独特の生活様式を守り続けるユニークな集団。アーミッシュのグッズ、そしてその市場価値は?

  • 2023.10.18

アメリカやカナダに住むキリスト教系のグループ「アーミッシュ」。現代もなおテクノロジーに頼らず自給自足に近い生活を送る彼らが手がける衣類やグッズがオシャレで密かに注目を集めつつあるのをご存知でした? そんなアーミッシュグッズの世界を垣間見る。

「antico -アンティコ-」代表・長谷川雅彦さん

愛知県常滑市にあるアンティークと洋服のお店でアーミッシュ関連グッズの品揃えでは日本屈指の「アンティコ」の代表。「基本的に1点ものでサイズ表記もないため、通販は行っていません。面倒ですが気になる方は一度ご来店ください」

これもまたひとつのアメリカンカルチャー。

アメリカに旧くから存在する「アーミッシュ」という宗教集団をご存知だろうか。300年程前にスイスで生まれたキリスト教系の一派で、後に宗教的迫害を受け、自由な信仰を求めてアメリカへ移住。現在はアメリカのオハイオ州やインディアナ州、ペンシルベニア州を中心にカナダのオンタリオ州などに居住していて、その数は約35万人とも言われている。

その特徴はなんといっても移民当時の生活様式を保持するところ。現在もなお基本的にはテレビやパソコン、電子レンジや掃除機といった電子機器類は使用せず、移動も馬車を使用するなど、現代テクノロジーに依存せず自給自足に近い生活を送っている。

現在も交通手段に馬車を使用するが、現在は屋根やバックミラー、反射板が付くなど若干進化が見られる

原則として快楽を感じることを禁止するほか、身だしなみにも独特の戒律も多く、基本的に装飾を嫌い、男性はボタンシャツにパンツ、ジャケット、ハット、女性はワンピースに髪の毛をボンネットで隠すというのが一般的だ。

そして、これらの衣類やバッグは時折売りに出されて市場に出回っていて、シンプルで美しいと、ファンの間では人気だそう。

日本ではほとんど知られていないが、これもひとつのアメリカンカルチャーであるアーミッシュウエアの世界をご紹介しよう。

これもアーミッシュの現在の風景。現代に合わせて進化しつつも、基本的には17世紀に宗教迫害を逃れてやってきたドイツ系移民の入植当時の生活様式をいまだに守っている

基本ハンドメイド品なので市場に出回る品は多くない。

そして、歴史が長いだけにヴィンテージも当然あるが、アンティコでは2000年代以降に作られたものが多いそう。ヴィンテージとは言えない年代だが、レアな市場ということで今回は特別に紹介することにする。

作られた年代は新しくとも、デザインや製法は昔ながらの伝統を受け継いでいるのでクラシカルで機能的なのも特徴的だ。同じヴィンテージでも定番アメカジとは一味違ったスタイルを目指す人にはオススメといえる。

服装に関して厳格なルールはないものの、「謙遜」や「慎み深さ」、「機能性」をベースに変化しながら、およそ200年前から現在のスタイルが定着してきたそう

「アーミッシュの人たちが身につけている衣類は、基本的に自分達で作っているのが特徴です」

そう話すのは、アーミッシュのユーズドウエアやグッズを多数扱う愛知県常滑市にある「アンティコ」の長谷川雅彦さん。

「基本的にはハンドメイドなのでブランド名などのタグがついていることはありません」

そのため、年代を特定することはほとんど不可能だそう。また、一般に流通するブランドもない上に、必要以上に文明社会と交わらない集団だけに彼らの品を入手するのも容易ではない。長谷川さんもアメリカに買い付けで訪れるうちにアーミッシュの集団と交流のある人と知り合い、買い付けるようになったという。

基本的には流行とは無縁だが、時代に合わせてボタンがフックに変わったり、素材に化繊系を使うなど若干の変遷も見られる
アンティーク雑貨店「アンティコ」ではハットやバッグもそろっている

