「コラージュ」で独自の世界を構築するアーティスト・M!DOR!に注目!

切り取られた素材が本来の居場所を離れて新たな物語を紡ぐ芸術表現「コラージュ」で独自の世界を構築するアーティスト・M!DOR!さん。ビジュアルで魅せるクリエイターであり、幻想的でどこかノスタルジックでありながらときおりユーモアも感じさせるM!DOR!さんの作品の魅力に迫ります。

M!DOR!|1986年横浜生まれ。文化女子大学を卒業後、デザイン事務所勤務を 経て、2012年よりコラージュ・アーティスト、グラフィック・デザイナー、アート・ディレクターとしての活動を開始。19 世紀から20世 紀中盤までの雑誌や紙ものの実物を素材として用いたハンド・コラージュは自身の作品のほか、さまざまなクライアント・ワークにも生かされている。https://www.dorimiii.com

「私にとってコラージュは浄化と癒し。集中して手を動かした先に訪れます」

本のページを舞台に素材をあしらった作品。「本と素材は別の出どころ。それが出合うことで新たな世界が生まれるのがコラージュの面白さです」(M!DOR!さん)

切って、貼る。極めてシンプルなアプローチが特徴のコラージュは、そのシンプルさゆえに非常に奥が深い芸術である。コラージュ作家として作品はもとより書籍の装画やCDのアートワーク、ウインドウ・ディスプレイ、プロダクトのパッケージと多岐にわたる活動を展開するM!DOR!さんに創作のきっかけや今後を伺った。

――――コラージュ作家としてのスタートはいつのことでしょう。

正式にスタートしたのは2012年ですので今年で11年目になります。それまではデザイン事務所に勤めていました。

――――デザイン事務所時代にも作家活動はされていたんですか?

そうですね。コラージュに興味を持ってやり始めたのが高校生のときなんですが、それからずっとやっていました。なので中断したことはないですね。

――――そうなんですね。高校時代にコラージュに取り組んでみようと思ったきっかけはなんでしょう。

もともとは、中学生の頃にいわゆるスクラップ・ブックを作りはじめたのがきっかけですね。好きなモデルさんとかそのとき読んでいた本や雑誌から切り抜いて、お気に入りだけを集めたノートを作るのが楽しくて。ある意味それが根源です。

本格的なコラージュをやるようになったのは高校生のとき。古本屋さんに行って、ロシア・アヴァンギャルドの本を見てからです。ページをめくってゆくとかっこいいポスターが目にとまり「これってどうやって作られているんだろう」と思いキャプションを読んだら「コラージュ」と書かれていました。

――――ロシア・アヴァンギャルドのどういうところに魅力を感じたんですか?

色と幾何学的なところですね。モダンでお洒落なんだけど強さや破壊力もあって。パンクが好きだったので「反」な感じに惹かれたというのもあります。それで、そのときに初めてコラージュという言葉を知ったんですが、コラージュがどんなものかわからなかったので調べてみたところ、簡単にいうと「切って貼る」みたいなことが書いてありました。

「じゃあこれまでやってたスクラップ・ブックと大して変わらないな」と思い、そこから作るものにスクラップ・ブックよりももう少し作品要素が出てくるようになりました。

――――なるほど、スクラップ・ブックがスタートなんですね。

雑誌一冊読んで好きなものを探すんだったら、好きなものだけ集めたノートを作ったらいいんじゃないかということでスクラップを始めました。好きなものだけ見ていたいという、ある意味みうらじゅん的な発想です()。『セブンティーン』や『ピチレモン』から切り抜いていましたね。

コラージュ作品をプリントしたシルクの大判スカーフは本の世界から飛び出したようなデザインが魅力。美術作品とファッションの幸せな融合だ。残念ながら現在ソールドアウト

――――スクラップの対象はファッション・ページですか?

雑誌からはお洋服やアクセサリーが多かったですが、たとえば美術書を読んでいて好きな絵があったらそれを切り抜いて、ということもやっていました。そうして出来上がったノートを見ると自分がどんなものが好きなのかを一覧できるじゃないですか。それで自分の好みの方向性みたいなものがだんだんわかってきて。

――――中学生のときからそれを意識してやっていた!

はい。中学生のときから自分の好きなものをひと所にまとめてコレクション癖があるんでしょうね――「どうして私はこれ が好きなんだろう?」というのを掘り下げていた気がします。色に惹かれているのか、それともフォルムなのか、あるいはモチーフなのか、と。そういう視点は早くから持ち合わせていたんだと思います。

それでコラージュというものを知ったときに、スクラップ・ブックを通じてわかってきた自分の好み、たとえば赤が好きとか幾何学模様が好き、というのを使ってやってみようと思ったんです。

ただ、その言葉を知ったがゆえに、どこまでやったらコラージュと呼べるものになるのだろうかを考えてしまいましたね。「切って貼る」という意味では今までやっていたスクラップ・ブックとコラージュは同じといえば同じなわけですから。最初はロシア・アヴァンギャルドの本を参考に見よう見まねではさみを入れていました。

身体のラインをこうやって切るのもありなのか、顔とか半分に切ってもいいんだ、とか。そこからいろいろな人のコラージュ作品をインターネットで調べてみたり。

――――そうか、もうインターネットが普及していた頃ですもんね。「コラージュ」って入れて検索していろんなアーティストの作品を見て「こういうのもコラージュっていうんだ」とかやっていましたね。それで幅が広がったところはあります。

――――調べてゆくなかで影響を受けたアーティストというと?

ジャック・プレヴェールですね。あの人は詩人として知られていますけど、1948年の転落事故のリハビリのためにコラージュを始めています。ネットでたまたま見つけたときに「すっごく面白いな」と感銘を受けました。ファンタジーなんだけどどこかシュルレアリスティックで。それまで私はシュルレアリスムに触れてはいなかったんですが、これをきっかけに興味を持つようになって、マックス・エルンストとか野中ユリさんにたどり着くんです。

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

Pick Up おすすめ記事

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...