ウールからはじまったラグビーシャツの歴史と型。

昨年9月に大盛り上がりをみせたラグビーのワールドカップ。そもそもラグビーシャツは、アイビーやプレッピースタイルとの親和性が高く大人のスポーツミックスには不可欠。いまこそ、ラグビーシャツの歴史やデザインについて学んでおくべき時だ。

ラグビー誕生からのラガーシャツの素材の変遷とは?

1823年、フットボールの試合中にウィリアム・ウェッブ・エリス少年がボールを抱えてゴールを目指したのがラグビーの始まりだそう。その舞台となったのが、イングランドで老舗のパブリックスクール(名門私立学校)のラグビー校。上流階級の子息に愛好されたラグビーは、まずは南半球を含めた英連邦へと広まっていく。

スウェットシャツに代表されるアスレチックウエアの起源をたどると、素材にはウールが使われていたことに気づかされる。ラグビーシャツも然り。ラグビー王国ニュージーランドの代表にカンタベリーが供給していた1920年代製の1着もウール100%だった。綿100%が主流になったのは1950年代のこと。

1970年代には、軽量性や吸汗速乾性を追い求めて綿にポリエステルを混紡した素材が登場。2000年代に入ると、引き裂き強度の高さとさらなる軽量化を実現したポリエステル100%の素材に切り替わっていく。現在の最進化系は、同じポリエステルでもシャツの部位ごとに耐久性や伸縮性などの機能が異なる素材を融合させている。

ニュージーランド型とイングランド型の違いとは?

ラガーシャツを語るうえで外せない、ニュージーランド型とイングランド型のラガーシャツの違いを、2大ブランドとも言える、「カンタベリー」「アンブロ」で見ていこう。

【ニュージーランド代表】CANTERBURY(カンタベリー)

独自の混紡率で編み上げた綿ポリ生地“ラガーループ©” をこだわりのニュージーランド生産で再現。ヴィンテージのような1950年代当時の風格 を蘇らせた。(参考商品)

「カンタベリーがラグビーに対して本格的なアプローチを開始したのは、第一次世界大戦が終わってから。前身となったレーン・ウォーカー・ラドキン社の代表のひとりだったジョン・レーンが“ラグビーシャツを編んでほしい” と友人から頼まれたのがきっかけです」(岸さん)。

「カンタベリーオブニュージーランドジャパン」PR・岸昭全さん|20年以上に渡ってカンタベリーに携わるPR 担当。昨年9月のラグビーW 杯において、日本を盛り上げることに貢献した

同社によるウール100%のシャツはたちまち評判となり、1924年からはニュージーランド代表チームのユニフォームも手がけ始める。以降、70年以上に渡って公式サプライヤーを務めるなかで素材や細部において独自に進化。

「ニュージーランド型と称されているラグビーシャツを象徴する襟のディテールは、カンタベリーが1950年代に完成させたものです」。

頑丈で安全という作りこそラガーマンへの最高の贈り物だ。

1970年代製のアーカイブ。当時に登場したオリジナル素材のラガーループ©(綿52%、ポリエステル48%)を使用。“4インチストライプ” と呼ばれる太めのボーダーもカンタベリーでは定番的なもの。(参考商品)

【ディテール①】ダブルテープ&トリプルステッチ

襟の結合部は表裏の両面からテープをあしらい、3本のステッチで縫製。エンド部分は裏側から折り返してバータックで補強。

【ディテール②】ループネック

ニュージーランド型はひと続きの生地でネックをループ状にしている。破れにくく、背後から襟を引っ張られても危なくない。

【ディテール③】ラバーボタン

ループネックもそうだが、ラバーボタンを考案したのもカンタベリーだ。柔らかい素材なので自分も敵も傷つけることがない。

【歴史】現存では最古の100年ブランド。

1904年、靴下などを編む工場と羊毛工場が合併。この時に誕生したレーン・ウォーカー・ラドキン社が前身だ。

【こだわり】コンセプトは“世界一タフな活動着”。

「The Worldʼs Toughest ActiveWear(世界一タフな活動着)」をコンセプトに掲げるカンタベリーは、1920年代から特別な編み機を使ってラグビーシャツの素材を編み立ててきた。

【イングランド代表】UMBRO(アンブロ)

昨年秋冬シーズンよりアーカイブから着想したコレクションが始動した。素材や柄、ディテールは1960年代のモデルから継承し街着としてのアレンジが施されている。参考商品

アンブロは英国の音楽やサッカーが好きな人にとってはお馴染みのマンチェスターで創業している。「マンチェスターは“コットンポリス” とも呼ばれてきた街。霧が多くて多湿な土地柄が綿花の保管に適していたので、世界中から綿が集まってきました。それもあって、コットン素材を使ったスポーツアパレルがアンブロの強みになったのです」(冨田さん)。