アーミッシュファッションの基礎知識。

成人男性

ボタン留めのシャツに、現在のマリンパンツのようなフロントがブロードフォールタイプのパンツ、さらにベストにジャケット、ハットというのが秋冬の基本。夏場はシャツとパンツにストローハットが基本。スタイルは旧くから変わらないが近年のものは素材に化繊系が使用されているのが特徴。

成人女性

無地で長袖ロングスカートのワンピース。これにセーラー服のようなケープ、エプロン、頭はボンネットとよばれる帽子、これに冬場だとショールを羽織るというのが基本。アーミッシュのなかでもいくつか宗派があり、戒律のゆるい宗派だと色物や柄の入った生地を使用することもある。

子供

子供も基本的には大人と同じく、男子ならパンツやサロペットにシャツ、アウターにジャケットとハット、女子ならシンプルなワンピース。さらに、ベビー服もあって子供服同様カジュアルでオシャレ。アーミッシュの人たちはこの服装で農作業なども行うが、結婚式の衣装としても似合いそうだ。

市場価格を知る!

アーミッシュの人たちが着る服は基本各家庭で自分達で仕立てるのが一般的で、御用達のメーカーがあるわけでもない。また、必要以上に外の社会と関わらないことから、アーミッシュの衣類を新品で購入することは基本不可能だ。オークションやフリマ、ガレージセールなどでユーズドやヴィンテージも出回るがその量はアメリカ国内でも決して多くない。ましてや日本では扱うショップはほとんどないため「antico」の価格がひとつの目安になるが、価格は通常の古着と比べても割安な設定だ。

男性用のアウター。フロントはフックで留める仕様。スタンドカラーでポケットや袖口のカフスなどもなし。シンプルを極めたスタイル。1万780円

コットンと化繊の混紡だと思われる夏用の半袖シャツ。経年変化によるムラ感のある色落ちがいい風合いを醸している。5280円

表にデニム生地を、インナーには起毛の生地を使用した冬用のワークベスト。やや変化球だがポケットもなくシンプルなデザインは普段着に使えそう。8580円

男性用のシャツ。肌触りもいいちりめん生地を使ったボックスタイプのシルエット。時代を問わないスタンダードなスタイル。6380円

アウターは通常ボタンが見えないデザインが多いが、こちらはやや変則的。厚手のコットン生地にスナップボタンを採用したワークジャケット。1万780円

成人男性が使用するアーミッシュハット。やや唾が広くクラウンも高めなのが特徴。ビーバーとウールミックスの高級品。2万7280円

長袖ロングスカートのワンピースにケープとエプロンという定番のスリーピース。ケープとエプロンを外せばシンプルなワンピースとして日常使いできそう。1万4080円

一般的な男性用パンツ。特徴はフロントがファスナーではなくマリンパンツと同じくボタンで留めるブロードフォールタイプ。よくみるとストライプになっているのがポイント。 33インチ。8580円

女性の子供用のワンピース。フロントがボタンで、さらに裾の長いベストのようなアウターがセットになっているなど手の込んだ作りになっている。7480円

ベビー服もバリエーション豊富だが、このようなサロペットにシャツというスタイルが基本。シャツとパンツが別体に見えるが一体になっている。5280円

夏場になるとこうした編み上げのストローハットを被ることが多い。こちらもややクラウンが高めで深く被るスタイル。8580円

必要以上に外の世界と接しないので彼らの品はあまり市場に出回らない。また、手作りだからサイズ表記もないので通販での購入もリスクを伴う。実際に扱っている店舗で試着しての購入がオススメといえるだろう。

【DATA】
antico -アンティコ-
愛知県常滑市栄町3-111
TEL0569-89-8913
営業/11:00~ 17:00
休み/水・金曜
Instagram @antico__tokoname

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年7月号 Vol.351」)

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

アオイちゃん

Lightning, CLUTCH Magazine

チーママ系エディター

アオイちゃん

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

なまため

2nd(セカンド)

I LOVE クラシックアウトドア

なまため

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

CLUB HARLEY 編集部

Dig-it, CLUB HARLEY

ハーレー好きのためのマガジン

CLUB HARLEY 編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部