アメリカ唯一のピュアスポーツカー、コルベットの歴史を再確認。

  • 2023.07.24  2023.06.14

アメリカ車に詳しくなくても、いわゆるクルマ好きならば知っている車種がシボレー・コルベット。

なぜコルベットがここまで有名になったかというと、その誕生から現在まで、アメリカ製ピュアスポーツカー(2座でリア駆動のスポーツカー)と呼ばれる車種として脇目も振らずに歴史を積み重ねてきたから。

そんなコルベットについて記事にしようと思ったのは、先日お会いした60歳になるハワイが大好きだという紳士が、いつかは生まれ年の1963年式コルベットを所有したいという話をしていたから。

やはりコルベットはアメリカ好き、アメリカ車好きにとっては特別なクルマなんだと。ということでその歴史をちょっと紹介してみる。

今も変わらず2人乗りのピュアスポーツ道をひた走る姿勢はもはや文化。

コルベットの初期エンブレムはチェッカーフラッグとシボレーのボウタイロゴが入る旗が交差する”クロスフラッグス”と呼ばれるエンブレムがあしらわれた。このエンブレムは時代とともにデザインを変えながら現在も踏襲されている。photo by General Motors

アメリカ製ピュアスポーツカーの歴史は当然コルベットだけではない。かつてはフォード・サンダーバードやGT40、それにシェルビー・コブラ、現代ではダッジ・バイパーなどがライバルブランドからも存在したけれど、サンダーバードはピュアスポーツから4座のクーペに路線変更して、今や絶版。ダッジバイパーも多くのレースシーンでも活躍したけれど絶版に。GT40やシェルビー・コブラは大衆に向けて大量生産された車種ではない。つまり誕生から現在までアメリカ製2シータースポーツとして変わらず存在しているのはコルベットしかないのである。

そのきっかけは、第二次世界大戦時にヨーロッパに従軍した兵士たちが、現地に存在したコンパクトな2人乗りスポーツカー(MGやオースチン・ヒーレーなど)に触れ、その楽しさを自国でも味わいたいという思いがきっかけだった。

それまで大きなサイズのアメリカ車に、コンパクトで運動性能が高いという新たな基準で考えられたのがコルベットだった。

今でもそのコンセプトは変わることなく、高いスポーツ性能は変わらず作り続けられていることから、どの世代にもそれぞれのファンが存在し、現在でもクラシック・コルベットは高値安定。アメリカの魂だと表現する人もいるほど。世代とともにその歴史を見てみよう。

第1世代 1954-1962年 ”C1”

パチパチパチ。コルベットの誕生。量産車として初めてFRP(グラスファイバー)を採用して軽量化。初代は標準で「ブルーフレーム」と呼ばれる直列6気筒エンジンを搭載して生まれたけれど、翌年には大排気量のV8エンジンがオプション設定、翌々年にはV8エンジンのみというラインナップになったのがアメリカっぽい。流麗なボディラインは1950年代ならでは。後期型は丸目4灯にマイナーチェンジする。

1953年のモトラマに展示されたコルベットの量産モデル。ご覧のような人だかり。当時は欧州車とわたり合える純アメリカ産の2シータースポーツカーは目新しい存在だった。photo by General Motors
1954年式コルベット。FRP(グラスファイバー)製のボディに低く構えたスタイリング。ラウンドしたフロントウィンドーやラウンドシェイプしたボディ、それにテールフィンなど、1950年代らしいデザイン。photo by General Motors
C1後期モデルはボディサイドがえぐれ、テールフィンは省略された。1958年式からヘッドライトが4灯化。メッキパーツも多用され、アメリカの黄金時代らしいスタイルになっている。これは1960年モデル。photo by General Motors

第2世代 1963-1967年 “C2”

コンセプトモデルだったスティングレーレーサーのデザインを量産車に落とし込んでフルモデルチェンジしたC2。直線のなかに曲線でアクセントを持たせ、フロントは回転式のリトラクタブルヘッドライトになった。C2初代の1963年式のクーペはリアウィンドーが2分割された「スプリット・ウィンドー」で、翌年からワンピースに変更されるので、’63年式クーペはクラシック・コルベットのなかでも特別なモデルとしてコレクタブルなモデルになっている。

