流麗なデザインであらゆるシーンでマッチする!
アメリカ人に「帽子と聞いて、思い浮かべるブランドは何ですか?」と問えば、10人中8、9人は「ステットソン!」と答えるに違いない。それほどまでにアメリカで浸透しているハットメーカー、それがステットソンだ。
1830年にアメリカ・ニュージャージーで生まれたジョン・B・ステットソンは、父が帽子ビジネスに携わっていたこともあり、1865年、35歳の時に姉から60ドルを借りて、アメリカ・ペンシルバニア州フィラデルフィアで帽子の製造販売を開始する。これがステットソン伝説の始まりだ。時は熾烈を極めたアメリカ南北戦争直後。ようやく一つの国家として団結し始めたアメリカで、ステットソンは着実に業績を伸ばしていく。
売り上げを急激に伸ばした最初のきっかけは、1869年に発表された「ボス・オブ・ザ・ブレインズ(平原の大将)」と名付けられたモデルだった。かつてジョンが出会ったカウボーイに乞われて売ったハットを再現したこのモデルは、平原を駆け廻るカウボーイたちの絶大なる支持を受け、ステットソンをアメリカのシンボルへと引き上げる原動力となっていった。
ステットソンハットが人々に愛される理由、それは耐久性に富んだ堅牢な作りと、流麗でワイルドなデザインにある。カウボーイのみならず、ビジネスシーンやハンティング、ゴルフなどのスポーツ用途にも使われるようになり、アメリカ人の日常に無くてはならない存在へとなっていく。
銀幕では西部劇で名を馳せたジョン・ウェインがステットソンのウエスタンハットを被り、歴代のアメリカ大統領が着用することで、ステットソンはまさに「アメリカの象徴」へと登り詰めたのだった。
興味深いエピソードがある。それまでのアメリカ大統領はハットを愛用し、大統領就任式の際にはハットを被り登壇することが多かったが、第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディは、1961年、ハットを被らず無帽で自身の大統領就任式を行った。これにより、ステットソンの売れ行きが激減してしまったというのだ。
ケネディ人気もさることながら、それほどまでに大統領=ステットソンのイメージを定着させ、アメリカ国民の行動を左右するステットソンの凄さが、このエピソードからもおわかりいただけるだろう(その後、ケネディは1963年にテキサス州ダラスで暗殺され、その後任で大統領に就任したジョンソンはハットを愛用していたため、ステットソン人気が盛り返したという)。
ステットソンがアメリカのシンボルだということは、海を越えて遠く日本まで波及し、かつて昭和天皇や吉田茂元首相が訪米した際には、アメリカに敬意を表して、ステットソンを被ったという逸話も残されている。アメリカの歴史と共に歩んできたステットソンを、今の時代も被ることのできる我々は幸せだ。
こちらがジョニー・デップも愛用する代表モデル! Made in U.S.A. WHIPPET
Material:Beaver + Fur
Color:Black/Navy/Charcoal Gray/Light Gray
Price:¥42,120
1938年の誕生以来多くの著名人に愛され、今なおステットソンを代表するモデルとして人気を博すWHIPPET(ウィペット)は、イギリスの競争犬であるウィペットの持つ「男らしさ」「軽やかさ」「スピーディ」「上品さ」というイメージをデザインソースとして作られたモデル。流麗なラインのクラウンとやや広めのブリムを持ち、ワイルドかつ美しいデザインが特徴的だ。
ステットソンのハットは、職人の手仕事から生まれる。
歴史ある、ステットソンファクトリーでハットがどのように作られているのか、その様子をもう少し詳しく見ていこう。
ファクトリーの一角には、大量のハットが乾燥されていた。ハットを作る際、スチームや熱による成形と乾燥が交互に何度も行われる。
帽体に木型を入れ、スチームを当てて成形する「型入れ」。木型は色によりモデル分けされ、約4000個のストックがあるという。
昆虫由来の「シェラック」と呼ばれる液体を用いて「型入れ」した帽体の内側を磨き、フェルトの毛羽立ちを取り除いている。
ファクトリーの片隅にひっそりと置いてあった木型製作マシン。非常に古い機械だが、いまでもたまに使うことがあるという。
素材のフェルトはテキサスにある別の工場で作られており、写真のような状態でこのガーランドのファクトリーに運ばれてくる。これを成形することでステットソンのハットは作られる。保管するBODY ROOMには常時5万個をストックしている。
マシンにハットをセットし、ヤスリでフェルトの毛羽を落としていく。
スウェットバンドには、ステットソンのロゴとMADE IN U.S.A.の文字が刻印される。
日本人の頭型にぴったりのステットソンはいかが? WHIPPET / JAPAN LIMITED
ステットソンを代表する名モデルであるウィペットだが、現在では、日本人の頭型に合わせた限定モデルもラインナップされ、自分のスタイルに合ったモデルを選ぶことが出来る。
Made in U.S.A. Vintage WHIPPET
Material:Beaver 100%
Color:Sand Gray/Black
Price:¥86,400
U.S.A.製のWHIPPETをベースにクラウンを高くしヴィンテージモデルを再現。頭型を日本人仕様にしたU.S.A.生産の日本別注モデル。
Made in U.S.A. Vintage WHIPPET ver.3
Material:Fur 10%+Wool 90%
Color:Beige/Black/
Charcoal Gray/Orange
Price:¥28,080
上のVintage WHIPPETと同デザインながら、素材をファーとウールにすることでお求めやすい価格を実現した日本限定仕様。
Made in U.S.A. Dusty WHIPPET
Material:Wool 100%
Color:Black/Brown
Price:¥29,160
U.S.A.製WHIPPETをベースに、ヴィンテージ加工を施した日本限定のスペシャルモデル。本体や巻き飾りにいたるまで、アメリカの職人が1点1点ヤスリやサンドブラストで丁寧に加工を施し、長年使いこんだような風合いが楽しめる。U.S.A.の材料を使用したフラットブリム仕様。
◆
アメリカの歴史を彩ってきたハットを、日本人に適したサイズ感で着用できるとは最高すぎない? あの大統領や銀幕のスターを気取ってカッコよく着こなしてみてはいかがでだろうか。
【問い合わせ】
JOHN B.STETSON TOKYO
TEL03-5652-5890
http://stetson.jp
(出典/「Lightning 2021年6月号 Vol.326」)
Text/T.Ogawa 小川高寛 Photo/S.Inamori 稲森聡 M.Watanabe 渡辺昌彦
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