10人のお気に入りの図鑑44冊に引き続き、後編30冊をお届け!
▼前編はこちらから。
ストアブランドの通販カタログでも読み手によっては図鑑となるのだ!
本記事で言う図鑑は、図書館にあるような正統派の本だけではなく、旧きよき時代のストアブランドの通販カタログや、書籍サイズのリトルプレスまで、読み手側の“知的好奇心”を刺激するような内容であれば大人の図鑑として扱っている。だからこそ肩の力を抜いて、読者諸兄の気になるカテゴリーの一冊を見つけて欲しい。
1.今の技術では再現できない前時代の生地見本に刺激を受ける。|yusamizu /テキスタイル職人/創る人 田村勝さん
紹介する1800年代〜1900年初頭のフランス・イタリアの生地見本は、40年前に田村さんがNYのオークションで競り落とした一生の宝物。浮き沈みの人生を経験してきた田村さんの支えとなってくれる心の図鑑だ。
業界の浮き沈みを経験しながら、独創性のある生地を作り続けて約50年。そんな田村さんには大切にしている本がある。100年以上昔の欧州の生地見本。
40年前にNYのオークションで購入し、以来クリエイティブの源泉になっている。
「僕の人生は波乱万丈だけど、これを見ていつも元気をもらっているんだ」
【愛読図鑑】PETITS EFFETS TWEEDS & CHAINES COTON 1893 〜1896|オークションで競り落とした19 世紀の欧州生地見本集。
数冊に分けてまとめられた生地見本は、すべて1890年代の生地見本。現代の量産体制では再現できない繊細で独創性のあるパターンばかりだ。
「昔の方が織物の技術があったんですよ。着るのは貴族だから、職人も時間をかけてつくっていたんです」と田村さん。この生地見本を見たさに、無名だった頃のマーク・ジェイコブスが何度も訪ねてきたのだとか。
ここが魅力!
こちらの生地見本は何と1858年、1860年。紙はさすがに焼けているが、保管状態がよいのか生地そのものはきれい。
「この時代の人が、どんなロマンを持って、どんな人に想いを馳せてこれを作ったのか、想像するだけでロマンがあるよね」
2.旧いユニフォームに想いを馳せて。アメリカンスポーツを図鑑で読み解く。|WAREHOUSE 藤木将己さん
野球好き、そしてヴィンテージ好きとなれば、行き着く境地はクラシックなアスレチックウエアしかない。そんなわけで、藤木さんには、旧き時代のアメリカンスポーツのユニフォームの変遷と歴史がわかる図鑑を紹介してもらった。
野球に限らず、アメリカのユニフォームを掘り下げるとワークシャツ等の日常着と同じ作りになると藤木さん。
「むしろ作り方、生地や柄はワークよりも高価だと思えるものもあります。当時、ウールを仕立てるには、スーツを手掛けるところしかなかった。廉価版がないんです」
そんな旧きよきユニフォームを知ることができる図鑑を紹介してもらった。
【愛読図鑑①】Antique Sports Uniforms & Equipment|Dan Hauser,Ed Turner, John Gennantonio/Schiffer|戦前のユニフォームの変遷がわかる。
旧きよきフットボール、バスケ、野球のユニフォーム&道具が掲載。
「キャッチャー専用ユニフォームがあったり、フットボールでは1920年まで何も防具をつけてなかったりと新発見がたくさん」
古着店で発見したヴィンテージショーツも、この本のおかげで詳細を特定できたそう。
【愛読図鑑②】When the Game Was Black and White|Bruce Chadwick/Abbeville Press|ニグロリーグの着こなしがわかる秘蔵フォト満載。
実力では白人よりも強かったとも言われたニグロリーグの秘蔵フォトを多く掲載した写真集。WW Ⅱ以前の日系人のチームも掲載されており、余談だが、この当時WBCのような大会が開催されており、そのなかには日系人、ネイティブアメリカンも参加していたとか。
【愛読図鑑③】The FIRST 50 YEARS|NFL/Simon and Schusterdammy|‘60年代までショルダーが無かったこと知ってました!?
