1年365日エンジニアブーツを履き続ける男の“エンジニア愛”を聞いてくれ。

堅牢な造りとワイルドなフォルムを持つエンジニアブーツに魅せられた男がいる。創刊から27年を迎えるアメリカンカルチャー雑誌「Lightning」編集部員・モヒカン小川。1年365日エンジニアを履き続け、所有するエンジニアは数知れず。そんな“ エンジニアを愛し、エンジニアに愛された男” が、その魅力を語り尽くす。

’90年代を「エモい」と言ってくれてる若者も、せっかくなら読み飛ばさずに、しばしお付き合いいただきたい。

本誌編集部 モヒカン小川

革ジャン・ブーツ・長渕アニキをこよなく愛する49歳、てんびん座。高校生の頃、渋谷が通学の通り道だったことから渋カジに目覚め、以降、服のセンスも変わらず今に至る。スニーカーは持っておらず、毎日エンジニア&革ジャン(夏は革ベスト)で過ごす、自称“革の伝道師”。

わが青春のエンジニア。

俺が青春時代を過ごした1980年代後半〜’90年代、渋谷にはエンジニアブーツが溢れていた。

当時は「チーマー」と呼ばれる不良たちが、渋谷・センター街を徒党を組んで闊歩していた時代。ロン毛にバンダナ、ぴたぴたのバンソンのライダースを着て、パンツはベルボトムかブーツカットを穿き、足元はみなエンジニアかロガーだった。

相手を威嚇するためか、実際に喧嘩で使うためか、とにかくみんなスティールトゥ入りのゴツいブーツを履いていたの覚えている。デニムも丈詰めするのは“シャバい”奴らのすることで(あくまでセンター街で感じた俺の見解です)、みな丈詰め前の状態でズルズルと裾を引き摺っていた――。

これが俺の“エンジニア原体験”。

もちろんその頃は、エンジニアブーツがかつてアメリカの鉄道機関士(レイルローダー)に使われていたことや、スティールトゥ自体は1930年代に誕生していたが、昔のエンジニアにはほとんど採用されていなかったことなど、歴史的なことはなんも知らない、ただ不良に憧れるアホなガキだった。

俺がいちばん最初にエンジニアを手に入れたのは、いつだったのだろうか。よく思い出せないのだが、おそらく高校2年の時くらいには初エンジニアであるゴ〇ラ、高校3年くらいの時にチ〇ワを履いていたような気がする。

当時のアメカジには、明らかなヒエラルキーが存在しており、頂点にブランド(A)が君臨し、それを買えない奴は(B)、それすら買えない奴は(C)と、相場が決まっていた。

当時の(A)とは、もちろんレッド・ウィング。で、俺の初エンジニアはというと、アメカジ・カーストの最下層に位置するゴ〇ラ……。そんな状況だったから、初めてレッド・ウィングのエンジニアを手に入れた時は、本当に嬉しかったな。

大学を1年休学して海外を放浪したときも、そのエンジニアをずっと履いていた。標高5364mにあるエベレストのネパール側ベースキャンプに、エンジニアブーツで行った人間は、おそらく人類で俺だけだと思う。

レッド・ウィングのエンジニアをゲットしてから、俺のエンジニアへの旅は始まったような気がする。

あの頃は、エンジニアと言えばレッド・ウィングで、その中で表革かスウェードか、はたまたナイフポケット付きくらいしか選べなかったエンジニアだが、いまではあらゆるブランドがエンジニアを手掛けるようになり、多様なモデルが手に入るようになった。

マイファーストエンジニアから数えて約30年。気が付けば、大量のエンジニアが俺の手元に集まった。

エンジニアの魅力を問われれば、俺は「ワイルドで不良っぽくてカッコいいから」と答える。

だって、きっかけがチーマーなんだもん。でも、長年エンジニアを履き込んできて、思うことがある。慣れれば、脱ぎ履きもレースアップに比べて断然楽だし、雨の日だって気にせずガンガン履けるしで、実は実用面でのメリットも多いのだ。

だが、俺がエンジニアを愛する一番のポイントは、「クタったアッパーとシャフトの美しさ」にある。

これを楽しみたいから、次々とエンジニアをゲットしては、履き込んだ末に現れる“クタり”を満喫しているというわけ。

モヒカン小川はこのほかにもファームや戦力外のエンジニアを含めるとおそらく30足くらい所有している

上の写真をもう一度見てほしい。これは、最近俺がよく履いている“一軍”。みな個性的なフォルムを持っているのがお分かりいただけるだろう。これを、「同じようなモノ」と見るか、「個性豊かな相棒たち」と見るかで、人生の楽しみはずいぶんと変わってくる。ここまで読んでくれたアナタは、後者だと信じている。

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2022年11月08日

往年のスタイルは、いま見ると逆に新鮮かも!?

変遷……というほどでもないのだが、1990年代は、絶対的にブーツにはブーツカットを合わせていた俺。その頃を思い出し、家の奥からブーツカットを引っ張り出してきて、久々に履いてみた(上写真)。

かなり“あの頃感” が出るが、今見ても、これはこれで悪くない感じ。裾にかけて広がるデザインで、脚は細く長く、ブーツはカッコよく見えるのが特徴だ。昔は、もっと長い裾をアスファルトで削るように歩いていた(笑)。


ちなみに最近は、こんな感じでロールアップをシャフトに引っ掛けるハングロールばっかりである。

(出典/「Lightning 2021年2月号 Vol.322」)

この記事を書いた人
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モヒカン小川

革ジャンの伝道師

幼少期の革ジャンとの出会いをきっかけにアメカジファッションにハマる。特にレザー、ミリタリーの知識は編集部随一を誇り、革ジャンについては業界でも知られた存在である。トレードマークのモヒカンは、やめ時を見失っているらしい。
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