フォードが誇る本格4WDであるブロンコ。旧車から新車までその歴史を復習するぞ。

かつては軍用車として納入していた4WDであるGPWを生産していた歴史があるフォード。そんなフォードがレジャー人気が高まった1960年代にそのノウハウをベースに開発したスポーツ4WDがフォード・ブロンコの存在。長らくフォードの歴史のなかでモデルチェンジを続け、1990年代に一度その歴史に幕を下ろすけど、2021年式に再び復活したというフォードを代表する名車のひとつ。その歴史から、気になっている人にはうれしい現行モデルの新車価格や燃費まで深掘りしてみる。

第1世代(1966~1977年)。丸目でコンパクトなサイズ、愛称は「アーリーブロンコ」。旧車ブロンコの王道モデルだ。

1969年式フォード・ブロンコ。搭載されるエンジンの種類は年式によって変化はあったが、基本的なデザインは変わらないまま1977年まで生産された。Photo by Ford Motor Company

ブロンコの生まれた背景は、アウトドアレジャーなどが一般化してきた1960年代。そのころ存在したジープやインターナショナル・スカウト、それに当時からアメリカで販売されていたトヨタ・ランドクルーザー(FJ40)などに対抗するべく、コンパクトで悪路走破性が高い4WD車として開発された。

四角四面のボディに丸目のヘッドライト、フラットなフロントガラスを装備した本格的な悪路走破性を持ったシビリアンオフローダーとして1966年式から登場したのが初代ブロンコだ。

ボディは2ドアクローズドボディ、ロードスター、ピックアップトラックのバリエーションが存在。エンジンは直列6気筒とV型8気筒がチョイスできた。

おもしろいのは基本コンポーネントを変えることがなく(エンジン出力などは時代とともに変わっていった)、1977年式まで10年以上変わることなく生産されていた点。

この1977年式までのコンパクトな丸目ボディが「アーリーブロンコ」という愛称でファンたちに愛され、新型のブロンコが発売されたことで、初代モデルの価値は上昇傾向にあるだけでなく、きっちりとレストアされた個体や、中身を最新パーツでアップデートしたレストモッドと呼ばれるカスタム車両も人気となっている。

ちなみに映画『スピード』でキアヌ・リーブス演じる主人公のジャックがアーリーブロンコを愛車としていたことから、ハリウッドのヒップな連中は早くからアーリーブロンコに注目していた。

初代ブロンコはクローズドタイプのハードトップ、ルーフの無いオープン、さらに写真のピックアップモデルが用意され、コンパクトなピックアップトラックとしての需要にも対応したモデルだった。Photo by Ford Motor Company

第2世代(1978~1979年)。フルサイズマーケットにお引っ越し。

堂々たるフルサイズボディに変更された第2世代。ジープなどの小型4WDから、フルサイズ4WDだったシボレー・ブレイザー、GMCジミー、ダッジ・ラムチャージャーなどをライバルにして主戦場が変わった。第2世代は2年間のみ存在したレアな世代。Photo by Ford Motor Company

それまでコンパクトなボディのシビリアン4WDというイメージだったブロンコは、第二世代でフルサイズボディへと巨大化。それまでジープCJなどをライバルとしていたが、2代目からはフルサイズの4WDであるAMCジープ・チェロキー、シボレー・ブレイザーやダッジ・ラムチャージャーに対抗するモデルとして生まれ変わった。

当時のフルサイズピックアップだったフォードF-100のフレームをベースにしたショートホイールベースバージョンという位置付けで、エンジンラインナップも排気量の異なる2種類のV8エンジンのみのラインナップになった。

フルサイズになることで、シボレー・ブレイザーなどのライバル車よりも販売台数を上回るヒットを飛ばしたけれど、この世代はたった2年間という短命モデルに終わり、第三世代へと引き継がれた。愛称はこの世代以降は「ビッグ・ブロンコ」と呼ばれる。

