1点ずつ手作業で染める、ハンドダイシリーズ。
50年以上の歴史を持ちながら、常に革新的なプロダクトを展開するモト。その根底にあるのは、19世紀に始まったアーツ&クラフツ運動だ。
粗悪な大量生産が出回る中、中世の手仕事に回帰し、美しく使いやすいデザインを生み出そうというムーブメントだ。これはこれはモトの世界観に通ずるものがある。その象徴的なアイテムが、ハンドダイシリーズである。
「ハンドダイシリーズを作ろうと思ったのは、エイジングした時の雰囲気を見てみたいという単純なものでした。創業者であり、父親でもある本池秀夫が人形作品を作る上で手染めを多用していたので、その手法をうまく活用できないかと考えていたんです。ただ手染めすると言っても当然難しく、ベースとなる素上げのレザーに、数種類の染料で塗っていき、染色後にバフをかけることで完成します。最大のポイントは、あえてムラ感のある仕上がりにしていること。
靴の場合だと曲がる箇所であったり、エイジングしやすい場所をしっかりと把握して、穿き込んだ時により美しいエイジングになるように配慮しています。既存のレザーにはないカラーリングも調合次第では作れますし、あえてツートーンカラーにしてみたり、その可能性は無限です。実は作っている方も楽しんでいるんですよ(笑)」
履き込むことで表情は変わる。
コードバンでもハンドダイシリーズを展開。ラティーゴレザーを使ったモデルも定番でリリースしている。右からコードバンのプレーントゥ8万6900円、コードバンのキャップトゥ8万9100円、ラティーゴのプレーントゥ6万4900円、ラティーゴのローファー6万3800円
コードバンはあえて光沢感を押さえてマットな質感で仕上げているが、使い込むことで本来の輝きが出てくる。非常に奥行きのあるエイジングとなっている。
オリジナルカウハイドを用いたモーターの2ndエンジニアブーツは、スペシャルなツートーン。左のモデルが素上げの状態でここから染色。8万2500円
同じエンジニアであるが、染めるだけで印象がまったく違う。あえてムラ感を出してペイントしているので、履きジワにより迫力が出てくれるのが人気の理由。
モーターのスペシャルエディションとしてリリースされている手染めのネイビー。オリジナルカウハイドを使っており、まるでインディゴのような絶妙なトーンに仕上げられるのはハンドダイの特徴である。7万9200円
なんともいい雰囲気になった手染めのサイドゴアブーツは、ラティーゴレザーを使っている。履きジワにより陰影が出るように計算して手染めしているので、その狙いがハマった好例。7万1500円
【DATA】
MOTO
東京都港区北青山3-10-2
TEL03-3407-5836
営業/12:00〜19:00
休み/水・木曜
www.motostyle.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年1月号 Vol.345」)
Text/S.Sato 佐藤周平 Photo/M.Watanabe 渡辺昌彦
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