そこで日本初の靴磨き専門サロン「ブリフトアッシュ」のベテランスタッフ北見健浩さんから教わった、最も代表的なカーフ、スウェード、コードバンの3つのカテゴリーそれぞれのお手入れ&磨き方を紹介する。いまさら聞けない!という靴磨きビギナー向けの基本手順から、プロのような仕上がりを目指したい人のためのワザまで詳しく網羅しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
【準備編】
1.革の種類を確認しよう。
革の種類によって手入れの道具も方法も大きく異なる。まずは自分の靴の革を確認しよう。ドレスシューズに使用される主な皮革はカーフ、スウェード、コードバンの3種だ。
カーフ
生後3~6カ月以内の仔牛から加工されたレザー。表面に傷が少なく、きめ細やかで柔らかい半面、革自体が薄く、製品加工できる面積が少ないといった特徴から、カウレザーの中でも最高級に位置づけられている。足馴染みの良さは断トツ。一方で、傷やシワが入りやすく、雨に弱いという弱点も。磨く際のコツは「しっかりと栄養を行き渡らせ、水を使いすぎないこと」と北見さん。
スウェード
皮革の裏面をバフ掛けし細かく起毛させたもので、ベルベットのような質感が魅力。柔らかな見た目に反して堅牢性には優れているものの、雨に弱くシミができやすい。汚れが定着しやすいので、ダメージを未然に防ぐプレケアが特に重要になる。今回北見さんにご教示いただいた手法であれば、ドレスシューズに限らず、ブーツやスニーカー、あるいはジャケットやパンツと、スウェード性のアイテムなら全てに応用できるので、覚えておいて損はないだろう。
コードバン
スペインはコルドバ地方に生息する山羊革に似ていることから、その名が付けられたと言われるコードバンは、欧州で食肉用として少数生産される農耕馬からのみ作られ、年々希少化が進むレアレザーのひとつだ。あまりに美しいツヤをたたえることから、キング・オブ・レザー、革のダイヤモンドなどと形容される。農耕馬の臀部の分厚い革に守られた厚さ2mm程度のコードバン繊維を、丁寧に裏側から削り出して作られる。牛革の2倍とも3倍とも言われる強度を誇り、表面が傷つきにくいことから長年使用する靴や財布、かつてはランドセルなどにも使われていた。一旦シミが付いてしまうと、ケアするのは至難の業であり、またそのツヤを保つのも難しいことから、コードバンを磨けてこそ、一人前のシューズマスターであるとプロは語る。
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2.靴の基礎知識を押さえよう。
革の種類が確認できたら、次は各部名称のおさらいと、作業の基本となるクロスの巻き方、さらにすべての革靴で使っていけるクリーニングの基本をまとめて紹介しよう。
各部名称
(1)トップライン
靴の履き口。さらに足の甲に当たる部分をシュータンと呼び、同部分は羽根でカバーされているため変色しづらいので、タンのカラーに合わせて磨くのが基本。
(2)アウトソール
直接地面に当たる本底であり、特に摩耗しやすいヒール部分は、ほとんどのドレスシューズで交換修理が可能。革を重ねたものやラバー製のものなどさまざまな種類がある。
(3)コバ
アッパー(甲革)とソールの間の張り出した部分。ソールを取り付ける前、アッパーの周りに巻かれた帯状の革をウェルトと呼び、ここも退色するので磨き作業が必要。
(4)トゥスプリング
多くの靴に採用される、つま先に見られる反り返り部分。つま先がもたつくことなく、さらに歩行の補助にも不可欠なディテールであり、古くは「つま先上がり」とも呼ばれていた。
(5)ライニング
足に直接触れる裏地の総称。アッパーに比べ耐久性は劣るものの、吸湿性に優れかつ足馴染みの良いピッグレザーなどが使われる。足の出し入れをスムーズにする効果もあり。
(6)インソール
中底を意味し、かかと部分のみに革を貼り当てたものを半敷き、全体に貼り当てたものを全敷きと呼ぶ。こちらも摩耗しやすいため、ほとんどのドレスシューズで交換修理が可能。
(7)アッパー
ソールより上の部分、つまりは足を覆うレザー部分全体を指す総称。(1)のシュータン、さらに靴紐全般に見られる甲を締め付ける羽根もアッパーの一部だ。
(8)トゥ
靴の表情を決定づける先端部分。何も装飾のないシンプルなものをプレーントゥ、同部分に一枚革を当てたものをキャップトゥ、四角く張り出したものをスクエアトゥなどと呼ぶ。
3.クロスは2種類用意しよう。
磨き前のクリーニングではシーチングなどのコットン残布、磨き作業では柔らかなタッチのコットンネル素材を使用。ともに50×10センチほどが巻きやすいという。
クロスの巻き方
クリーニング作業でも磨き作業でも使用するクロス。とくに磨きにおいては、クロスにシワが寄らない状態で磨くことで仕上がりに差が出るので、プロのスマートな巻き方を身に着けておくと良いだろう。
▼こちらをチェック!