フルモデルチェンジによって大幅に変わったスタイリング。1963年式のクーペのみに存在したリアのスプリットウィンドーはコレクターカーとして現在も絶大な人気を誇っている。 photo by General Motors
1966年式クーペ。大排気量のV8エンジンを搭載したマッスルカーが数多く生まれた1960年代。コルベットもその波に乗りエンジンは巨大化。これは427 V8(約7000cc)を搭載したホットモデル。エンジンフードが盛り上がっていることで、よりマッチョなスタイルになっている。photo by General Motors

第3世代 1968-1982年 “C3”

C2のボディデザインを曲線を基調にして大胆にモディファイしたイメージのC3。前後フェンダー部分が張り出していて、キャビン部分がくびれているいわゆる「コークボトル」ラインが特徴に。フロントノーズは尖ってて、リアはダックテールというかなり戦闘的なイメージになり「コルベットといえばこれ」と言われるほどグラマラスで特徴的な世代になった。ボディスタイルはコンバーチブル(ロードスター)とクーペモデルはルーフパネルが脱着できるTトップ(Tバールーフ)が登場した。C3の後期モデルは安全基準の変更によってアイアンバンパーからウレタンバンパーへとマイナーチェンジされる。エンジンは1970~1974年式にはコルベット史上最大排気量となる454(約7400cc)V8エンジン搭載モデルも登場。この世代からトランクが無く、シートの後ろにちょっとしたスペースがあるのみと、スパルタンなスタイルに。

1968年式クーペ(Tトップ)。低く、よりロングノーズを強調したデザインに。キャビン部分がくびれたコークボトルラインはマッスルカー全盛期ならではのデザイン。photo by General Motors
衝突安全性などが厳格化されたこともあって、先の尖ったアイアンバンパーのデザインが変更され、ウレタンバンパーへとマイナーチェンジしたC3後期。それでも流れるようなフォルムとリトラクタブル式のヘッドライトは健在。photo by General Motors

第4世代 1984-1996年 “C4”

欧州産スポーツカーとも渡り合える性能とスタイリングを目指してフルモデルチェンジしたC4。1983年にはプロトタイプのみで市販されず、1984年モデルからの発売になった。前モデルとは大幅に変更された直線基調のボディデザインで、当初はクーペとTトップのみで、安全基準をクリアした1986年式からコンバーチブルが追加される。ハンドリング性能も向上し、世界で渡り合えるスポーツカーとして生まれ変わった。エンジンは5700ccのV8が標準。1989年からロータスが開発、設計したオールアルミ製のDOHC-V8エンジンを搭載したホットモデルであるZR-1がラインナップされた。残念ながらこの世代もトランクが無い(シート後ろのスペースのみ)というストイックな仕様。

1987年式コンバーチブル。ヨーロッパのスポーツカーと渡り合うためにアメリカ独特のデザインから、世界基準のデザインへとフルモデルチェンジしたC4はぜい肉をそぎ落としたようなすっきりとしたデザインに。そのおかげか先代よりも空力性能が約25%向上した。FRP製ボディ、リアの横置きのリーフスプリング式サスペンションは踏襲された。photo by General Motors
第四世代の最終年式にホットモデルとして登場したグランスポーツ(GS)は生産台数1000台(クーペ810台、コンバーチブル190台)という稀少モデル。リアはオーバーフェンダーによってタイヤハウスを拡大し、量産車の標準タイヤとしては驚愕の315/35-17インチのタイヤがセットされる。photo by General Motors

第5世代 1997-2004年 “C5”

空力性能を高めるために、再び流線型ボディへと生まれ変わったC5。低く、ロングノーズ、ショートデッキのデザインは踏襲しながらも、より現代スポーツカーとしての性能を確保。それを証明するかのようにレースの世界ではルマン24時間耐久レースで勝利するなど、もはやアメリカ車=直線番長というイメージを払拭した。またフロントウィンドーに速度などを映すヘッドアップディスプレイが装備されるなど、現代スポーツカーとしてのスペックへと進化している。エンジンは5700ccのV8。さらにユーザーにうれしいのはゴルフバッグが入るほどのトランクができた(笑)。

