M.Terano 寺野正樹 Photo/M.Kato 加藤政憲 取材協力/ペンランドカフェ https://pen-land.shop-pro.jp