カスタムでスクランブラー本来の姿を追求する「AKO MOTORCYCLE アコウモーターサイクル」。

その昔、スクランブラーは市販車を改造したバックヤードビルドだった。今なおそんなスクランブラー本来の姿を追い求め、自らカスタムしたバイクでレースにも参加する凄腕ビルダーを紹介する!

スクランブラーはレースに勝つためのカスタムがルーツ。

スクランブラーの語源は諸説あるが、スタートラインに並んだバイクがスクランブル(緊急発進)するかのごとく飛び出して行く様から、一斉にスタートするオフロードレースをスクランブラーレースと呼んだことに始まるといわれている。

そして’60年代にはオフロード用バイクが存在しなかったため、市販車をベースにオフロード走行ができるように改造したレースカーでデザートレースに挑んでいた。そんな市販車の改造バイクをスクランブラーと呼んだのだ。

デザートレースに出場していた当時の人たちと、全く同じプロセスで生まれるスクランブラー。

「AKO MOTORCYCLE」代表・赤穂共昭さん|元々ショップオープン前にはヤマハでエンジンの開発を行っていたという赤穂さん。必然的に今でもヤマハ車を取り扱うことが多いという

ここ数年スクランブラーが人気だ。オフロード走行の性能を上げつつ、モトクロッサーとは違う戦闘的なスタイルは、街乗りでも似合う。

静岡県袋井市にある「アコウモーターサイクル」は、そんなスクランブラー本来のスタイルを追求し、市販車をカスタムしてオフロードレースに参戦しているショップ。代表の赤穂さんは、自らもSRカスタムでレースに参戦している。

「子供の頃からバイク好きというよりメカ好きでした。当時パリダカのレースをテレビで見て、華やかなライダーではなく、メカニックになりたいと思ってた変わった子供でしたから(笑)。それが大学の時にモンキーを買って突然バイクにハマリ、今では乗るのもイジるのもどちらも大好きです」

自宅からほど近い林道にテストがてら走りに行くことも多いという。つい先日も耐久レースに参戦、見事優勝を果たしたそうだ

こだわりの「1998 YAMAHA SR400」カスタム。

この角度から見るとエンジンが直立しているのが良く判る。また、スイングアームを20㎜詰めることでコンパクトかつ腰高に見せている

今回紹介するのは、赤穂さんの愛車でレースにも参戦しているSRのカスタムだ。単にサスを長くしてオフロードタイヤを履いてもこの雰囲気にはたどりつけない。実はメインフレーム以外、ほとんどの部位に手が加えられている。

「ノーマルでは前傾しているエンジンを直立にマウントし直したり、リアまわりをショート加工することで、旧い英国車的な雰囲気とマスの集中化を狙っています。またシートフレームを一度切り離して上方へ付け直すことで、車高自体をあまり上げることなくタイヤとフェンダーにクリアランスを与えています。全てはノーマルSRの雰囲気を大きく壊さずにヴィンテージ感とオフロード走行へ対応するための加工です」

’60年代にデザートレースで活躍したトライアンフなどの英国車をモチーフに、現代のSR400でその雰囲気を再現している

問題に直面すると、それを解決するために修正を加工し、再び問題に直面し……、を繰り返した結果、赤穂さんのSRは現在の姿になっている。つまり赤穂さんは市販車を加工してデザートレースに出場していた当時の人たちと全く同じプロセスをたどっていることになる。これこそスクランブラーの本当の意味での原点であり、本来の姿なのだ。

ラリーレイドを思わせるヘッドライト周りもワンオフ。レース場で素早く取り外しゼッケンに変更できるようになっている
当時デザートレースで人気だったBATES製シート。’60年代のヴィンテージの表皮のみを使い、ベースはSRに合わせてワンオフ
マフラーはアップスイープのワンオフ。キャブはAMALを採用し、見た目、走りともにヴィンテージ感を与えている

ダートが似合うカスタムにこだわる「アコモ」。

現在は自宅ガレージを工房として使っているため、決して広くない店内に、作業を待つバイクがずらりと並ぶ。壁には一面純正パーツがストックされる。

ショップの中には旧いバイクの純正パーツが大量にストックされていた。良く見ると棚にも「ヤマハ純正部品コーナー」の文字が。

【DATA】
アコウモーターサイクル
akomotorcycle@gmail.com
http://ako-mc.blogspot.jp
営業/11:00~19:00
休み/不定休

(出典/「Lightning 2017年5月号 Vol.277」)

この記事を書いた人
サカサモト
この記事を書いた人

サカサモト

アメカジ系動画ディレクター

Lightning、2nd、CLUTCH Magazineの公式YouTubeチャンネル「CLUTCHMAN TV」のディレクター。元Lightning副編集長ということもあり、クルマ、バイク、ミリタリーなど幅広い分野に精通。現在はもっぱら動画作成機材に夢中。ニックネームは、スキンヘッドにヒゲ面をいう「逆さ絵」のような顔に由来する。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

Pick Up おすすめ記事

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...