2001年式クーペ。先代よりも約45kg軽量化が図られ、運動性能がさらに高まった第五世代。C4をより流線型にしたようなデザインで、リトラクタブル式のヘッドライトも受け継がれた。この世代から現代車両らしいスタイリングに。photo by General Motors

第6世代 2005-2013年 “C6”

衝突安全性能を確保するために、C2から続いていたリトラクタブル式のヘッドライトが廃止されたのがC6のスタイリングにおける最大の特徴。もはや世界的にも今のおじさんたちが興奮するリトラクタブル式のヘッドライトのクルマを生産することは難しい世の中になってしまった。そんな例がコルベットにも。エンジンはC5からの改良版のV8エンジンで排気量は約6000cc(2008年からは6200ccに拡大)、さらにハイパフォーマンス版のZ06モデルでは7000ccまでエンジンは拡大され、コルベット史上初めてスーパーチャージャーを搭載した6200ccエンジンも登場した。2人乗りでこの排気量って、もはやその進化は本当の「好き者」しか相手にしていない。

C6最終モデルの2013年式クーペ。1963年式から伝統だったリトラクタブル式のヘッドライトとついにお別れ。軽量化や衝突安全性能の向上のための決断だった。photo by General Motors

第7世代 2014-2019年 “C7”

C2、C3の愛称であり別名でもあったスティングレイの名前が復活し、コルベット・スティングレイに。過去へのオマージュかと思いきや、C6よりもさらに吊り目のヘッドライトになっただけでなく、伝統だった丸形4灯のリアテールランプは新たなデザインへと変更され、プレスラインが先代よりもさらに強調されたシャープなデザインになった。それまで定番だったラウンドしたリアウィンドーも廃止されてフラットになり、まったく新しいデザインにモデルチェンジした。エンジンは新型の6200ccのV8と同エンジンにスーパーチャージャーを組み合わせ、パワーを向上させた2種類が存在した。

先代よりも吊り目になっただけでなく、抑揚のある複雑なボディラインになった第7世代。大衆向けのスポーツカーというよりも、スーパーカーと並んでも遜色のない「速そうな」スタイリングへと変化。これがフロントエンジン、リアドライブの最終世代になった。photo by General Motors

第8世代 2020年から現在 “C8”

コルベット史上最大のモデルチェンジを断行した現行モデル。エンジンは伝統のフロントエンジンからミッドシップ(車両の中央部にエンジンをレイアウトする)に大幅変更。さらに初代から受け継がれてきた横置きのリーフスプリング式だったリアサスペンションも廃止され、ダブルウィッシュボーン式へと変更された。これまでのコルベットの歴史や伝統までも大改革したフルモデルチェンジは、往年のコルベットファンもざわつく事件だったけれど、これは世界のスーパーカーとその性能で肩を並べるための大英断。ただエンジンは伝統のOHV自然吸気V8(6200cc)という、アメリカ車らしさは残しているところがにくい(エンジンオイルはドライサンプ式になっているけれど)。ミッドシップになったことで、リアの両サイドが張り出したデザインがより強調され、ピュアスポーツというよりもスーパーカー的なスタイリングになった。コンバーチブルモデルはコルベット史上初めての格納式ハードトップを採用している。さらにこれも史上初めてという右ハンドル車も登場。日本には右ハンドルのみが正規輸入される。

最新の2023年式。エンジンレイアウトがミッドシップになったことで、先代よりもリア周りにボリュームのあるデザインに。ミッドマウントのエンジンを冷却するためにリアタイヤの前に大きなエアダクトが設けられ、よりスーパーカーらしいフォルムに。もはや大衆向けスポーツカーというよりもスーパーカーとして歩んでいくという意志を感じる、コルベット史上最大のモデルチェンジといえる。photo by General Motors
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