その1つでありアイビーにとっての最重要アイテムが「ネイビーブレザー」だ。もっともアイビー特有のディテー ルが多いブレザーは覚えることもたくさんだ。心してかかりたい。
ネイビーブレザーの、アイビー必携のディテールはこの6つ
1.ナチュラルショルダー
肩周りに芯地をあまり使わず、自然な肩の丸みが出るように設計されたナチュラルショルダー。男らしく威厳をアピールするためのパッドを排除した、自然体を好むアメリカ人らしい革新的ディテール。
2.ボックスシルエット
英国式のジャケットは、腰回りのシェイプを効かせることで、構築的なシルエットの美しさを演出したが、一方アイビーらしいシルエットはシェイプの効いていないボックス型が基本。多様な体型や、幅広い年齢層にマッチするよう、腰のくびれを表現するフロントダーツを排除したとされている。
3.段返り3つボタン
最重要なアイビーディテール。第1ボタンのボタンホールがおおよそ半分くらい見えていること、さらに段返ったうえで見えている第1ボタンのホールステッチが、裏側用の粗末な縫いではなく、綺麗な表側用になっていることが理想。
4.2つ袖ボタン
かつて英国で王を護衛する近衛騎兵は地域ごとにボタン袖の数が異 なっていた。3、4、5個などはあっても、英国に2個は存在しなかったため、アメリカのブレザーは2個を選んだという謂れがある。
5.センターベント
その昔、乗馬をする際、裾が突っ張らないように考案されたディテールで、日本のテーラーでは「馬乗り」と呼称される。比較的スポーティな意匠と言えるだろう。ちなみに、サイドベンツは「剣吊り」と呼ばれる。
ベントの開き止まりが、その名の通りカギ状になっているもの。起源ははっきりとは分かっていないが、ピュアなアイビー好きはこのディテールを熱望する。
6.金ボタン
ボタンの素材はそれぞれだが王道は金のメタルボタン。パッチポケット同様、ボート競技のユニフォームで自身の所属チームを示すため、金色でエンブレムが入っているという説が濃厚。
ブレザーの起源とは?
ブレザーにはシングルとダブルで、それぞれの源流があると考えられている。シングルの場合は、「ボート競技のユニフォーム」説が濃厚だ。英国の由緒正しき大学、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学のボート部が初めて対抗戦を行ったのが、おおよそ1820年代後半のこと。その当時は、まだブレザーは存在していなかったとされている。
時は経ち1877年、テムズ川で行われた対抗戦の際に、ケンブリッジ側の「レディ・マーガレット・ボ ートクラブ」というチームが、真っ赤なブレザーをユニフォームとして着用していた。そんな彼らを見た観客たちが「炎みたいだ(Blazer!)」と叫び、 そこからブレザーと呼ばれるようになったという説。だからこそ、この時のユニフォームは、テーラードでないからこそのパッチポケット、寒さ防止のフランネル生地&ノーベントというディテールだったという話もある。
一方ダブルの起源は、「ブレイザー号」説。1837年、英国の軍艦ブレイザー号をヴィクトリア女王が訪問することになり、さすがに女王の前でみすぼらしい格好をするわけにはいかないため、艦長がメタルボタンの付いたネイビージ ャケットを水兵たちに着せたという説。これがずばりダブルブレステッドのジャケットだったということのようだ。遥か昔のことで断言はできないものの、特に有力なのはこれらの説である。
生地の種類は「コットン」「ホップサック」「ウールサージ」
コットン
ことブレザーに関して言えば、ウールに比べて正統派とは言えない。だが、本来スポーティなアイテムであるアイビーブレザーだからこそ、長いシーズン着られる軽快なコットンも選択肢のひとつだ
ホップサック
糸を粗く平織りしたもので、麻袋の質感に似ていることからその名がつけられた。ガシガシとした質感で、通気性や耐久性もよく、春夏向けの生地。ウール、コットン、いずれでも作られる。
ウールサージ
スーツや学校の制服などで使われている、超定番生地。平織りのホップサックと違って、梳毛糸を使い綾織りで織ったもので、滑らかで高級感のある表面が特徴。季節感も問わないので重宝する。
ダブルのブレザーをニューポートブレザーと呼べばアイビー通
段返り3つボタンのシング ルブレザーのイメージが先行しているが、軍服由来のダブルブレザーも、もちろんアイビー(そうは言って も、もしあなたがブレザーを一着も持っていないならシングルから買うべきだろうが)。『TAKE IVY』の制作者であるくろすとしゆき 氏が名付けた “ニューポート・ブレザー” という呼び名で呼べば、よりアイビーっぽい。ボタンの数は6つではなく4つがベター。
ブレザー史に残る4大ブランドとは?
