履くほどに感じる機能性と美しさ。
19世紀に英国の乗馬用ブーツとして生まれたジョドファーブーツ。徳永氏が手掛けたこのブーツのラストには、マンソンラストに独自の修正を加えたオリジナルラストが採用され、ダイレクトウエルト製法で仕上げている。
「そもそもこの靴を作ろうと思ったのは、私事なんですが、子供の保育園に行く機会が増え、靴を脱ぎ履きすることが多くなって、そこでもっと楽で、かつカッコいい靴は作れないかと考えた際に思いついたのがこのデザインです」
一見、ベルトがくるりと回ったブーツに脱ぎ履きしやすそうとは思えないが、よく見ると通常のデザインとはベルトの仕様が異なるのを理解できるだろうか?
「通常のベルトの取り方とは逆配置にし、バックルも長め、力を入れずに片手ですぐに外せるような仕組みを考えました」
脱ぎ履きしやすい=ズボラな靴とならないようにエレガントなデザインやフォルムを崩していないところに彼のデザインの素晴らしさを感じる。また、ブラックは茶芯のホースバットを使用し、エイジングを含めた方向から楽しめるのがこの靴の魅力だ。
サンプルとして製作したジョドファーブーツを約1年、ヘビーに履き続けた。マテリアルは茶芯のホースバットを採用し、履き続けることで中の茶色が現れ、美しい履き皺とともにエイジングを楽しむことができる。気品のある佇まいと武骨さを兼ね備えたブーツだ。
(出典/「CLUTCH2024年5月号 Vol.95」)
Photo by Nanako Hidaka 日高菜々子 Text by Tamaki Itakura 板倉環