『小さいことは、いいことだ!?』
オープニングトークは、トレタの代表である中村仁さんと、飲食店や商業施設のプロデュースを行うカゲンの子安大輔さんで、行われた。
「小さいお店は、経営が不安定で、ワンオペで大変……という印象でした。しかし、パンデミックがあってスモールビジネスの方がリスクが少ないということで、『小さいお店』が見直されている傾向がありますよね」
「ITの導入も、大資本のチェーン店が導入する印象が強いですが、『小さいお店』だからこそ、ITを利用して省力化をする必要があるという側面もあります」
というわけで、以下の3つのセッションが行われた。
小さいからこそ、予約で100%効率
まず、最初は、東新宿のカレー店、サンラサーの有澤まりこさん。
サンラサーは、5席しかない上に、営業時間は11〜15時の4時間で、1日30食しか提供されないお店。しかも、週の営業日は約3日。しかし、トレタの予約システムを使うことで、営業時間中はビッチリと予約が入り、非常に効率がいい。
これにより、小さなお店でも非常に効率がよく、その上で、テレビやイベントなどへの出演、料理教室、講演、メニュー監修、ケータリング、イベント出店、通信販売の冷凍カレーの製造など、他のビジネスをハンドリングすることができる。
誰かを雇って効率を低下させるより、『有澤まりこさん』という、個人の魅力とパフォーマンスを100%発揮する店舗運営が可能となっているのだ。
これもまた、トレタの予約システムというITを使うことで、『小さなお店』のパフォーマンスを大きく上げた事例である。
小さいからこそ、ロボットで効率化
次に登場されたのは、DFA Roboticsの山本雄士さん。
最近、ファミレスなどでも見かけるようになった、配膳ロボットを販売導入している会社だ。
配膳ロボットといえば、ファミレスチェーンなどの大きなお店で使われてるもののような気がするが、実はワンオペの小さなお店でも役に立つというお話だ。
配膳ロボットは、文字通り『配膳』に使われていることをイメージしてしまうが、実は『バッシング』、つまり下膳に役立つのだそうだ。
配膳では、人が行っている方が『サーブされている』という感じもするし、そこはできれば人がやりたいというお店も多い。しかし、実は同じぐらいバッシングという仕事も発生している。大量のお皿を一気に積んで、テーブルから厨房に下げる……という仕事は、実はロボットの方が役に立つ。人の4倍の量のお皿を一時に運べる。食べ終わったお皿をいち早く下げることで、次の注文を促すこともできるし、お客様が帰られたあとのバッシングを素早く行うことで、席の回転率も向上する。
そして、単にものを運ぶ……という労働から開放されることで、スタッフが対面でのサービスに時間が使えるようになるという効果もあるのだそうだ。
小さいお店での成功事例もある。35席(15坪)をワンオペで回す居酒屋でも活用例があり、配膳に3割程度、バッシングにフル活用することで、ひとりでお店を回すことができるようになったのだという。
人間のスタッフを雇って、その教育や、シフトの設定に苦労するより、ロボット導入で自分の効率を100%にした方が結果として上手くいったとのこと。
小さいからこそ、突出したコンセプト
最後のセッションは『ミナデイン』という、地域特化型、コンセプト重視の飲食店経営会社の代表を務めていらっしゃる大久保伸隆さん。
たとえば、新橋にある『烏森百薬』は、全国各地の名店からの料理を取り寄せて提供することで、店内調理を極限まで減らしたスタイル。にもかかわらず、全国の名店の料理を食べられるということで人気。
おなじく新橋の『らんたん』は。家庭料理がカウンターに並ぶ『小料理屋』を再現。誰が食べても懐かしい味を、『女将』が中心になってサーブするというコンセプト。『THE 赤提灯』は、新橋のガード下の赤提灯文化を再定義。『STAND BY Mi』は、ミシュラン星付き・食べログGoldなどを獲得したトップシェフたちの料理を比較的リーズナブルな価格で味わえる食のセレクトショップ……という具合に、突出したコンセプトを持つお店を次々とプロデュースして成功。さらに、地方都市で業態開発を行ったり、食文化の保全事業を行ったりしているという会社。
小さなお店でも、突出したコンセプトを持たせることで、収益性の高いビジネスを行うことができるという非常に興味深い話だった。
『テクノロジーと人』という永遠のテーマ
FOODITの話は、テクノロジーの側面だけではない、人間味のある『店舗経営の話』がたっぷり聞けて、とても面白かった。どうしても、労働負荷の大きくなりがちな飲食店経営だが、テクノロジーをうまく活用することで、まだまだ新たな可能性が広がりそうで、非常に面白かった。次はリアルイベントとしての開催を期待したい。
(村上タクタ)
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