1.BROOKS BROTHERS(ブルックス ブラザーズ)【Since 1818】
それまでの常識であった英国由 来の構築的なスーツを、ボックスシルエット&ナチュラルショルダーという革新的なディテールで、カジュアルに落とし込んだ傑作[NO.1 サックスーツ]、 通称 I 型(いちがた)。紛れもなくネイビーブレザーの元祖だ。
2.J.press(Jプレス)【Since 1902】
アイビーリーグの花形、イェール大学のキャンパスとは目と鼻の先にテーラーを構えて以来、いまでも同地に本店を構えつづける希有なブランド。120年以上もの間、アイビーリーガーたちに寄り添い、学生たちへと誂えたブレザーは数知れず。
3.VAN(ヴァン)【Since 1951】
和製アイビー文化の基礎を築いたVANは当然ブレザーにおいても日本国内で発表した先駆者のひとつ。ほかの海外ブランドにはない、日本人による日本人のためのブレザーは生地の選定やシルエットづくりにおいても独自の感性によるものだった。
4.Polo Ralph Lauren(ポロ ラルフローレン)【Since 1967】
近年ブレザースタイルをより幅広い世代に浸透させたポロ ラルフローレン。アメトラの起源であるブリティッシュトラッドからの影響が強いため、上3ブランドに比べてブレザーの解釈は英国的で自由度が高い。袖ボタンも唯一2つではなく4つだ。
2nd編集部がおすすめする、アイビーブレザー8選
1.BROOKS BROTHERS
Material: Wool Surge
Vent: Center vent
Price: ¥86,900
同ブランドで最もトラディショナルなモデル。毛羽立ちの少ないファインサージ生地を採用した背抜き仕様で、3シーズンにわたって着用が可能だ。(ブルックス ブラザーズ ジャパンTEL0120-02-1818)
2.H by FIGER
Material: Cotton Surge
Vent: Hook Vent
Price: ¥53,900
適度なざらつきを残したコットン100% で、カラーはシックなダークネイビー。3パッチポケット、袖の額縁仕上げなどのディテールにこだわったブランドの自信作。(ザボウ渋谷店 03-3461-7773)
3.BOGLIOLI
Material: Wool Surge
Vent: Hook Vent
Price: ¥140,800
1890年代に伝統的なサルトリアとしてイタリアで創業したブランドの1着を現代的にアップデート。ややナロウなラペルとシンプルなボタンが特長。(ビームス F TEL03-3470-3946)
4.Southwick
Material: Wool Hopsack
Vent: Hook Vent
Price: ¥110,000
米国本土で新たに開拓した工場にて縫製を行った価値のある一着。生地は中肉のウールで、真夏を除いた3シーズンで着用が可能。(シップス 銀座店 TEL03-3564-5547)
5.KINGSWOOD
Material: Wool Surge
Vent: Center Vent
Price: ¥48,400
Vゾーンのバランスを重要視し、1つ掛けでボタンをした際に第一ボタンが隠れるようにラペルの返し位置を設定。生地には耐久性に優れたウールサージを使用。(メインTEL03-3264-3738)
6.VAN
Material: Wool Surge
Vent: Side Vents
Price: ¥47,300
アメリカ東岸の地名から「ニューポート・ブレザー」と名付けられたダブルブレストの新作。すっきりとした後ろ姿になるよう、サイドベンツで仕上げた。(ヴァンヂャケットTEL03-5829-9005)
7.BEAMS PLUS
Material: Wool Surge
Vent: Hook Vent
Price: ¥46,200
アイビーリーガーたちが愛用していたダブルのスポーツコートをベースにボタンは6つではなく4つ。シェットランドウール60%、羊毛40%の秋冬仕様。(ビームス プラス 原宿TEL03-3746-5851)
8.J.PRESS ORIGINALS
Material: Wool Gabardine
Vent: Hook Vent
Price: ¥62,700
ゆったりとしたバギーフィットのダブルブレスト。ウール100%のギャバジンで、適度なハリ感を残しつつも、ドレープが綺麗に出る上品でエレガントな印象。(J.プレス & サンズ青山TEL03-6805-0315)
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