クリーニングの基本を押さえよう。
内側のクリーニング
磨き前の行程で最も重視すべきは、埃や汚れをしっかりと落とすこと。ニオイ予防にもなるので是非やっておきたい。磨きにくくなる表面はもちろん、羽根の内側やインソールなどにも潜んだ汚れを掻き出しておくのをお忘れなく。
●内側クリーニングに必要な道具
霧吹きに入れたアルコール
コットンに浸したアルコール
※自宅作業の場合はウエットティッシュでも代用可能。
●内側クリーニングの手順
紐靴であれば、必ずシューレースを解いて作業するが、第一鳩目は非常に固く後々通しにくいので、ここは残しておいても大丈夫。
インソール全体にアルコールを直接霧吹きで塗布。プロの業に倣うなら、ドラッグストアなどで消毒用エタノールを購入しよう。
ライニングの側面やトップラインの際に溜まりがちな繊維汚れは、アルコールに浸したコットンを使って直接アクセスが正攻法。トゥやヒールもコットンを使い隅々までクリーニング。内張りのすき間やソックスの埃が溜まりやすいつま先の奥を念入りに。
内側クリーニングのみの場合は、よく乾燥させこれにて終了。型崩れしないようシューツリーを挿しておくのもお忘れなく。スウェードの場合は次項「外側のクリーニング」は飛ばして「スウェードの手入れ」に移ろう。
外側のクリーニング
内部のお掃除が終わったら、ようやく表面へ。アッパーのクリーニングだけでなく、削れて退色したコバのリペアまで、見える部分を徹底的にやってこそ、この後の磨きが生きてくる。
●外側クリーニングに必要な道具
クリーナー……後にクリームやワックスを乗せるための、言わばメイク落とし的役割。
紙やすり……コバの側面を削る。150番手を使用。
コバインク……コバ専用のインクとブラシがセットになっている。レザーには通常、ラバーには早染めタイプをセレクト。
馬毛ブラシ……クリーニングにはしっかりとした毛足が特徴の馬毛ブラシが最適。
●外側クリーニングの手順
アッパーまでかからぬよう細心の注意を払いながら、コバを紙やすりで削り、前回に乗せたコバインクを剥がしつつ表面を整える。やすりがけはコバを一周回るように。とくに引っ掛けやすいトゥ、クルマの運転などで削れがちなヒールなどは念入りにチェック。
コバにインクを塗る。ここで気を付けてほしいのが、ブラシにとるインクの量。インクが多すぎると事故の原因になる。こそげ取るようにボトルネックを使い、必ず余分なインクを落とすようにクセをつけたい。アッパーにインクがかからぬよう注意を払いつつ、さらにムラができないよう、なるべく一筆書きの要領でコバを染め上げていく。インク付属のブラシはスポンジタイプのためブラシ幅は自在。面積の大きなヒール部分も大胆に一筆書き感覚で攻めていこう。この後、かかとからつま先方向にさっとブラッシングを。
ここでレザー専用のクリーナーを使用。クリーナーは基本無色透明なので革の性格やカラーに関係なく、バッグなどにも使用可能。汚れが集中する履きシワやステッチ周りを中心に指先に少し力を入れ、全体的にツヤが無くなるようにサッと拭く感覚で。
