愛用品を選ぶ基準は、かっこよくてずっと使えるもの。
ヴィンテージ愛好家が営む本格的なナポリピッツァ店があるとの情報を聞いて向かったのは、のどかな風景が広がる埼玉県本庄市。閑静な住宅街に突如表れたのは、数十年もの時を経たような小屋とヴィンテージのエアストリーム。カウンター席と屋外のテーブル席が用意され、日本とは思えない空間が広がる。
実はここ、知る人ぞ知る名店として知られ、日本有数のナポリピッツァの有名店である聖林館出身のオーナーシェフである山本さんが腕を振るう。
「この場所は自分の生まれ故郷なんです。11年前に独立した時は本当にお金がなかったから、友達に格安で作ってもらいました。イメージしたのはトム・ソーヤーの冒険に出てくるようなミシシッピ川のほとりにある小屋。今でこそ高価ですが、当時はエアストリームだってまだまだ安かったんですよ。
僕は10代の時に映画『アメリカン・グラフィティ』を観てから、アメリカの服や音楽、カルチャーが大好きになったんです。埼玉の片田舎で育ったので、いつか海外に行ってみたいと思い、20歳の時にドイツのデュッセルドルフへ留学したんです。そこで和食のレストランで修行しながら、ヨーロッパ各地を旅した時に出会ったイタリアンピッツァが、今の自分の原点ですね。
ただアメリカもずっと大好きですし、常にヴィンテージを買っていたので、そんな経験も今の自分につながっていると思います。愛用品を選ぶ基準は、単純にかっこよくてずっと使えるもの。クルマとバイクも同様で、壊れるし、パーツはないし、困ることが多いのですが、それを補う魅力があるんです」
ヴィンテージバイクを楽しむための愛用品。
1968年製のランブレッタGPは、普段の足としても使っている。もともと錆びた状態で譲り受けたが、その風合いを活かしている。
手前のブーツは親交の深い群馬の名店タイムズアーチェンジンで購入したクビキレザー。奥は’50年代のエンジニアブーツ。
整備中で撮影できなかったが、ヴィンテージのインディアン・スカウトに乗っており、そのパーツが並んでいる。特に’30sのバードゲージライトは宝物だ。
バイクに乗る際に着ているのが、1950年代のラングリッツレザーズのパデッドキャスケード。奥さんとペアで購入した。
自作の薪窯で焼く極上のピザ。
自作した薪窯で丁寧に焼き上げていく。400度以上の高温にするために数時間掛かるそう。白Tにデニムがピッツァ職人の矜持。
看板のマルゲリータ。日本産の小麦を使い、400度以上の高温で1分くらい焼きあげていく。餅に近いような食感を味わえる。
ピッツァを焼く時に載せる専用の道具であるパーラー。タモノキを用いて、オリジナルで職人に作ってもらったそうだ。
(出典/「Lightning2023年3月号 Vol.347」)
Text/S.Sato 佐藤周平 Photo/K.Hayashi 林和也 取材協力/ Pizza Lion Rock ART&CAFE TEL0495-72-9303
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