アパレル業界で「茶道」が人気!アメリカを経て辿り着いた奥深き茶道の伝統と美意識。

  • 2022.07.22
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近年、アパレル業界でも「茶道」への関心が高まっている。モーターサイクルやアメカジなど一見相反する世界に身を置きながら一昨年より茶道に傾倒するラングリッツ・ジャパンの岡本氏にその魅力や茶道を通じて感じる変化などを伺った。

「ラングリッツ・ジャパン」代表・岡本隆則さん

アメリカの老舗レザーブランド「ラングリッツ・レザーズ」の日本の総代理店「ラングリッツ・ジャパン」、オリジナルウェアブランド「ブラックサイン」の代表も努める。

お茶の世界を知ると、謙虚になれますね。

岡本さんが茶の道へ足を踏み入れたのは一昨年の暮れ頃。

「数年前から茶道を習いたいと思っていました。でも、お茶をやっている人が周りに誰もいないから情報もなくて。とりあえず書店に行ったら1冊の本に出会ったんです。その著者の方が名古屋の方で、その方に連絡したら1度見にきなさいということになって。それが今の先生ですね。歳もあるのか最近は特に日本の文化に興味があって。日常的に着物を着てみたいとか。茶道なら着物を着る機会が増えるだろうなというのもお茶の世界に入ったきっかけのひとつです」

茶道の茶器のひとつ、抹茶を入れる棗(なつめ)。形状や柄、塗りや装飾などは多岐に渡る。メジャーな茶器であるが、こちらは「薄茶」専用で、格式の高い「濃茶」の場合は「茶入」を使用する

それからは月3回の稽古に加えて、お茶会のお手伝い、道具店巡りや古書店巡りなど、まさに茶の道にどっぷりと浸かる日々。

「スタッフが育ってくれたことで時間を作れるようになったのが大きいですね。わかっていたことではありますが、茶道はとてつもなく奥が深い世界ですから。作法だけでなく、道具、着物、掛け軸なども季節によって変わりますし。それも含めてお客さまに対してどう誠心誠意おもてなしできるかという。僕らもお客さまに満足していだけるように日頃から一生懸命にやっているつもりですが、お茶の世界を知るとまだまだだと思わされますし、謙虚になれますね」

熊谷守一が絵付けした加藤清春作の志野茶碗。守一自身が「好日」との銘をつけている
現在の岐阜県中津川市出身で明治から昭和にかけて活躍した洋画家・熊谷守一の書。ヘタウマな味わいが好み。いずれ掛け軸にしたいそう
「ブラックサインメインロッジ」(名古屋市千種区千種3-35-8)店内奥のショーケースには、棗を中心とした岡本さんコレクションの茶器が並べられている

お茶を通じて物の捉え方が変わり世界が広がりました。

「温故知新」。旧きをたずねて新しきを知る。そこに対する思いの深さや姿勢に洋の東西は関係ない。とことん異国の歴史に触れたからこそ見えてくる、日本文化の魅力が新しい美意識を教えてくれる

長年、アメカジ業界に身を置き旧車ハーレーにも通じる岡本さんだが、茶道というある意味真逆の世界を通じてどういった化学変化が起こったのだろうか。

「それぞれの国の文化ですからアメリカとは比較しようがありません。ただ、お茶を通じて物の見方や感じ方が変わりました。茶道は精神面を整え、その多くを所作を持って表現します。これはアメリカにはない表現方法だと思います。こういうことを知ると、捉え方が変わって世界が広がりますよね。

この日は絹製の着物を着用。着物ひとつも深い。この日は取材ということで特別に着物を着ていただいたが、日頃は普段着で昼食後に決まってデスクで一服のお茶を点てて飲むのが日課だそう

また、僕らくらいの歳になると良くも悪くも意見を言ってくれる人が少なくなるじゃないですか。しかし、お茶の先生からは所作やお点前のことなどを優しく時に厳しく指導を受けるわけです。注意されることには必ず理由があります。細かなことを指導してもらえることで自分に欠けている物が明確になり多くの学びがあります。

それと、今まで接点のなかった人と会えるのもよかったですね。親より上の世代の方達のお手前や所作を見ると自然で綺麗ですし、日本の美意識を身につけている方が多いから気づかれさることが多々あります。自分はまだまだだと思うし、わからないから楽しい。そういう意味でもお茶を始めてものすごく充実していますよ」

ゆっくりとお茶を点てて飲むことで気分転換になるそう。型式に捉われずお茶そのものの味が楽しめるのも魅力のひとつ
岡本さんのデスク裏の本棚にはアメリカ関連の書籍に混じって多数のお茶関連の本が並ぶ。書を読んで学ぶのもまた茶の道
オフィスには多数の茶器が置かれている。木箱を包む布もヴィンテージの更紗や絹で、岡本さん自らセレクトし加工しているという

すべてにおいて粋を凝らしたザ・ジャパニーズ・ヴィンテージ。

お茶の醍醐味に茶道具があるが、種類や価格も実に多種多様。しかも、高価な物ばかりを使えばいいわけでもなく、全体のバランスが重要で、これまた奥深き世界。岡本さんは名古屋近辺の作家や由来のある物を中心にコレクトしているそう。

1.絵唐津の平茶碗

桃山~江戸初期あたりと目される絵唐津の平茶碗。お皿のような形状が特徴の平茶碗は主に夏に用いられる茶碗。独特の絵付けと口を付ける器の縁の部分、口縁の形状も美しい。また何箇所か赤や黒の漆で継がれている部分もあるがそれもまた景色になっている。

2.香を収納する香合

韓国で作られた高麗茶碗の一種・御本茶碗と、裏千家14代淡々斎(たんたんさい)作の茶杓・一葉、そして、明治から昭和に活躍した日本画家・山元春挙が絵付けした香を収納する香合(こうごう)。

3.柄杓の合(ごう)や釜の蓋を置く蓋置

釜のお湯をすくう柄杓の合(ごう)や釜の蓋を置く蓋置。こちらは明治29年岡山県出身の陶芸家で、肥前焼の陶工として始めて人間国宝となった金重陶陽が昭和7年あたりに手がけた作。本人の手による箱書きと落款が入る。

4.濃茶を入れる容器・茶入(ちゃいれ)

茶の湯でも格式の高い席で用いられる濃茶を入れておく容器・茶入(ちゃいれ)。茶入は陶器製が主。アメリカ人ながらお茶に精通する陶芸家・利茶土(リチャード)・ミルグリムの作。蓋は現在取引不可の象牙製。

5.花器

茶道にはお茶道具だけに限らず、客人をもてなす席に飾られる花や、それを容れる花器も重要なアイテム。その季節や茶会の雰囲気に合わせて花器や活ける花も変わってくるため、実に多方面の知識と美意識が要される。

6.お茶をすくう茶杓

こちらは名古屋を代表する松坂屋の創業者・伊藤次郎左衛門が昭和9年にインドを巡ったときに、インドにある祇園精舎(現・ウッタル・プラデーシュ州)に生えていた竹を持ち帰り削った珍しい逸品。

(出典/「Lightning2022年6月号 Vol.338」)

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