【レザー種類別の磨き方、手入れの仕方】
カーフ
必要な道具
(左上から時計回りに)
・ワックス……レザーの色味にあったものをチョイス。
・小さな円形ブラシ……基本アッパーに使うが、プロは指を使用するそう。
・歯ブラシ状のブラシ……コバ際に使用。
・シューツリー……ブラッシングは渾身の力を必要とする。その際に型崩れさせないための必需品。
・豚毛とヤギ毛のブラシ……ツヤを出すのに最適
・クリーム……言わば化粧水や乳液の役割を果たす。
道具を買いそろえたら、さあ開始!と言いたいところだが、あらかじめ準備しておくことがひとつ。ワックスは購入後すぐは水分が多いため、蓋を開けたまま1週間ぐらい放置し、写真のようにヒビ割れてきたのを確認してから使うのがブリフトアッシュ流だ。
カーフレザー手入れの工程
上で紹介した手順でクリーニングを済ませたら、まずクリームを指(ブラシでも可)に適量取り、摩擦熱で暖めながら、アッパー全体に擦り込んでいく。カーフの場合、特に甲の部分に横シワが入りやすい。シワが乾燥すると表面のヒビ割れや劣化の原因に繋がるため、より丁寧に擦り込むよう心掛けたい。指が汚れると仕事などに支障をきたすというなら、もちろんブラシを使ってもOKだが、一色一本が大原則。必ず靴の色みに合わせて使い分けるように。
コバ際の隙間は専用のブラシを使用。見えづらい部分ではあるものの、こちらも足からの圧がかかっているため、怠るとヒビ割れなどの原因になりやすい。
豚毛ブラシを使い、擦りながらクリームを浸透させていく。この際、思っている以上に靴へと圧がかかるため、シューツリーで固定しておくというワケだ。
クリームを全体的にしっかりと擦り込み終わったら、最後にクロスを使って余分なクリームを拭き取っていく。ここでもまだツヤ出しは気にしなくて良い。
いよいよワックスを塗っていく。ドレスシューズでは特にツヤを出したいトゥとヒールカップ部分を重点的に。ここもまた思った以上に贅沢にワックスを使うのが綺麗に輝かせるコツだという。
磨きにはコットンネルのクロスを使用。まずワックスを馴染ませるためにクロスに水を少々。指まで染み込まず、表面だけ濡らす程度に。靴に直接付けるとシミや痛みの原因となるので、水は必ずクロスの方へ。革に水の跡が付かないよう、少量を数回に分けて使うのがポイント。ワックスと水の配分は7:3ぐらいを目安にしよう。輝かせたい部分をイメージしながら磨いていくが、トゥから甲にかけて自然なグラデーションを描くのが理想的。ヒール部分同様、自然なグラデを意識したい。
履きシワや鳩目周りはワックスの際も注意。余分なワックスは蝋分が白っぽく浮いてくるので、ヘッドの小さなブラシなどを使い落としておくように。
仕上げは毛足の柔らかなヤギ毛ブラシを使用。先程の豚毛ブラシほど力は込めず、毛先をスライドさせる感覚で。市販のポリッシングミトンでも代用可能。
最終工程は最も輝かせたいトゥとヒールの仕上げ。ともに芯材が入っているので、磨けば磨くほど輝きは増すはず。紐靴は、シューレースを結んで完了。
▼紐の通し方はこちらの記事をチェック!
