ヴィンテージ万年筆の市場価値は? 手書きの機会が少ないからこそ愛用できる1本を手に入れたい。

文字を書く機会が激減した今だからこそ、署名する時などにさらっとヴィンテージの万年筆を使いこなすのが大人の嗜みってもの。今回はそんな万年筆のヴィンテージの世界をのぞいてみよう。

「ペンランドカフェ」代表・荻敏英さん

年代を問わずメーカーすら対応してくれない万年筆の修理にも対応する万年筆のプロ。他店で購入したものでも修理に対応してくれる強い味方。

慣れれば代々使える筆記具の王様・万年筆。

手前が万年筆を代表するドイツのブランド「モンブラン」と奥も同じく有名なドイツの「ペリカン」。ほかにも「ラミー」(ドイツ)、「オノト」「パーカー」(イギリス)、「アウロラ」「デルタ」(イタリア)、「ウォーターマン」(フランス)などが人気。日本も「パイロット」「プラチナ」「セーラー」などが名品を作っていて海外では高い評価を得ている。国内では外国ブランドの人気が高く国内ブランドは狙い目ともいえる

今も昔も筆記具の王様として君臨する万年筆。その歴史はおよそ200年といわれ、様々な改良を経て、1883年にルイス・エドソン・ウォーターマンが現在のような、インクを補充して毛細管現象を利用してペン先からインクが流れるようなペン芯を発明したものが現在の原型となっている。

万年筆の基本的な構造として知っておきたいのが「ペン先」と「吸入機構」のふたつ。

まず、「ペン先」で知っておきたいのが素材。大きく分けると、ステンレススチールの「鉄ペン」と金を使った「金ペン」の2種類。ステンレススチールは硬めの書き心地で価格は安価、金は柔らかな書き心地で価格は当然お高め。金はさらに14Kや21Kなど含有率が異なり、数字が大きいほど柔らかくなる。

ちなみに金の方が高級だし万年筆独特の柔らかい書き味が楽しめるからいいのかというとそうでもない。書き味の好みもあるし、ヴィンテージに関してはステンレスでも十分に馴染んでいると滑らかな書き味を持つものもあるので、あくまでも個体差があるようだ。

そして、もうひとつが「インクの補充方法」。インクを様々方法で吸上げる「吸入式」、カートリッジを差し込む「カードリッジ式」、その両方使える「両用式」などがある。

個体差もあるので試してから購入が吉。

年代やメーカーによって大きさや装飾など様々。そしてペン先のこなれ具合はモデルよりも個体差が大きい。もちろん人気モデルはプレミアム価格がつくが、最終的には書き味と好みなので自分の好みに合う1本を見つけたい

旧い歴史を持つ万年筆だけに当然ヴィンテージ、さらにアンティークの世界も存在するが、これから始めるらまずは1940~’70年代のヴィンテージがオススメ。

「語り所はたくさんありますが、初めてなら持った時の重さや大きさのバランスと、ボディデザインの好みで選ぶといいですね」

とは、ヴィンテージの万年筆販売と修理も手がける数少ない専門店「ペンランドカフェ」(愛知県名古屋市)代表の荻さん。

ペン先の素材や形状によって書き味が硬い・柔らかい、線が太い・細いなどかなり異なるペン先が柔らかいモノになると、微妙な圧を変えることで太さが変えられるものも。これは個体差があるので試してみないとわからない

「ペン先の素材もありますが、これは個体差があります。いい具合に使われてきてこなれたモノだと鉄ペンでも柔らかいものもあるし、書く文字の大きさや用途に応じて好みもあるので一概にどれがいいというのはありません。ただ、個人売買やオークションで気をつけたいのがインクを吸い上げなかったりペン先が壊れているモノもあるということ。修理も可能ですがかえって高くつくこともあるので注意が必要です」

いいモノに出会えるかどうかは運次第。いきなりヴィンテージを選ぶもよしだし、まずは安い現行品を試してからヴィンテージの世界へ足を踏み入れるのもありだ。

ともあれ、これを機に粋な大人の小道具としてお気に入りの万年筆を手に入れてみてはいかが?

