“アメリカの歴史”を被れ。歴代アメリカ大統領が愛したハット、STETSONとは?

  • 2022.10.21  2021.12.20

1865年にフィラデルフィアで誕生して以来、世界中の著名人たちに愛されたハットメーカー、ステットソン。カウボーイたちの絶大な支持を受け、西部劇の雄、ジョン・ウェインが銀幕で愛用し、そして歴代のアメリカ大統領が大統領就任式で必ずと言っていいほど被っていたのがステットソンだった。創業150年。まさにステットソンは、「アメリカのシンボル」と呼ぶに相応しい。

流麗なデザインであらゆるシーンでマッチする!

アメリカ人に「帽子と聞いて、思い浮かべるブランドは何ですか?」と問えば、10人中8、9人は「ステットソン!」と答えるに違いない。それほどまでにアメリカで浸透しているハットメーカー、それがステットソンだ。

1830年にアメリカ・ニュージャージーで生まれたジョン・B・ステットソンは、父が帽子ビジネスに携わっていたこともあり、1865年、35歳の時に姉から60ドルを借りて、アメリカ・ペンシルバニア州フィラデルフィアで帽子の製造販売を開始する。これがステットソン伝説の始まりだ。時は熾烈を極めたアメリカ南北戦争直後。ようやく一つの国家として団結し始めたアメリカで、ステットソンは着実に業績を伸ばしていく。

1930年代のステットソンファクトリーの様子。当時から大量生産体制を取っていたことがわかる。かつては管から噴霧されるスチームを使って帽体を成形していたが、使用するマシンは変われどハットの製法は今もほぼ変わらない

売り上げを急激に伸ばした最初のきっかけは、1869年に発表された「ボス・オブ・ザ・ブレインズ(平原の大将)」と名付けられたモデルだった。かつてジョンが出会ったカウボーイに乞われて売ったハットを再現したこのモデルは、平原を駆け廻るカウボーイたちの絶大なる支持を受け、ステットソンをアメリカのシンボルへと引き上げる原動力となっていった。

1865年の創業以来、ステットソンは数々の広告を雑誌や新聞に掲載することで認知度を徐々に上げていった。当時の広告ビジュアルを見てみると、ステットソンの企業戦略が色濃く反映されており、興味深い。こちらは1930年代の雑誌広告。ビジネスシーンに訴求している

ステットソンハットが人々に愛される理由、それは耐久性に富んだ堅牢な作りと、流麗でワイルドなデザインにある。カウボーイのみならず、ビジネスシーンやハンティング、ゴルフなどのスポーツ用途にも使われるようになり、アメリカ人の日常に無くてはならない存在へとなっていく。

銀幕では西部劇で名を馳せたジョン・ウェインがステットソンのウエスタンハットを被り、歴代のアメリカ大統領が着用することで、ステットソンはまさに「アメリカの象徴」へと登り詰めたのだった。

アメリカ大統領や著名人などの頭型を記録した資料。みな前後に長い楕円の形をしているが、下段右端の人物だけ横に広い円形なのがわかる。この頭型は、1900年代初頭に駐米日本大使を務めた高平小五郎男爵のもの。日本人と欧米人で、頭型はここまで違う。ちなみに上段左端が第16代大統領リンカーン、下段左端が第26代大統領ルーズベルトの頭型

興味深いエピソードがある。それまでのアメリカ大統領はハットを愛用し、大統領就任式の際にはハットを被り登壇することが多かったが、第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディは、1961年、ハットを被らず無帽で自身の大統領就任式を行った。これにより、ステットソンの売れ行きが激減してしまったというのだ。

ケネディ人気もさることながら、それほどまでに大統領=ステットソンのイメージを定着させ、アメリカ国民の行動を左右するステットソンの凄さが、このエピソードからもおわかりいただけるだろう(その後、ケネディは1963年にテキサス州ダラスで暗殺され、その後任で大統領に就任したジョンソンはハットを愛用していたため、ステットソン人気が盛り返したという)。

ステットソンがアメリカのシンボルだということは、海を越えて遠く日本まで波及し、かつて昭和天皇や吉田茂元首相が訪米した際には、アメリカに敬意を表して、ステットソンを被ったという逸話も残されている。アメリカの歴史と共に歩んできたステットソンを、今の時代も被ることのできる我々は幸せだ。

