横浜で現在も親しまれる レトロモダンのビル。
山下公園通りから内陸側の水町通りに面する噂のインペリアルビル。竣工したのはなんと戦前の1930年。大正末期から昭和初期にかけてモダニズム建築を得意とし、活躍した建築家、川崎鉄三が建築設計に携わった史実は残されている。当時、この建築家が関わった建物は他にも同じ横浜市の中区海岸通りに2棟、ジャパンエキスプレスビルと昭和ビルが、現在も残されているのは興味深い。
このインペリアルビル、実は設計時から外国人専用のアパートメントホテル、つまり長期滞在型ホテルとして設計されていたという。そのため、内観はいまでも異国の空気が流れているような昭和レトロモダンな内装、階段や踊り場にもヴィンテージ愛に詰まったインテリアが置かれている情緒溢れる空間に仕上がっている。
また本来は4階建だったようだが戦後、接収した進駐軍らによって屋上にペントハウスを増築。いつの間にか5階建のビルへとカスタムされている。現在は各階ごとにテナントや会社オフィスとして使われている。このビルで取材したCLUTCH編集部が気になったテナントは4店舗。それぞれ借主が昭和レトロモダンな内装をどう活用しているのか覗いてみることにしよう。
1.Sound Co.
ヴィンテージのワークやミリタリーからインスピレーションを受けコレクションを展開するSoundman。どこか上品かつスタイリッシュな印象を受けるのは、主に英国ヴィンテージをモチーフとしているから。基本的に205号室はディレクターの今井氏がオフィスとして活用しているものの、土曜日のみウィークエンドストアとして一般開放している。
【DATA】
Sound Co.
Tel.045-225-8918
https://www.soundman.jp
2.UNION WORKS YOKOHAMA
304号室はレザーシューズをメインとしたシューシャイン、シューリペアで知られるUNION WORKS 横浜店。都内近郊で営業する他店に比べてゆったりとした店内は、販売するシューズのほか、バッグやショップコラボアイテムのウエアも販売。リペアはもちろん靴磨きなどのサービスも行なっているため、空いた時間を利用してみるのも良いだろう。
【DATA】
UNION WORKS 横浜店
Tel.045-307-3743
https://www.union-works.co.jp
3.Tailor Grand
渋谷のテーラーで修行したのち、2010 年に独立。店を構えるなら地元が理想だと思い不動産屋を通して物件を探したがなかなか良い物件に出会えず。納得するカタチで、自分の足で探そうと見始めた頃、馴染みのBAR THREE MARTINIの店主から教えてもらったのがインペリアルビル。以来、301 号室で長年、オーダースーツを手掛けている。
【DATA】
Tailor Grand
Tel.045-681-7050
http://tailorgrand.com
4.T.Shirakashi Bootmaker
30代で靴の専門学校に通いつつ靴作りの世界へ。ビスポークシューズ店での修行を経て、夢だった独立を果たしたのが10年前。ハウススタイルはブーツだが、現在はどのハイトも特に関係なくオーダーを受け付けている。もともとTailor Grandの長谷井氏と友人だったことからインペリアルビル最上階の504Aに拠点を移してきたという。
【DATA】
T.Shirakashi Bootmaker
https://shirakashi.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典/「CLUTCH2023年8月号 Vol.92」)
Photo by Masahiro Nagata 永田雅裕 Text by Tamaki Itakura 板倉環
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