「万年筆は書きづらい」という印象を持つ人もいるが、慣れが必要だが正しい持ち方・書き方を覚えれば非常にスムーズに書けるようになる。ボールペンとは違い、ペン先を一定の角度に保ち、非常に軽い圧で書くのがポイント

インクの充填方法もさまざま。

インクの充填方法は主に使い捨てのカードリッジを装着する「カードリッジ式」、インク瓶からインクを吸い上げる「吸入式(コンバーター)」の2種類。吸入式はさらにいろんな方法がある。

両用式

カートリッジと吸入式両方ともに使えるタイプ。手軽さと万年筆の楽しみにであるインク選びにハマる「インク沼」も楽しめる。

回転(ピストン)式

現在、最も普及している方式で尻軸を回すことにでペン内部のピストンが上下し、ペン先をボトルに浸し尻軸を回して吸い上げる。

プランジャー式

インクの充填方法は主に使い捨てのカードリッジを装着する「カードリッジ式」、インク瓶からインクを吸い上げる「吸入式(コンバーター)」の2種類。吸入式はさらにいろんな方法がある。

レバーフィラー

ボディにあるレバーを立てることでゴムチューブが押し込まれ真空状態を作り出し、ゴムが復元する時にインクを吸い上げる。

市場価格を知る!

万年筆は実用的な道具でもあるため「実際に書けるかどうか」が大切。修理されていてもペン先が変更されていたり、オリジナルの状態から大きく変わっていると価値は激減する。個人売買やオークションではジャンク品が安く売られているが状態によって修理も高くつくの注意が必要。レアな名品だと数10万~ 100万円を超えるようなモノもあるが、定番品などは1~2万円代でも購入可能だ。

モンブラン

万年筆を代表するモンブランを代表する、キング・オブ・万年筆149の1970年代モデル。柔らかいタッチの14金中白のペン先。中細位の字幅で初心者でも普段使いに最適。9万9000円
149の前身モデルである139。ボディは2000年代に忠実に再現されたレプリカでボディ以外は1940年代のオリジナルで調整済み。ボディもオリジナルだと100万円は下らない。最上級モデル。66万円
1930年代の124。「プラチナ」と呼ばれるシルバーグレーとブラックの杢目のような、セルロイドボディが美しい逸品。少々小ぶりなサイズ感が日本人の小さな手にもしっくり馴染む。38万5000円
1920年代製のNO6。吸入式はセーフティという方式。少し大きめでとても持ちやすく14金のペン先のタッチは極細だが奥深い味わいのある書き味をもつ。44万円
1920年代のNO4で14金のペン先だけでなく、ボディにも金メッキが施されている。また、ボディは珍しい八角形で持ちやすく個性的。ペン先のタッチは柔らかくしなやかで最高レベル。55万円

ペリカン

ペリカンでは人気の101Nのリザードというトカゲ柄の1本。個性をアピールしたい人には最適。吸入方式はペリカンが開発したピストン吸入方式。1940~’50年代初期。38万5000円
メッキとは異なり、「張り」という技法でホワイトゴ ールドを巻いて作った高級品の110 ホワイトゴールド。復刻もされていてそちらも中古市場では人気だがこちらは1930年代のオリジナル品。ピストン吸入方式。44万円
通常の100Nに比べてキャップ・ボディがひと回りくらい大きいサイズで生産数も少ない希少なモデルである101N マグナム。こちらは1930年代のオリジナルでなかなか市場に出ないレア品。41万8000円

パイロット

53R ロールゴールド。1950年代。パイロットで人気の53Rのキャップとボディに14金張りを施したスペシャルモデル。ペン先も14金。胴軸のレバーを90度起こしてインクを吸入するレバーフィラー式。6万9300円
1978年製作。海外で評価の高いパイロットの蒔絵シリーズのなかでも最高峰かつ激レアの1本がこの蒔絵『おしどり』。雅号は『虚舟』。ペン先は18金。吸入方法は両用式。44万円
制作は1970年代。漆塗りに蒔絵が施された高級感ある逸品である蒔絵『鶴』。雅号は『栄一』。レア度も高い。尻軸に向かって細くなっていくシェイプも美しい。22万円

◆

ここ10年ほどのヴィンテージ市場の状況を伺ってみても、レア品は徐々に値上がりしているものの市場は比較的安定した模様。奥は果てしなく深いがビギナーにも参入しやすいジャンルといえそうだ。

【DATA】
ペンランドカフェ
愛知県名古屋市中区大須2-27-34
TEL052-222-3355
営業/11:00~ 20:00
休み/水曜
https://pen-land.shop-pro.jp

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2022年12月号 Vol.344」)

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