XSR900 GPデザイナー/GK Dynamics 竹﨑彰一 x KUSHITANIデザイナー 鷺澤亨
写真左/竹﨑彰一(XSR900 GPデザイナー/GK Dynamics)|XSR900 GP以外にもスポーツネイキッドからモトクロッサーまでさまざまなカテゴリーのヤマハオートバイのデザインを手掛けてきた。最近は所有するバイクが増えローテーションに苦労しているとか。
写真右/鷺澤 亨(KUSHITANI_クシタニ デザイナー)|一般アパレルや自動車部品などさまざまな経験を経てクシタニに入社し、以降20数年ライディングギアのデザインに携わっている。バイクは18歳から途切れることなく乗り続け、今でもほぼ毎日乗っているとのこと。
写真中央/YAMAHA XSR900 GP|ヤマハのヘリテージブランドXSRシリーズに今年新たに加わったXSR900 GP。そのネーミングからもわかるとおり、’80年代のグランプリレーサーを彷彿させるカウルやセパレートハンドルが特徴となっている。そのレーシーなスタイリングとは裏腹にライディングポジションは意外とキツくないのも特徴だ。価格は143万円。
機能満載からカジュアルまで幅広く受け入れるバイク。
今回は1947年に浜松で創業し、レーシングライダー用の革ツナギで知名度を上げ、今ではバイク文化の創造にも寄与する老舗ライディングギアメーカー“クシタニ”からの提案だ。デザイナーの鷺澤さんはクシタニに入社する前、自動車部品の製造管理に携わっていた時に3D成形に関わり、ライディングウエアでもプロテクターなどを3D成形している。そのためバイクにおける3Dのデザインがどのような過程を経て実車になっていくかに興味津々で、それを竹﨑さんに聞くかたちで対談は始まった。
苦労したポイントなどを含めて一通り説明を受けた鷺澤さんは、「クシタニのものづくりに関しても、だいぶ近しいところがあるなと感じました。色使いもそうですし、フォルムもそうですし、視点の違いで見てくれが全然変わるところも含めて、バイクもライディングウエアも同じ段階を踏んでいるんだなっていうのがすごく印象深いですね」と感慨深げな表情で語るのだった。
XSR900 GPは歴史的車両の研究を足しげくヤマハミュージアムに通い、目と手といった五感でデザインを研究分析しながら、従来のデザインプロセス(スケッチやクレイモデリング)に最新鋭のデザインプロセス(データモデリング、VRデザイン)を多用して多角的にデザインが進められたのだそう。ゴーグルを付けてその世界に入っていくVR(バーチャルリアリティ)デザイン。’80年代を意識した車体が、最新のプロセスを使ってデザインされたのはなんとも浪漫ある話ではなかろうか。
車体開発のプロセスについて話がひと段落すると、今度は竹﨑さんからXSR900 GPに合わせるウエアについて質問が飛ぶ。
竹﨑 XSRは’80年代を意識したんですけど、合わせるウエアってどんな感じだろうな? というのがあるんですよね。
鷺澤 そうですね、僕らのウエア作りも基本的にどんなユーザー様にも対応できるように、いろんなカテゴリーを出させていただいているんですけど、“XSRにはこのウエアです”というくくりは設定していなくて、ユーザー様が自由に選んでいただくという感じで提供させていただいてます。
なので’80年代のイメージのあるXSRですが、ウエアも’80年代という感じで合わせるのではなくて、ちょっとくだけた感じにカジュアルダウンを選んでみるのもいいですし、スポーツモデルというところで機能満載のウエアも似合うと思います。
竹﨑 レーシングスーツのデザインを見てると、時代とともにバイクの進化に合わせていろいろ変えてきていると思うんですけど……
鷺澤 今は飛躍的に進化しています。現在モトGP(世界最高峰のロードレース)だとトップカテゴリーに参戦しているのですが、最近驚異的なのは、エアバッグのシステムですね。GPS、ジャイロセンサーを利用してライダーが転倒すると瞬間的にエアバッグを展開して、ライダーをケガから守るものが使われています。
レーシングスーツのパターンについてもだいぶ進化させていて、ライディングポジションを取る時にしっくりくるのは当たり前で、プラス空力であるとか、そういったところも考慮して設計しています。
あと、特徴的なところでいうと革素材です。僕らも革素材に関しては独自で開発していまして、今プロトコアという素材を使っています。水に強く、簡単に言うと、水を含みにくい革で、結構劣化しにくいという特徴もあります。
このように技術面でも研究を重ねて最新のモノを取り入れているクシタニ。そのセレクトをぜひチェックしてほしい。
YAMAHA XSR900 GPに合わせたい、対談から導き出されたウエア。
SINGLE JACKET
シンプルなデザインでシチュエーションを選ばずに着こなせる革ジャケットはXSR900 GPとの相性もいい。エグザリートレザーという水に強い革を使っているため、ロングツーリングまで用途を選ばず着られる。14万7400円(M、L、LL)/15万8400円(L/3W、XL)
AQUA JACKET
初期耐水圧3万㎜、透湿性が1万9000g/㎡の完全防水ジャケット。二の腕のエアインテーク、背面のアウトテイクで換気する機能もあり。雨具を積載するスペースのないXSRに完全防水ジャケットは相性がいい。4万9500円
WING JACKET
あえてアンシンメトリーなデザインを採用したバイクを降りてもカジュアルに着こなせる革ジャケット。選択の幅を広げてもらう提案として、XSR900 GPに合わないデザインをコーディネイトしてみた。8万8000円(M、L、LL)/9万3500円(L/3W、XL)
EXPLORER JEANS
足元がエンジン熱にさらされるユーザーから支持されているパンツ。見た目ほとんどデニムだけど、実は本革でエンジン熱を軽減できる。デザインはシンプルなので、今回紹介しているジャケットとの相性はいい。7万2600円(28-36 inc.)/8万3600円(37-38 inc.)
LATEST BLOUSON
XSR900 GPと近しいコンセプトの80年代を彷彿させるブルゾンタイプ。見た目とは裏腹に最新の技術が投入されている防風・防水仕様のジャケット。差し色の赤が、シルキーホワイトとのマッチングよし。3万9600円
HIP BAG
シングルシートカバーを装着するとシートバッグが装着しずらい。そんな時に重宝するのがヒップバッグ。カラーリングはスパイス配色みたいな感じで、車体カラーに入っていな別色をセレクトするのもコーディネイトの一つ。1万6060円
【DATA】
ヤマハ発動機カスタマーコミュニケーションセンター
TEL0120-090-819
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
クシタニ
TEL053-441-2516
http://www.kushitani.co.jp/
(出典/「Lightning 2024年11月号 Vol.367」)
Text&Photo/M.Iwasaki 岩﨑雅考
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