アメリカンフットボールの50年史を綴った1 冊。見所は後半のイラストで描かれたユニフォーム変遷図鑑。セーターに綿入りのラインを入れてクッション性を高めていた1920年から、生地がレーヨン混になり防具が追加され進化していく現代まで網羅されている。
【愛読図鑑④】BASEBALL UNIFORM of the 20th CENTURY|Marc Okkonen/Sterl|メジャーリーグのユニフォームの変遷が、すべてわかる。
メジャーリーグユニフォームの変遷を余すところなくイラスト化したマニア向けの1 冊。無機質なユニフォームイラストも比較資料としては最適。
「保守的なボストンなどはほとんど変わってないし、どちらかと言えば後進チームのほうが変えていますね」
3.旧車フリークが手作りした旧車フリークのための資料集。|日本二輪史研究会
旧いバイクやクルマの資料は数多くあるが、海外メーカーのバイクとなると当然英語の本ばかりで日本語で解説される本は少ない。ここで紹介する図鑑は日本の旧車クラブの会員用に作られているのでマニアックな素材も日本語解説が加えられているのがポイントだ。
旧車乗りの集まりからスタートした『日本二輪史研究会』。現在は全国に100人以上の会員を持つクラブで、歴史の研究だけでなくレストアを行う会員も多いため、会員用に旧い資料をまとめたのが本を作り出したきっかけ。
資料は会員以外でもWEBのみで購入可能。一般的に市販されないようなコアな内容が多いので旧車好きは要チェックだ。
【愛読図鑑】英車広告図鑑|日本二輪史研究会/日本二輪史研究会|英車二輪メーカーの当時の広告ヴィジュアルを一冊に集約。
主要メーカーからマニアックなメーカーまで、1950〜’60年代の英国の専門誌に掲載された1ページ広告を1冊にまとめ、日本語の解説を加えた広告ヴィジュアル図鑑。資料として役立つ上に、洒落た広告が多いのでパラパラと読んでいるだけでも楽しめる。1万2500円
ここが魅力!
英国の若いカップルを描いた1951年のトライアンフの広告。車両はどちらも6Tサンダーバードで、若者層からも愛されていた様子が見て取れる。
英国だけでなく、世界の旧車の資料がココにある!
日本二輪史研究会は世界中のメーカーの資料を収集している。特に日本の二輪メーカーのものは、カタログやマニュアルも含めラインナップが充実。要チェックだ。
現存するメーカーが限られるため資料が少ない1920年代以前の広告集。当時日本の媒体で掲載された記事が掲載されているのも見所だ。1500円
KAWASAKIの前身となったメグロのカラーカタログ、広告を集約。当時の記事の抜粋なので1〜2 色印刷のページも多く、時代感が感じられる。1500円
日本製H-Dとして生産された陸王の誕生から1950年代の終焉までの歴史をまとめた1冊。国内の会報誌の記事やマニュアルなども掲載。1500円
4.図鑑コレクターが紹介する図鑑のコレクション。|千葉県立中央博物館
教育普及課長/図鑑コレクター 斎木健一さん
民放TV番組や多くのウェブメディアで取り上げられるほどの図鑑マニアとして知られる斎木さん。もはや人生のパートナーとして、趣味に仕事に図鑑をフル活用している氏だからこそできる視点で、大人も楽しめる図鑑を紹介していただきました。
自他共に認める図鑑マニアとして活躍中の斎木さん。
「仕事柄生き物関係の図鑑が最も多いのですが、最近はそれ以外にも様々な図鑑があります。そのきっかけは子どもなんですが、鳥が好きだと言われれば鳥の図鑑を買ったり、一緒に魚獲りするからと魚の図鑑を買ってという形でどんどん増えていったんです。子どもといると、興味の対象も広がりますよね」