第3世代(1980~1986年)Fシリーズピックアップと同時にフルモデルチェンジ。

第3世代になるとクラシックカーの雰囲気は無くなり、ちょい旧(ふる)ヤングタイマーなイメージに。先代同様、フルサイズボディでフォードF-150と共通のプラットフォームで生産された。Ford Motor Company

ブロンコのベースとなっていたフォードのフルサイズピックアップであるFシリーズのフルモデルチェンジによって、第2世代にモデルチェンジしたばかりのブロンコも同時期にモデルチェンジする。

といっても先代(2年しか生産していない)からのキープコンセプトで、大きく見た目のデザインは変わっていない。ただ、中身は一新され、フレームなどの基本構造が大幅に変更されたことで、それまでの2トン超えの重量の軽量化に成功。2トンを下回る車両重量になったことで運動性能は高まった。

搭載されるエンジンはフルサイズブロンコ初となる直6エンジンもチョイスできたが、中核を成したのは3種類の排気量の異なるV8エンジンだった。

また1985年モデルではトリムパッケージの最高峰として、アメリカを代表するアウトドアブランドであるエディバウアーの名を冠したエディバウアーパッケージが登場した。

番外編_001。1984年~1990年には小型ボディのブロンコIIがラインナップされた。

初代ブロンコに回帰するかのようにコンパクトなボディでフルサイズブロンコと併売されたブロンコII。やはり小型のジープやXJチェロキーなどの4WDマーケットはフォードも気にしないわけにはいかなかった。Photo by Ford Motor Company

フルサイズボディだったブロンコの弟分として1984年にコンパクトなボディの4WDとしてブロンコIIが登場した。ボディサイズは初代ブロンコクラスで、ボディバリエーションは無く、2ドアモデルのみ。エンジンもV6のみというラインナップだった。

これは同時期にライバルブランドで存在したシボレーのS-10ブレイザーや、AMCのジープXJチェロキーといったコンパクトな4WDに対抗するために生まれたモデルだった。ブロンコIIは1991年モデルのフォード・エクスプローラーの登場によって整理され、ブロンコの名前はフルサイズボディのみになった。

第4世代(1987~1991年)フラットマスクの第四世代。

1987年式フォード・ブロンコ。奥まっていた角目が前面に出てきてグリルも立体感を減らすことによってフラットなマスクにモデルチェンジした第4世代。この世代の後年にはキャブレターからフューエルインジェクションが搭載されるようになったが、まだメッキバンパーなのがアメリカ車ならでは。Photo by Ford Motor Company

フォードF-150のフルモデルチェンジに合わせてブロンコもモデルチェンジして第四世代に。フロントマスクがF-150と共通のフラットなデザインとなった。エンジンは直6と2種類のV8

エンジンがラインナップ。直6には1987年から、V8エンジンには1988年からフューエルインジェクションが搭載されて近代化していく。

第5世代(1992~1996年)ビッグブロンコの終焉。

1995年式フォード・ブロンコ。先代の角張ったイメージからラウンドシェイプを多用したデザインへとモデルチェンジ。2ドアモデルのみのラインナップは継承された。これがビッグブロンコの最終世代に。Photo by Ford Motor Company

9世代目にF-150がフルモデルチェンジすることを受けてブロンコも世代交代。先代同様、フロントマスクはF-150と同様で、エアバッグやABSなどの安全装備が追加された。これがビッグブロンコの最終世代となり、4ドアモデルのフルサイズSUVであるフォード・エクスペディションにフルサイズSUVのカテゴリーを引き継ぐカタチで生産終了した。