現在、ステットソンのハットはアメリカ・テキサス州ダラス近郊にある巨大なファクトリーで生産されている。アメリカのみならず全世界に出荷されるとあって、ファクトリーでは300名を超えるワーカーたちが日夜ハットを作り続けている。こちらは、金型にセットし、熱と圧力を加えることで成形する「クラウンプレス」。西部劇で有名なジョン・ウェインモデルなどのウエスタンハットは、このプレス機を使用する。
ダラスにあるステットソンファクトリー内部。その規模の大きさは圧巻の一言。ここで作られたハットが全世界へと届けられる。巨大な建物の中に整然とマシンが並び、流れ作業で効率よく製品が出来上がっていく

こちらがジョニー・デップも愛用する代表モデル! Made in U.S.A. WHIPPET

Material:Beaver + Fur
Color:Black/Navy/Charcoal Gray/Light Gray
Price:¥42,120

1938年の誕生以来多くの著名人に愛され、今なおステットソンを代表するモデルとして人気を博すWHIPPET(ウィペット)は、イギリスの競争犬であるウィペットの持つ「男らしさ」「軽やかさ」「スピーディ」「上品さ」というイメージをデザインソースとして作られたモデル。流麗なラインのクラウンとやや広めのブリムを持ち、ワイルドかつ美しいデザインが特徴的だ。

ステットソンのハットは、職人の手仕事から生まれる。

歴史ある、ステットソンファクトリーでハットがどのように作られているのか、その様子をもう少し詳しく見ていこう。

ファクトリーの一角には、大量のハットが乾燥されていた。ハットを作る際、スチームや熱による成形と乾燥が交互に何度も行われる。

帽体に木型を入れ、スチームを当てて成形する「型入れ」。木型は色によりモデル分けされ、約4000個のストックがあるという。

昆虫由来の「シェラック」と呼ばれる液体を用いて「型入れ」した帽体の内側を磨き、フェルトの毛羽立ちを取り除いている。

ファクトリーの片隅にひっそりと置いてあった木型製作マシン。非常に古い機械だが、いまでもたまに使うことがあるという。

素材のフェルトはテキサスにある別の工場で作られており、写真のような状態でこのガーランドのファクトリーに運ばれてくる。これを成形することでステットソンのハットは作られる。保管するBODY ROOMには常時5万個をストックしている。

マシンにハットをセットし、ヤスリでフェルトの毛羽を落としていく。

スウェットバンドには、ステットソンのロゴとMADE IN U.S.A.の文字が刻印される。

日本人の頭型にぴったりのステットソンはいかが? WHIPPET / JAPAN LIMITED

ステットソンを代表する名モデルであるウィペットだが、現在では、日本人の頭型に合わせた限定モデルもラインナップされ、自分のスタイルに合ったモデルを選ぶことが出来る。

Made in U.S.A. Vintage WHIPPET

Material:Beaver 100%
Color:Sand Gray/Black 
Price:¥86,400

U.S.A.製のWHIPPETをベースにクラウンを高くしヴィンテージモデルを再現。頭型を日本人仕様にしたU.S.A.生産の日本別注モデル。

Made in U.S.A. Vintage WHIPPET ver.3

Material:Fur 10%+Wool 90%
Color:Beige/Black/
Charcoal Gray/Orange
Price:¥28,080

上のVintage WHIPPETと同デザインながら、素材をファーとウールにすることでお求めやすい価格を実現した日本限定仕様。

Made in U.S.A. Dusty WHIPPET

Material:Wool 100%
Color:Black/Brown 
Price:¥29,160

U.S.A.製WHIPPETをベースに、ヴィンテージ加工を施した日本限定のスペシャルモデル。本体や巻き飾りにいたるまで、アメリカの職人が1点1点ヤスリやサンドブラストで丁寧に加工を施し、長年使いこんだような風合いが楽しめる。U.S.A.の材料を使用したフラットブリム仕様。

アメリカの歴史を彩ってきたハットを、日本人に適したサイズ感で着用できるとは最高すぎない? あの大統領や銀幕のスターを気取ってカッコよく着こなしてみてはいかがでだろうか。

【問い合わせ】
JOHN B.STETSON TOKYO
TEL03-5652-5890
http://stetson.jp

(出典/「Lightning 2021年6月号 Vol.326」)

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

CLUB HARLEY 編集部

Dig-it, CLUB HARLEY

ハーレー好きのためのマガジン

CLUB HARLEY 編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部