そこで、アメリカンカルチャー誌「Lightning」編集長・松島親方と革とミリタリーに精通する編集部・モヒカン小川が「観るべきオトコ映画」を案内する。
今回はオチもなけりゃ、洒落もない。映画だけに留まらず、TVドラマシリーズにまで話は及ぶことに。対談時間約3時間をギュッと凝縮してお伝えする。対談のあとに、戦争映画を見つくしてきたふたりのおすすめベスト5を紹介しているので、ぜひお試しあれ。
ライトニング編集長・松島親方
映画に限らず戦争をテーマにした作品を少年時代から手に取ってきた戦記オタク。夢は世界の戦跡めぐりをすること。
革ジャン評論家・モヒカン小川
若い頃の夢は戦場カメラマン。飛行機マニアでもあるので、実機が登場する映画に心振るわせる。特に旧日本軍機が好き。
アメリカ対日本の戦争映画を観るときは覚悟を持って臨むべし。それはエンタメの域を超えてしまうから。(松島親方)
松島親方(以下松)いつか2人で本を出そうって話してた企画が、遂に実現だよ。2ページだけど。
モヒカン小川(以下モ)一冊が2ページかよ。チカラねぇなぁ、編集長。
松 2人で本を出すなんて、いつになるかわからない。それよりも、いまこのご時世にやらなきゃいけないって使命感だよ。たとえ2ページでも。
モ 「観なきゃならない映画」って言ってるけど、本を出すのは戦争映画だっただろ?
松 あ、「戦争映画」って言ったら、他のスタッフに冷ややかな目で見られるから、ただ「オトコ映画」って言ってページをもらった。中身は戦争映画の話だけで行こう。
モ チカラねぇなぁ、編集長。
松 いいの、いいの。ページ取ったもん勝ちだから。で、さっそくだけど、読者の皆さんが観なきゃならん映画、モヒカン小川は何を推す?
モ まずは、『グッドモーニング、ベトナム』だな。ベトナム戦争が舞台なんだけど、戦闘シーンがまるでない。『プラトーン』とか、『フルメタルジャケット』、『地獄の黙示録』、それに『ディア・ハンター』とか、ベトナム戦争映画には凄惨な戦闘シーンを持つ名作が多いんだけど、この映画はアプローチがちょっと違うんだよ。
松 主役のロビン・ウィリアムスって平和の象徴みたいな顔してるじゃん。本来、戦争映画向きの俳優じゃないんだよ、顔が。そのギャップが、妙にリアルなんだよね。
モ 音楽も平和だよね。時代を伝えるような音楽が、心に刺さる。
松 俺はベトナム映画だったら、『カジュアリティーズ』。主人公のマイケル・J・フォックスがロビン・ウィリアムスと同じで、顔が平和なんだよ。TVドラマの『ファミリータイズ』と映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで大ブレイクしたコメディ俳優が、いきなり、どよーんとした戦争のリアルを伝える『カジュアリティーズ』でしょ。ショックがデカすぎた。
戦争映画と一括りで言うけど実際は細かくカテゴリー分けできる。やはり「実機モノ」は迫力が違うな。(モヒカン小川)
モ 戦争映画って一括りで言うけど、じつは凄くジャンルが分かれてると思うんだよね。悲惨な戦場をリアルに伝えるものもあれば、政治的な駆け引きを伝えるものもある。非戦闘員を主人公にする映画は悲しいだけ。俺は、戦場カメラマン3部作と自分で言ってるんだけど、『サルバドル〜遥かなる日々〜』、『キリング・フィールド』、『地雷を踏んだらサヨウナラ』の3作は何回も観てる。全部、戦場カメラマンの話なんだよね。若い頃、憧れた職業だから。
松 ならなくて良かったねぇ、戦場カメラマン。キミは人生で数々の地雷を踏んで、苦労もしただろうけど、命はある。戦場だったら、まさにサヨウナラだもんなぁ。踏んできた人生の地雷の数を考えたら、戦場カメラマンは不向きだと思うよ。
モ やかまし!