またこのブロンコに乗ったOJシンプソンがカーチェイスを繰り広げたことから、アメリカでは「OJブロンコ」という愛称で呼ばれることもある。

皮肉にも警察とのカーチェイスによって有名になってしまったモデルとなった。

第6世代(2021年式~)約25年ぶりにブロンコが復活した現行新型モデルはラプターモデルも登場。気になるサイズもチェック。

2021年式としてブロンコの名前が復活。といってもこれはこれまでのフルサイズブロンコの流れではなく、初代ブロンコの持っていたコンパクトな4WDとして開発され、デザインもアーリーブロンコを思わせるデザインで現代版ブロンコとして生まれた。

ライバルはジープラングラーに代表される本格派のオフローダー。ボディは2ドアと、ブロンコ史上初めて4ドアモデルも登場。ドアやルーフを取り外すことができるなど、クロスカントリーヴィークルとしてのギミックも備わっている。

2022年モデルにはハイパフォーマンスバージョンのブロンコ・ラプターも登場した。

搭載されるエンジンは2.3L直4シングルターボ(エコブースト)、2.7L V6ツインターボ(エコブースト)、3L V6ツインターボ(エコブースト)というラインナップで、V8エンジンの搭載はないが3Lエンジンは418馬力を誇り、有り余るパワーを体感できるはず。

気になる現行モデルのサイズは、2ドアモデルで全長4411mm×全幅(サイドミラー除く)1927mm×全高(ハードトップ)1826mmホイールベースが延長される4ドアモデルは全長4810mm×全幅1927mm×全高(ソフトトップ)1854mmとなっている。

新生ブロンコはルーフやドアを取り外すことが可能。すべて外すとご覧のようなスタイルに。といってもメーカー側はクローズドのオフロードコースなどに限定し、公道では推奨していない。写真は2022年式のフォード・ブロンコ・ラプター。ラプターモデルは悪路走破性能を高めたハイパfーマンスなモデルになっている。Photo by Ford Motor Company

番外編_002。2021年から弟分もデビュー。

新型ブロンコをさらに流線型にしたようなデザインのブロンコ・スポーツは本格オフローダーではなく、クロスオーバーSUVとして追加されたモデル。シティクルーザーであり、日常使いに特化したモデルとして生まれた。Photo by Ford Motor Company

新型ブロンコの登場と同時にブロンコ・スポーツもデビュー。これはクロスオーバーSUVであるフォード・エスケープをベースにしたブロンコの名を冠したバージョンで、FFベースのドライブトレインに、エンジンも直列3気筒、4気筒の小排気量というラインナップ。

ボディも4ドアモデルのみのラインナップになっている。ブロンコのエンブレムが付いているのでクルマに詳しくない人にはかなりまぎらわしいモデルになっている(笑)。本家ブロンコとは性格はまったくの別物という見方が正しい。

フォード・ブロンコの新車価格や日本での発売、それに燃費は?

日本のマーケットからフォードが撤退したことで、現在ではフォードの正規輸入はない。もし新型のブロンコに乗りたいのであれば、国内の並行輸入に頼るしかない。ただ国内にはそんな要望に応えてくれる専門店もあるので手に入れることは可能だ。

現地での価格はすでに販売が始まっている2024年式ブロンコが約4万ドルスタート、ブロンコ・ラプターが約9万ドルスタート、ブロンコスポーツが3万1000ドルスタートになっている。日本に新車を並行輸入すれば600万円以上は考えておいた方がいい。

現行世代のブロンコの燃費は2ドアモデルでリッター約8kmほどだと非公式ながらアナウンスされている。

ちなみにブロンコの旧車というと、とくにアーリーブロンコに関しては世界的に人気となっている。フルレストアされた個体であれば1000万円近いプライスも珍しくない。それに引っ張られるようにフルサイズボディのブロンコもじわじわと人気が高まっているので、旧車党もうかうかしていると手の届かない名車になってしまうかも。

もともとが過酷な使われ方を想定して生まれたクルマなので、旧車はレストアやリペアが必須なので、逆にしっかりとレストア&メンテがされていて高額な方が安心できるという見方もある。

旧車か現行世代が、ブロンコはどちらも魅力的なモデルであることは間違いない。

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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