テーラー東洋のスカジャン
去年の夏頃だったかな? 東洋エンタープライズ社の展示会に行き、このスカジャンと出会った。私が思うスカジャンの魅力は、スカジャン自体が放つ堂々としたオーラと日本の職人技を感じられる刺しゅうだと思っている。
少し話は逸れるが、私が好きな本にこんな言葉が記されている。「人っていうのは、圧倒的な自然に呑み込まれたときに、すべてのことを許せるんだよ」と。この言葉の意味はきっと、圧倒的な何かを見たときに心がフラットな状態になるということだと解釈している。スカジャンを見たときも同じように圧倒的な何かを感じる。
このスカジャンの表面は1950年代中期の珍しいヴィンテージをベースにしていて、身頃と袖下をオフホワイトで統一した単色のボディでベースボールジャケットのスタイルになっている。スカジャンといえば、鮮やかなカラーリングとカラフルな刺しゅうが特徴的だが、モノクロのスカジャンもなかなか痺れる。
リバーシブル面はネイビー×シルバーのボディに背面には金龍と白龍が睨み合う構図が描かれている。よく見ると、金龍の胴体を刺しゅうで埋めて、その上から鱗を足しているため、華やかな印象になっている。このスカジャンを着て、颯爽と街に繰り出したいと思う。
スーベニアジャケットのなかで最もスタンダードな両面にアセテート生地を使用したリバーシブルタイプ。表面は1950年代中期の虎柄が入り、リバーシブル面は双龍柄。表面のモノクロで洗練された雰囲気がイイ意味でスカジャンっぽくなくて、一目惚れ。7万1500円(東洋エンタープライズ TEL03-3632-2321 https://www.tailortoyo.jp/)
すべてがモノクロで統一された表面に対して、カラフルな刺しゅうが施されたリバーシブル面の両極端な雰囲気をこの1着で楽しめる。
天から降りた金龍と水面から姿を現す白龍が向かい合うダイナミックな構図。金龍の鱗や水しぶきを表現した刺しゅうが秀逸。
凛々しい表情とリアルな毛並みの黒虎にグッと心を持っていかれる。口の中だけ赤の色糸が使われていて、モノクロに映える。
(出典/「Lightning 2025年4月号 Vol.372」)
Photo/M.Watanabe 渡辺昌彦
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