松 ヒット作の多い大戦モノは?
モ もう、これは日本映画だよ。日本人として、『日本のいちばん長い日』。岡本喜八監督の古いバージョンね。日本の運命を決める濃密な時間が刻々と描かれている大作。あれは、日本人なら観なくちゃならない。
松 確かに役所広司主演の新作は、あまり印象に残っていないんだよなぁ。映画館で観たのに。結婚してから夫婦で観に行った3度目の映画。だから覚えてるんだけど。
モ 夫婦で戦争映画なんて観に行くことあるの?
松 1本目が『Uボート ディレクターズカット』で、2作目が『シン・レッド・ライン』。
モ 3本全部、戦争映画ってどんな夫婦だよ。しかも、重いやつばかり。
松 あ、楽しんでるのは俺だけね。
モ なんかホッとするよ。
松 大戦モノはいっぱいあるけど、皮肉にも全編日本語進行のハリウッド映画だな、俺は。辛いなぁ。
モ 『硫黄島からの手紙』かぁ。その話はよそう。観たことある人が多いだろうから。
松 太平洋戦争モノは日本人には辛い。戦場モノも銃後の話も。軽く話せなくなっちゃうよね。史実を受け止めなきゃならない。エンタメの域を超えちゃうんだよね。
モ 観た方がいい。絶対観るべきなんだけど、俺たちがここで語っちゃいけない。そのネタは本を出すときにとっておこう。
松 2ページには収まらなくなるだろうし。
モ じゃ、ヨーロッパ戦線にしよう。
松 最近の映画では『イミテーション・ゲーム』が面白かった。エニグマの暗号解読に天才数学者が挑む話。あとは『遠すぎた橋』とか
モ 俺は『空軍大戦略』。実機を使っているんだよね。大戦モノじゃないけど『トコリの橋』も実機モノとしては秀逸。あとね、日本が戦中に作った『加藤隼戦闘隊』も実機モノ。凄いのはさ、敵の米軍機も実機なの。戦争中に鹵獲したイギリスのスピット・ファイアを飛ばしてる。
松 それ、凄いね。でも、そんな映画、どこで観られるの?
モ それがさ、これもアマゾンプライムビデオで観られるんだよ。
松 マジか! 戦時中のプロパガンダ映画だろ。GHQに怒られる。
モ アマゾン・ビデオは戦争映画は充実しているよ。マニアックな作品も多い。
松 ロシアの戦争映画とかも観られるんだよ。ドキュメンタリーもあるしね。あとは『バンド・オブ・ブラザース』ね。映画じゃないけど、アマゾン・ビデオで観られる。
モ テレビドラマじゃんか。でも、あれは観るべきだ。しかも、外出が減ってる今なら一気に観られるもんな。
松 そう、勢いで『ザ・パシフィック』まで。同じスタッフが手掛けている……しかし、『ザ・パシフィック』はアメリカ対日本だから、覚悟して観てもらわないと。
モ そうだな。『プライべート・ライアン』を観て、『バンド・オブ・ブラザース』を観ていない人がいたら、お仕置きだよ。
松 そりゃ、お仕置きだ。『劇場版ドラえもん』を観て、TV版を観たことがないっていうのと同じくらいのことだからな。
モ ミリタリーファッションが好きな人も見どころ満載。
松 ところで、『ボヘミアン・ラプソディ』で、すっかり有名人になったラミ・マレックが『ザ・パシフィック』に出てるの知ってた?
モ え、そうなの?
松 フレディ・マーキュリー役のラミ・マレックより、俺は『ザ・パシフィック』の彼の方が好きだな。
モ アマゾンで観られる?
松 吹替版まで観られる。『バンド・オブ・ブラザース』も『ザ・パシフィック』も10話完結だから、たっぷり時間のある時にしか観られないでしょ。今がチャンス!
モ おうち時間企画はそれでいいんじゃない? こんな時こそ!
松 こんな時だからできることのイチオシが戦争ドラマって……。
モ 心は常に臨戦態勢!
松 いいこと言ってるつもりだろうけど、まったく意味不明だな。
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