●ポイント
北見さんの磨いた靴は、芯材が入ったトゥとヒールの輝きを際立たせ、甲や羽根に近づくほどに綺麗なグラデーションを見せる。さすがの職人業だ。左右のバランスを見ながら、両足均等なツヤを持たせる意識も大切だ。自分の顔が映り込む「鏡面磨き」成功のポイントについては、後ほど詳しく紹介しよう。
スウェード
必要な道具
(左上から時計回りに)
・スウェード専用ブラシ……柔らかな燐青銅を使用したブラシ。
・馬毛ブラシ……しっかりした毛足が特徴。
・防水スプレー……スウェードはクリームを塗れないため、栄養とカラーが加えられたものを使おう。
・マスキングテープ……コバインクがアッパーにかからないよう養生する。
・シューツリー……スウェードの手入れにおいても型崩れを防ぐために必要不可欠だ。
・ガスライター……焼いて毛足を揃えるために使用。明るい色のスウェードの場合は変色のおそれもあるので割愛して問題ない。
スウェード手入れの工程
スムースレザーと同様、まずはコバの表面を150番手の紙やすりで整える。前回に乗せたコバインクを落とすとともに、表面をなだらかにしていく。
コバが整ったらコバインクを乗せていくが、アッパーのスウェード素材がインクを吸ってしまわないよう、コバ際全体をマスキングテープで養生する。テープはホームセンターなどで購入可能。わずかな隙間からもインクを吸ってしまうため、細部はアルミのヘラなどを使い、しっかりと密着させておくように。
コバインクはボディーの色みに合ったものをチョイス。面積の大きなヒールから始め、ムラができないよう、なるべく一筆書きの要領でコバを染め上げていく。マスキングしたからとはいえ、なるべくアッパーに色移りしないよう慎重にコバを一周。コバの隙間にクリームを塗ると、補色の効果も絶大。
コバに乗せたインクが乾いたのを確認したらマスキングを剥がしていく。テープの接着剤がスウェード表面に残らないよう、大胆に剥がすのがポイント。
毛が寝てしまった部分は280番手の紙やすりを使い、毛足を立てていく。ヒールなどステッチの多い部分では、やすりで切らないよう細心の注意を払いたい。
全体を燐青銅製(ワイヤー系)のスウェードブラシでブラッシング。各パーツの毛足の方向を確認しながら、全体をなるべく一定方向に整えるような感覚で。サドルのカッティング、アッパーのモア編みステッチなども同じブラシで構わないが、傷めないよう注意は必要。全体的に繊維を立てる感覚で。
ここで驚いたのが、なんと火を使うこと。立てた毛足を一定の長さに揃えるのに効果絶大なんだとか。プロはアルコールランプを使用していた。もちろんガスライターでもOK。ただ、サンドベージュなど色みが薄いカラーは変色する可能性があるので、この行程は割愛するように。
ほのかなブラウンとアーモンドオイルなどの保護成分を含んだ防水スプレーを使い、色みを戻していく。ガスを含んでいるので必ず屋外で作業したい。
塗布したスプレー剤が乾いたら、仕上げには馬毛ブラシを使用。ヒールからトゥ方向へとブラッシングし、両足ともに毛並みを整えていく。施術前には汚れを巻き込みヘタっていたヒール部分もふっくらしてくる。特に履き口とヒールは汚れが集中しやすい部分でもあるので、マメにケアしよう。
●ポイント
毛足を整えるのに火を使うなど、我々では到底思い付かない職人業も見られたものの、行程的には至ってシンプルな印象。最も難しいとされる磨き作業がないので、自宅でも手軽に実践できそうだ。
コードバンの手入れ
必要な道具
(左上から時計回りに)
・豚毛のブラシとヤギ毛のブラシ
・ワックス……ここではアヴェル社のサフィール(マホガニー)をチョイス。
・クリーム……今回はコントラストが魅力なバーガンディのシューズに合わせ、濃淡2色を使用。
・シューツリー
・レザーソール用ソールオイルとスポンジ
・歯ブラシ状ブラシ……コバ際に使用。
・円形ブラシ……アッパーに使用。プロは指を使う。
コードバン手入れの工程
今回はコードバンならではのカラーであるバーガンディにトライ。また、さらなる応用編として随所にブローグ(飾り穴)を配したサドルタイプの内羽根モデルをご用意いただいた。通常クリームはアッパーの色みに合わせた単色使いながら、濃淡のコントラストが魅力のバーガンディには、2色を用意。まずは薄めの色から擦り込んでいく。いくらコードバンはシワが入りにくいとはいえ、やはり経年とともに甲には履きシワが浮き出てくる。シワにも栄養が行き渡るよう、指先でクリームを擦り込んでいく。