「デサントジャパン」MD・冨田裕也さん|かつてはセレクトショップで企画を担当。新しいコレクションは、アンブロのラグビーシャツを街で着てもらうべく企画した

そもそもミルスペックに基づいて軍服を生産していたブランドだから、機能性が問われるスポーツウエアはお手のもの。

「ラグビーはイングランドで生まれ、英国の上流階級が愛した紳士のスポーツ。だから、ユニフォームは襟付きなのです」。

イングランド型の襟周りは、きっちりと頑強に仕上げられているだけでなく紳士の風格を備えている。

アンブロは1940年代からラグビーシャツの生産を開始。1958年製の貴重なヴィンテージがこちらだ。素材はコットン100%だが細番手の糸で柔らかい肌触りに仕上げられている。相手から掴まれにくいタイトフィットが主流。(参考商品)

【ディテール①】台襟&トップボタン付き

襟があるのはもちろん、試合後の交流会にネクタイを着用して出られるようにトップボタン付きなのもイングランド型の特徴。

【ディテール②】6センチ幅のボーダー。

アンブロのフラッグシップとされるボーダー柄は、幅が6センチ。カンタベリーの4インチと比べてみるとだいぶ細い。

【ディテール③】動き易い脇下のガゼット仕様。

脇の下のフロント側とバック側にそれぞれ別生地で切り替えをあしらっている。手間のかかる工程を経て、動きやすさを確保。

【歴史】ミルスペックをもった世界初のスポーツブランド。

1924年に創業した当時は、軍服やボーイスカウト用ウエアを手がけていた。多くのスポーツブランドは靴
から歴史をスタートさせているが、ミルスペックに準拠したウエアからというのは珍しい。

【カタログ】1960年代のカタログをレシピに完全再現。

貴重な資料として保管されている1960年代のセールスカタログではボディの素材や柄、襟のディテールなどについての詳しい解説を見ることができる。今秋から立ち上がる「アンブロハウス」コレクションでは当時のレシピが活かされている。

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

遊び心とヘビーデューティ! 「ジムマスター」のアウトドア&ミリタリー

  • 2026.10.18

ほどよく力の抜けたカジュアルウエアを展開するカナダ生まれの「ジムマスター」。その真骨頂は、実は骨太なアウトドア&ミリタリーにある。ヘビーデューティな機能美を日常着へと昇華させる秘訣は、「ジムマスター」らしいほんのすこしの遊び心! カラフルな配色の裏に確かな実用性あり! 【右】主役は厚手のボアジャケッ...

東京・入谷にできた靴づくりの新聖地「THE ZINE FOOTWEAR CLUB.」にメディア初潜入!

  • 2026.10.18

「ブラザーブリッジ」や「シュアブーツ」を手がける「ザ ジン フットウェア」。店舗と企画・縫製工場がひとつになったいわば“本拠地”を入谷に新設した。メディア初公開となる、その全貌に迫る。 メーカーでもあり店舗でもある新拠点 弊誌の読者であれば、おそらく「ブラザーブリッジ」という革靴ブランドはご存知であ...

Pick Up おすすめ記事

ヒートツイードとは? 軽くて薄くて暖かい、英国派に捧ぐ革命ツイード

  • 2026.10.26

〈トラディショナル ウェザーウェア〉が誇る人気シリーズ、ヒートツイード。英国ツイードのオーセンティックな雰囲気はそのままに、驚くほど軽く、保温性の高いオリジナル生地。一度味わうとやみつき間違いなし! 英国らしくも、軽くて暖かなツイード生地は現代的ヘビーデューティ素材の最適解である。 【コート】ブラン...

19世紀から英国紳士に愛され続ける世界最高峰のハンドメイド傘

  • 2026.10.19

年間を通じて降水頻度が高い英国において傘は必需品。ひいては英国紳士を象徴するプロダクトのひとつだ。その中でも、旧くから英国王室や上流階級の紳士たちに愛されてきたFOX UMBRELLAS(フォックス アンブレラズ)は最上級の存在である。 手作業から生まれる圧倒的な造形美 真のトラッド好きは服だけでな...

メイド・イン・ノーサンプトンを貫く英国靴の筆頭「Crockett & Jones」のモノづくり

  • 2026.10.21

革靴の聖地であるノーサンプトンにて1879年に初声をあげた〈クロケット&ジョーンズ〉。英国靴を語る上で欠かすことのできない同ブランドのモノづくりの現場に足を運んだ。 一足の革靴に宿る147年の歴史と誇り 革靴産業の一大拠点として名を馳せる英国・ノーサンプトン。中世から靴職人が集まり、17世紀には軍用...

遊び心とヘビーデューティ! 「ジムマスター」のアウトドア&ミリタリー

  • 2026.10.18

ほどよく力の抜けたカジュアルウエアを展開するカナダ生まれの「ジムマスター」。その真骨頂は、実は骨太なアウトドア&ミリタリーにある。ヘビーデューティな機能美を日常着へと昇華させる秘訣は、「ジムマスター」らしいほんのすこしの遊び心! カラフルな配色の裏に確かな実用性あり! 【右】主役は厚手のボアジャケッ...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR