画工・遊鷹が描くアメリカントラディッショナルな世界。

  • 2022.07.14

アメリカンであり、オリエンタルな印象もあり。いずれも強いカルチャーの香りが漂う画工・遊鷹さんの作品。その魅惑のグラフィックは感度の高い人たちを中心に広がり日本だけでなく、早くも海外で認知され始めている。

画工・遊鷹さん

アパレルメーカーにてグラフィックデザイナーとして勤務後、2019年に独立。手描きのイラスト自体はかれこれ20年以上、描き続けており、現在は定期的に個展を開催している。

縛られることなく好きなカルチャーを融合。

ひと言でジャンルを括ることができない画工・遊鷹さんの作品。1930年代頃にアメリカの船乗りたちの間で流行したオールドスクール、またはアメリカントラディショナルと呼ばれるタトゥーのジャンルに近いかもしれない。

「強いていうなら、旧いマッチ箱のラベルや昔のビールの広告などが作品のインスピレーション源となっています。そこに自分の好きなパンクやメタルなどの音楽、スケートやストリートなどのカルチャーを融合させて独自の世界観に落とし込んでいるイメージ」

作品を手がける上でインスピレーション源となっているのは、ヴィンテージのマッチラベルの書籍や江戸文字、隷書などが解説されている辞典が多いという

アパレルメーカーにてグラフィックデザイナーとして勤務しながら、個人的な作品を手掛けてきた遊鷹さん。徐々にオーダーも増え、独立が現実となったのが約3年前のこと。現在は全国で個展を開き、作品を販売している。

「Tシャツのデザインから看板、ショップやクルマなど、描けるものならなんでも。トンカツ屋さんが販売するソースのビンやビールのラベルの仕事もありましたし、クルマに直接描くことも」

遊鷹さんの後ろに写るのは、日本の部屋に取り付けられる襖に描いたもの。アトリエ作業以外にもショップやクルマなどにイラストを描く、地方出張なども行っている

現在は目下、上海で開催予定の個展に出すために作品を手掛けている真っ只中。活躍の場は日本のみならず、世界へと向かっている。

「これまでも、いろんなものに描いてきてはいるんですが、最近は立体物だけでは飽き足らず、より作品を大きくしていきたいと思っています。そして、いまの作品を通していろんな人と繋がって、新たな展望が見えたら嬉しいです」

アトリエの壁面にはシェルフが置かれ、ペンキやアクリル絵の具など、描くものによって使用する道具が並べられる
書棚に並べられる瓶はクラフトビールやソースのラベルを手掛けたもの

画工・遊鷹さんの作品の一部を紹介。

1.HAWK,KATANA(2015)

ベニヤ板をベースに糸ノコを使って鷹と刀を描いた作品。真っ直ぐな刀のライン、波のある羽根部分も糸ノコで切断のわりに繊細に表現され、細かな修正を入れながら制作されたことが窺える。

2.LUCKY(2021)

2021年の個展に出展したときのもので、幸運をモチーフにスケートボードに描いたもの。グラフィックの中心には幸せを呼ぶ馬蹄、そして縁起の良い数字である「七」の文字が表現されている。

10代から20代にかけて、スケートボードカルチャーにも傾倒してきた遊鷹さん。使わなくなったスケートデッキをキャンバス代わりに新たな作品を手掛けた

3.HAWK,KOZUCHI(2021)

ポスター展に出展するために描いた作品。タイダイに染めた紙をベースに色付けするのではなく、黒で塗り潰してイラストを製作。ベースが変われば、絵の見えかたも大きく変化する好例となっている。

4.HARDCORE BEER LIFE(2021)

個展用に製作した作品で、遊鷹さん自身、大のビール党であることから、鷹が前脚でビールジョッキを握るイラストに。ジョッキから流れるビールが、浮世絵や日本画に見られる波をイメージしている。

5.G-SHOCK(2020)

2020年の元旦に、G-SHOCKのインスタグラムにて発表された作品。竹の模様が入った額縁は、知人のJAMさんに依頼し、イラストとリンクするよう竹のデザインを取り入れたものとなっている。

(出典/「Lightning2022年6月号 Vol.338」)

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