そうして実に1000冊以上の図鑑を所有するまでになったそう。
「最近では工夫があるものや、街角などの斬新な視点で作られたものに興味があります。自分は図鑑は旅行ガイドみたいなものだと思っています。見れば名前や価値がわかりますから」
図鑑には街の見方をも変える魅力があるようだ。
【愛読図鑑①】羽 原寸大写真図鑑|高田勝・叶内拓哉/文一総合出版|鳥の羽が持ち込まれると真っ先に開く一冊。
種類毎に各部位の羽が実物大で掲載されている図鑑。博物館に鳥の羽が持ちこれまれても、これ開けばどの鳥の羽なのかがすぐにわかるとのこと。定価が1万9440円と高価であるため購入には躊躇したとのことだが、現在絶版で古書価格が新品を超えてしまったので、今となっては買っておいて良かったと思っているそう。
【愛読図鑑②】海辺で拾える貝|斎藤 博/文一総合出版|バリエーション豊かな写真が◎。
海辺で拾える貝殻150種を収録。いままでの貝類図鑑と一番違うのは、浜辺ですり減ってしまった貝殻も紹介されているところ。波にもまれ、岩にぶつかり、割れたり色や模様が変わってしまった貝殻は見かけが別物のように変わってしまうものも多いので、拾った貝の名前調べには威力を発揮する。
【愛読図鑑③】美しき小さな雑草の花図鑑|大作晃一・多田多恵子/山と渓谷社|雑草の花の美しさを写し撮った図鑑。
一流の植物カメラマンが最新のテクニックを駆使して撮影した図鑑。写真の腕がなくても、高性能のルーペを使って実物を見れば同じ美しさを堪能できる。中面に写っているのは関東ならどの小学校の校庭でも見られる普通の雑草。花がとても小さいので見逃されているが、拡大すればさすが、ワスレナグサの仲間と納得できる。
【愛読図鑑④】日本のクワガタムシハンドブック|斎藤 博/文一総合出版|昆虫の中でも一番人気のクワガタ図鑑。
子どもと虫取りをしていて昔の情熱がよみがえり、昆虫にハマる大人は以外に多い。中でも一番人気がこのクワガタムシ。カッコよく、種類もそれなりに多いので蒐集対象としても良い。この表紙を見てかっこいい!と思った人は素質あり。コクワガタやオオクワガタの仲間は数年生きるので長期の飼育も楽しめる。
【愛読図鑑⑤】学習図鑑シリーズ 小学館 昆虫の図鑑|古川晴男・中山周平/小学館|子供時代を思い出す昔懐かしの昆虫図鑑。
昭和40年代の小学校図書室には必ずあった小学館の学習図鑑シリーズ。ネットオークションや古書店で1 冊500円
から2000円くらいで購入可能。子供の頃、街中に住んでいた斎木さんは、さまざまな昆虫が描かれている郊外のページを見て、田舎は本当に虫であふれているのだと信じていたそう。
【愛読図鑑⑥】すし図鑑|藤原昌高/マイナビ出版|珍魚まで徹底して調べ上げた寿司ガイド。
著者の藤原昌高さんは日本中の魚屋やスーパーを巡り、珍しい魚貝は片っ端から買って食べるほどで、すしについても、珍しい魚が手に入ると行きつけの寿司屋に持ち込み握ってもらうという徹底ぶり。著者が手がけている魚貝グルメには超有名なウェブ図鑑「ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑」も合わせて閲覧してみては!?
【愛読図鑑⑦】街角図鑑|三土たつお/実業之日本社|街角の散歩が楽しくなる一冊。
目の前にあるモノの名前を知りたくなるのは、草花や昆虫でも、人が造ったモノでも一緒。電柱に取り付けられている付属物から、道路脇の地面に据え付けられている小さな境界標など街中にある様々なアイテムの名前と役割が解説されている。これを見たら散歩が楽しくなること請け合い。
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