【CASE1】草野健一(ケネスフィールド/デザイナー)|現代だったら……、を大切にするものづくり。
’80年代以降のアメリカントラディショナルスタイルを中心に、各国のカルチャーに注目したものづくりを行うケネスフィールド。言うなればモダンクラシックとでも言うべき絶妙なさじ加減に、業界内でも愛用者が多い。デザイナーはビームス プラスの元ディレクターである草野健一さん。
彼のヴィンテージに対する知見の深さと、現代的視点も忘れないそのバランス感覚を求めて、とあるふたつのアウトドアブランドが草野さんに声をかけた。ハンティング・ワールドとウールリッチである。
ハンティング・ワールドは50年以上、ウールリッチはなんと190年以上もの歴史を誇り、どちらもアウトドア業界に欠かせない存在である。そんなトップブランドに携わるうえで、草野さんはどのように考え、どのようにアイテムに落とし込んでいるのだろうか。
× HUNTING WORLD
1965年、それまでリー・エクスペディションズ社という探検会社を経営していたボブ・リー氏により、ニューヨークで創業したハンティング・ワールド。’72年生まれの[バチュー]はブランドのアイコンとなった。
草野さんが手掛けるのはバッグ以外のウエア全般で、スタートしたのは2021年春夏から。
「もとから大好きな世界観を持ったブランドでしたが、今はよりブランドの奥深さを実感しています。あくまで“実用品” であることにこだわったボブさんの意思は、特に尊重するように心がけているポイントです。ただし、そのままアーカイブを復刻させるのではなく、『本当に必要なディテールなのか』を考え、現代のフィルターを通すようにしています。それはケネスフィールドでも大事にしていることです。実際に趣味のフライフィッシングで使ってみて修正を加えたり、なんてこともやってますね(笑)」
2022年秋冬に登場を予定しているジャケットの1stサンプルを特別にお披露目。アーカイブをベースにしつつ、フラップの裏側に配されていたベルクロを排除したり、フードはより深く設定しなおした。
× WOOLRICH
1830年に創業したウールリッチ。1850年には、定番のバッファローチェック柄が誕生。そんな長い歴史のなかで生まれたヘリテージなウエアを、現代に蘇えらせるべく2019年春夏に立ち上げた“オーセンティックコレクション” には、草野さんの存在が欠かせなかった。マーケティング部の鈴さんは語る。
「アウトドアと聞くと“レジャー” を想像しがちですが、創業時にレジャーとしてのアウトドアは存在していなかったはずなので、鉄道開拓者や林業従事者らが外で着るための作業着という立ち位置だったと推測しています。つまり仕事をするうえで意味のある機能しか搭載しないわけですが、それらが機能美として美しく見えるわけです。その機能美を崩さないまま、いま改めて服を作るためには、『過去の歴史に対する造詣』、『服をデザインするうえでの知識』、そして単純に『着てかっこいいものをつくるセンス』が必要。この3つの要素をバランスよく兼ね備えているのが草野さんでした」
【CASE2】山根敏史(F/CE./デザイナー)|ブランドのストーリーを理解することが大前提。
’70年代のアウトドアカルチ ャーが好きで、古着も多数所有しているという山根さん。 ゴアテックスやロクヨンクロスの誕生など、アウトドア革新期を迎えていたこの年代にコロラド州で生まれたバッグ専業ブランドがマウンテンスミスだ。2019年春夏シーズンからアパレルの展開もスタートし、山根さんがデザイナーとして携わることになる。
「マウンテンスミスに関してはデザインをする際、何らかのアウトドアシーンを連想して、リアルな実用性をしっかり盛り込むようにしています。 ファッションっぽくなりすぎてしまうと、それはブランドのコンセプトを覆すことになってしまうので。一番大切なのは、ブランドの背景や作られた場所などをしっかり意識 して、それをアイテムに落とり込むこと。デザイナーとしてお誘いがあってから、実際にアメリカの本社を訪ねたりもしましたし、アメリカでは当たり前になっているサステ ナビリティの意識も持つようにしています」
× MOUNTAIN SMITH
【CASE3】大貫達正(ウエストオーバーオールズ/デザイナー)|ファッションとしてのアウトドアウエアに。
1966年コロラド州デンバー生まれのフロストライン。裁断されたパーツを自身で組み立てて、ダウンウエアを製作する〝ガーメントキット〞は当時かなり革新的で人気を博した。大貫さんは、昨年の秋冬からデザイナーとして参画している。
「こんなことを言うと怒られそうですが、僕はアウトドアがそんなに好きなわけではありません(笑)。でもフロストラインは、本格アウトドアブランドとしての側面とキットならではのデイリーなファッション性が含まれている。だからこそウエスタンヨークがデザインされていたりしますし、僕もそこが好きなんです。なので、お誘いをいただいた時も、『あくまでファッション性と機能美が融合したプロダクトに落とし込めるならやらせていただきます』と告げました。きっとアウトドアに対して僕みたいな温度感の人たちが他にもいるはずで、彼らが手に取ってくれるようなブランドになればと思っています」
× frostline
(出典/「2nd 2022年1月号 Vol.178」)
Photo/Nanako Hidaka, Satoshi Ohmura
関連する記事
-
- 2024.11.15
2nd最新号発売中。今回は2nd流アウトドアスタイルを大特集!