カーフ同様に豚毛ブラシを使い、力を込めたブラッシングでクリームを浸透させていく。ブローグ部分はクリームが溜まりやすいため、やや少なめを意識。
続いて2色目となるブラウン(シガーなど)は、濃淡のコントラストを際立たせるプロならではのテクニック。カラーは必ず薄い色から濃い色へとシフトしよう。
濃淡の変化を持たせるには、コバ際も大切。専用のブラシを使いコバに沿って少しずつ擦り込んでいく。色の付き具合をチェックしながら作業を進めたい。
ソールに近づくにつれ、徐々に濃くなるグラデーションを意識しつつ、クリームを擦り込んでいく。この際、ブラシは必ず色ごとに使い分けるように。
コバ際に溜まった余分なクリームをクロスを使って取り除きつつ、余分なクリームを拭き取る。足からの圧がかかる部分なので怠るとヒビ割れなどの原因に。
コバ際が済んだらクロスで全体にクリームを拭き取る。羽根に覆われ経年変色しにくいシュータンのカラーを参考に、仕上がりの色みをイメージすること。
ワックスもカーフ同様、購入後すぐは水分が多いため、蓋を開けたまま1週間ぐらい放置し、表面がヒビ割れが浮き出てきたのを確認してから使うように。ワックスは豊富なカラーバリエを有するフランスの老舗ブランド「サフィール」のマホガニーを使用。コードバンはワックスが多めでも大丈夫。
ワックス馴染ませるために水は欠かせないが、ともに少量を数回に分けて。特にコードバンは水に弱いため、ワックスと水の配分は9:1ぐらいが目安。
ツヤが出てきたら仕上げにヤギ毛ブラシを使用。毛先をスライドさせる感覚でさっと全体をブラッシングして表面の磨きはこれにてひとまず終了。北見さんの磨いた靴は深いツヤをたたえて見事!「ここまで輝きを取り戻すには、かなりの経験が必要です。ただ、ツヤが出てきた時は本当に嬉しいですよ」と北見さん。
コードバンに限らず、レザーソールを備えたモデルにはソールオイルを使い、アウトソールからも栄養を与えることで足馴染みをさらに向上させたい。
鏡面磨きに挑戦しよう。
鏡面磨き、ハイシャイン、ミラーシャイン、グラサージュ。さまざまな呼び名があるが、すべて自分の顔が映り込むほどに磨き上げることを指す。パーティーシーンなどでの需要が高く、靴磨き愛好家のあこがれのテクニックだが、特に技術を要する磨き方として知られ、苦戦を強いられている愛好家も少なくない。しかし根気よく練習を重ねれば必ずできる!プロの鏡面磨きの極意を見てみよう。(監修:R&D)
鏡面磨きの工程
リムーバークロスを指に巻きつけ数滴の水でクロスを湿らす。注意したいのは水の分量。「濡れている」のではなく「湿っている」程度が鏡面磨きのコツ。指先に巻きつけ、湿らせたクロスの上からワックスを適量つける。鏡面磨きの理屈は、水とワックスの分離を利用し、いくつもの層を磨きながら作ることだ。光らせたい部分(今回はトゥのみ)にワックスを塗り込む。メダリオンがある場合は、ワックスで埋まらないように避けながら均一に伸ばしていく。
水とワックスを交互に塗り伸ばし、磨きをかけていく。目安として5~7回ほど同じ工程を繰り返す。毛質の軟らかいブラシに微量の水分を含ませる。水分を含ませたブラシで優しくブラッシング。
目指すはトゥのこの輝き!鏡面磨きは、擦り込まれたワックスが水分を弾く原理を利用した特別な磨きの手法だ。コツをつかむまで時間はかかるかもしれないが、必ずできるようになるので辛抱強くトライしてみてほしい。
革靴トラブルシューティング&厳選ショップガイド。
日々のシューケアを丁寧に行っていれば致命的なトラブルは回避できるけれど、愛用すればするほど靴はさまざまなトラブルを抱えてしまうもの。そこで日常的によく起こるトラブルの対処方を解説。(監修:R&D)
【CASE 1】うっかりキズをつけてしまった。
注意して履いていても、いつのまにかトゥ部分にキズが入ってしまうことはよくある。でも「キズも味のうち」などとあきらめる必要はない。適切なケアでトゥの輝きを取り戻そう。
このような場合には、レザーマニキュアという皮革製品のキズ隠し塗料を使って補色しよう。レザー専用の特殊塗料なので、剥がれにくく自然な仕上がりで、色移りの心配もない。レザーマニキュアを部分的に塗布し、細かい紙ヤスリなどで銀面の凹凸をならした後、クリームを塗り込むことで、気になるキズもきれいに修復できる。
