いまだからこそ注目したい。オメガ・スピードマスターのデジタルウォッチ

  • 2024.07.19

クォーツショックにより、1970年代から’80年代にかけて腕時計は、大きな変換期を迎えた。アナログからデジタルへとシフトしていく中で、これまで機械式時計しか展開していないスイスの名門メーカーからも、苦肉の策とも取れる独特なデジタルウォッチがリリースされていたのだ。そんな中からオメガのデジタルウォッチに注目する人がいた。

クォーツショックで生まれた唯一無二のデザイン。

フォトグラファー・下坂明宏さん|1978年、東京生まれ。大学在籍中より古着の世界に飛び込み、ベルベルジンでバイヤーとして活躍。現在はカメラマン、デザイナーとして活躍。Instagram@bk.010

’69年にセイコーが世界初となるクオーツウォッチ・アストロンを発売したことで、巻き起こったクオーツショック。安価で正確な時を刻むデジタルウォッチは、それまでスイスとアメリカを中心とした職人技の詰まった高級時計業界に大打撃を与えた。一説によれば、’70年には1600社以上あったスイスの時計企業が、’80年代中頃には600社を割り込んだとのデータもある。

その時代の流れに抗うために、スイスの高級時計メーカーでもクオーツムーブメントの時計が展開された。今回ピックアップする下坂さんの時計コレクションは、そんな時代背景を感じさせる’70年代のオメガのデジタルウォッチである。

「学生時代よりヴィンテージが好きで、最初はスニーカーやクロージングから入り、旧きよきの時代のバイクや時計などにも惹かれていきました。時計においては生まれ年の’78年前後のものを探しており、初めて買ったのがロレックスのGMTマスターでした。ただこの年代のプロダクツを探ってみると、有名な高級時計ブランドがこぞってデジタル時計をリリースしていたことがわかったんです。

我々の世代はよくわかると思うのですが、小学生の頃はデジタル時計全盛。少し高価だったゲームウォッチを持っている子が一目を置かれていたような時代です(笑)。そんなこともあって、オメガに惹かれていったんです」

この手のデジタルウォッチは、なかなか日本では流通しておらず、10年以上コツコツと海外で買い集めたというからおもしろい。デジタルウォッチでも、随所に高級感のある作りも魅力だ。

1977-79 OMEGA Speedmaster LCD Digital QUARTZ Chronograph

オメガを象徴するスピードマスターシリーズの名を冠した水晶式のデジタルウォッチ。当時の家電を彷彿とさせるようなスクエアデザインで、Ca.1620を搭載。当時のクォーツは消費電力が多かったため、2個のボタン電池を搭載することで、その問題を解消しているのもポイント。もともとはレザーベルトが付いていたが、ラバーベルトに変更。このレザーベルト仕様の方が数が少なく、ベルトが交換できるので、人気が高くなっている。

純正はレザー製だが、あえてヴィンテージのラバーベルトに交換。トロピック社のもので近年の市場では価格が高騰しているのだ。

尾錠はオメガのオリジナルを装着しているのがさすが。トロピックのラバーベルトは、名門ブランドもOEMを依頼した。

1977-79 OMEGA Speedmaster LCD Digital QUARTZ Chronograph

シルバーとゴールドのカラーバリエーションでコレクションしている。よく見るとゴールドはブラウン、シルバーはブラックの文字盤カラーになっており、ブランドロゴやスピードマスター表記のプリントも異なっている。右のモデルと比べるとほぼ同じデザインであるが、ケースとベルトの接続部分の形状が異なっており、こちらの仕様の方が数が多い。ラインナップの中でも低価格のため、エントリーモデル的な立ち位置だったのだろう。

ベルトに関しては自動巻モデルと同じ作りになっている。バックル部分にはオメガのロゴがエンボスで入っている。ゴールドのブレスも同様の作りとなっている。

オメガのロゴが入った付属パーツは、時刻調整をする際に必要となる。時刻を調整するためのボタンが指では押せない作りになっている。

ご覧のようにケースのサイドの奥まった位置に、時刻調整するためのボタンが配置されている。そのため先端が尖った棒が必要となる。これはオフィシャル品である。

1977-79 OMEGA Speedmaster Professional LCD Chronograph

スピードマスタークォーツは、様々なラインナップが存在したが、その中でもハイエンドモデルと位置付けされていたことから、Professionalの表記が入っている。デジタルでは珍しい丸型のデザインも新鮮。ストップウォッチの他にデイト表記もある。当時の自動巻仕様やデイト/デイデイトシリーズにはProfessionalの表記が入っていないことからもわかるように、オメガにとって、当時の技術を集約したプロ仕様のモデルだったのだろう。

裏蓋にはオメガを代表するダイバーズシリーズであるシーマスターのロゴが入っている。ムーブメントはCal.1620を搭載。

尾錠に関してはオメガのオリジナルをアポロのダイバーズベルトに付けている。こういった細かなこだわりも細部までこだわる下坂さんらしいカスタムだ。

ブランパンなどのOEMも受けていたアポロのダイバーズベルトに交換している。’60年代のデッドストックを入手。スイス製。

オメガがクォーツシリーズをリリースした際に制作されたカタログ。当時のラインナップや価格などがわかる貴重な資料だ。

当時のカタログを見ると、いかにオメガがクォーツに力を入れていたかがわかる。まだ手に入れていないレアモデルも掲載されている。

秒まで入る6桁のデジタル表記は、’70年代初頭より登場した最先端の技術だった。そういった機能面が、紙面でしっかりと説明されている。

スピードマスターのほかに下坂さんの心が動いた収集品!

大のオメガ好きでも下坂さんは、もともとヴィンテージのミリタリーが好きだったこともあり、軍用時計を集めていた時期もあった。そのため、ウォルサムやエルジンなどのアメリカメーカーのデジタルウォッチも収集しているのだ。

1978-81 OMEGA Memomaster LDC

1978年に登場したメモマスターは、当時としては画期的なアラーム付きのモデル。デジタルウォッチらしい機能で、数年後の日時までアラームの設定ができるのがおもしろい。アラームの音がより聞こえるように、フロントにあるオメガのマークがスピーカーになっており、デイト表記があるのもデザインの特徴だ。

1969 OMEGA Pilot Chronostop

1952年から脈々と続く定番モデルであるシーマスターから派生したクロノストップ。当個体は、そんなクロノストップの中でも珍しい24時間表示を搭載したパイロット仕様となる。24時間を二重に表示することで、ワールドタイムを把握できるようにしている。ベルトは、ヴィンテージのラバーベルトに変更しているのも◎

1970s ELGIN Digital Watch

クォーツショックは、スイスだけでなく、当時は時計大国でもあったアメリカも大打撃を受けた。その対抗策として生まれたであろうエルジンのデジタルウォッチ。シンプルな時刻表示と曜日がセンス良くレイアウトされたシンプルイズベストなデザイン。どこかアメリカらしいケースのフォルムなども含めて、この時代ならではのデジタルウォッチである。

1970s WALTHAM Digital Watch

アメリカを代表する時計メーカーであったウォルサム。懐中時計やミリタリーウォッチでお馴染みの同社は、軍用時計好きの下坂さんにとって欠かせない存在。詳細は不明であるが、たまたまデジタルウォッチを見つけたため、思わず購入。小振りなサイズ感と遊びのあるカラーリングが気に入っているそう。

(出典/「Lightning 2024年8月号 Vol.364」)

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