シューズの履き口など、ダメージの多い部分に見られる色落ちや、浅いキズに対しては補色に特化したコンシーラーが有効だ。
【CASE 2】カビが生えてしまった。
蓄積した汗や湿気によって菌が増殖し、いつの間にかコバやソールに白いカビが……なんてことも。まずは乾拭きでカビを除去し、カビ菌の増殖を抑えるモールドクリーナーを30cmほど離した位置から全体的に噴霧した後、乾拭きでクリーナーを馴染ませよう。
【CASE 3】雨ジミや汚れなど、全体的に汚れてしまった。
実は、靴は丸洗いが可能。さまざまなシューケアブランドからレザー専用ソープやシャンプー、クリーニングスポンジやブラシが発売されている。
丸洗いの手順は以下のとおり。
(1)まずクリーニングスポンジでアッパーのみに十分に水を含ませる。丸洗いといってもシューズ全体を水の中に浸すのは厳禁だ。
(2)レザー用のサドルソープをしっかりと泡立ててアッパーに塗り、ブラシで洗う。特にシミの入ってしまった箇所などは、指を使ってもみ洗いをするイメージで。
(3)スポンジで泡を取り除いて陰干しする。ソープ自体に栄養のある成分が含まれているので、ある程度拭き残しがあってもOK。
シューケアのプロに任せてみよう。
上で紹介してきた日々の手入れではフォローしきれない困りごとは、やはり経験豊富な職人に相談するのが一番だ。プロとわれわれの圧倒的な差は、経験や技術もさることながらなんといっても道具の豊富さ。自分の靴にぴったりのケアを提案してくれる。日々の手入れで大事に育てた靴をさらに輝かせたい!という人にもおすすめだ。名物シューシャイナー(靴磨き師)による至高の職人技を体感できる都内の専門店を厳選して紹介しよう。
Brift H(ブリフトアッシュ)
この記事でカーフ、スウェード、コードバンの磨き方を見せてくれた北見さんが所属する靴磨き専門店。2019年現在、南青山に2店舗、札幌に1店舗展開している。事前予約制のシューズラウンジでは、カウンター越しに職人と対面しつつ施術してもらえる。バーを思わせる空間の中でカウンセリングを受けつつプロの技を間近で見る体験は、なんとも新鮮だ。もちろん持参や宅配での施術も可能。オリジナルのシューケア用品販売もある。
【DATA】
Brift H
東京都港区南青山6-3-11 PAN南青山204
TEL03-3797-0373
営業/12:00~20:00
休み/火曜
https://brift-h.com/
GINZA ジェントルマンズラウンジ
銀座三越5階に位置する、「銀座の紳士の新たな憩いの場」をコンセプトとしたスペースで、靴磨きだけでなくバーバーやシガーテイスティングルーム、筆記用具など趣味性の高い上質な時間を過ごすことができる。シューシャインコーナーでひときわ目立っているのが、チェスターフィールドソファ。ここにゆったりと座って靴を磨いてもらうも良し、スリッパを貸してくれるので、靴を預けてその間に隣のバーバーで散髪、なんて過ごし方も良い。
【DATA】
GINZA ジェントルマンズラウンジ
東京都中央区銀座4-6-16 銀座三越5F
TEL03-3562-1111(大代表)
営業/10:30~20:00
休み/なし
https://www.mitsukoshi.mistore.jp/ginza.html
伊勢丹 新宿店 メンズ館
世界屈指の品ぞろえを誇る伊勢丹 新宿店 メンズ館の紳士靴コーナーは、もちろんシューケアにも力を入れている。ブラシ、クリームなどの基本的な道具がそろっているのはもちろん、専門スタッフからの的確なアドバイスがもらえるのが嬉しい。特筆すべきは、老舗ケア用品メーカー、コロンブスの協力により、同じフロアに専用窓口が設けられていること。バリエーション豊かな靴を扱うフロアだけに、アフターケアもきめ細かく、頼もしい存在だ。
【DATA】
伊勢丹 新宿店 メンズ館
東京都新宿区新宿3-14-1
TEL03-3352-1111
営業/10:30~20:00
休み/不定休
https://www.isetan.mistore.jp/shinjuku/shops/men/shoes.html
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