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BALMUDA Phoneを手に、スマホの未来を考えてみる

「BALMUDA Phoneを1台長期で貸し出すからさ、タクちゃんしばらく使ってみてよ」というのは、ACCN(あっくん)こと矢崎飛鳥さん。

言わずとしれた元週アスPlusの編集長で週刊アスキーの副編集長にして、最後のEngadget日本版編集長。12年ほど前に他分野からIT系メディアに飛び込んだ筆者と違って生粋のIT系メディア編集長。フリック!編集長としてアップルのUS取材をし始めたばかりの筆者に、いろいろと助け船を出してくれたりして以来親しくしている。同じく長年、編集長という業の深い仕事をしているから、お互いにしか分からない悩みもあって、通じる部分がある(と筆者は思っている)。

彼が、Engadget日本版が本国の方針で終了した次に選んだ仕事はBALMUDA Phoneの開発。週刊アスキー時代に『スマホ』という言葉を考え(当時は、スマフォ、スマフォンなどの呼び方のうちどれを採用するか、メディアの中でも割れていた)普及させた人物がスマホを作ろうというのだ。編集者が、なぜ、製品開発に? 不思議なことだが、彼は「ガジェットメディアとしてやりたかったことはやり尽くした。自分で製品を開発してみたい」と言った。

※その後、ACCNのポジションはBALMUDAの『エバンジェリスト』へと進化した。

筆者は、iPhone以外のスマホに興味がなく、仕事柄もあって幾度もAndroid携帯を使おうとしてみたことがあるのだが、これまでまったく興味を持つことができなかった。iPhoneで事足りるし、iPhoneに不満はないからだ。

という筆者に冒頭のひと言である。正直、今でも興味ない(笑)。でも、ACCNが言うなら、一度使ってみるか……というのが今。

ACCNから送られて来た宅配便には、BALMUDA Phone本体の他、非接触充電器、アダプター、ケーブルなどが含まれていた。

BALMUDA Phoneはなぜ失敗したという評判になったのか

BALMUDA Phoneと言えば大失敗したスマホというのが一般の印象だろう。そして、それをなんとかするために、呼ばれたのがACCNだ。「スマホを知り尽くした男なら、次のスマホに何が必要なのか分かるだろう」ということなのだろう。

そもそも、なぜBALMUDA Phoneは開発され、大失敗した(と言われている)のだろう?

BALMUDAは、従来の盲点を突いた優れた商品を作る、お洒落な家電ブランドだという評判だ(筆者は使ったことはないが)。しかし、企業のルーツはMacの冷却台にあった。IT系の製品は、いつか再び登らなければならない山だったのかもしれない。

梱包はiPhoneが主導した高品質なパッケージの流れとは違う。そこまで高級感はない。意図的なものなのか、コストをかけられなかったのか?

アップルとGoogle、そしてGoogleが提供するOSを使うSamsung、HUAWEI、Xiaomi、Sony、OPPO……などの巨大企業がしのぎを削るスマホ市場に、今から参入するなんて、正気の沙汰ではない。しかし、十分に熟考し、真剣に開発した商品を市場に出した。だが、市場やメディア側は、そのコンセプトを深くは考えずに並み居る先行商品と比較して、酷評した。そういうことなのだと筆者は思っている。

たぶん、BALMUDAにはBALMUDAなりのコンセプトがあったのだと思う。クルマでいえば、独自の『走る楽しみ』を追求したコンパクトスポーツだったのに、いきなり500馬力級のスーパーGTベースマシンと比較されて「遅いね」っていわれた……っていう感じのことなんだと思っている。市場やメディア側の理解も足りなかったし、それを涵養する準備も足りなかった。また、多くの人がこの機能から想像する価格と、実際に提示された価格がマッチしなかったということもあるだろう。

では、本来スマホはどう進化すべきなのか?

さて。話はここから本題。

超ハイパフォーマンスで20万円前後もするiPhone 14 Proや、大画面を折り畳めるGalaxy Z Fold4が正しい進化の果てなのだろうか? さらに、高価、高性能になり、大画面になっていくのがスマホの未来なのだろうか?

iPhone 14 Pro(右)とBALMUDA Phone(左)を較べてみた。実はディスプレイサイズはそこまで大きな違いはない。

2008年7月に、表参道のソフトバンクに行列して買ったiPhone 3Gは、今のiPhoneよりはるかに小さかった。それが理想だとは思わないが、どんどん大画面化するのが正しいのかどうかは分からない。

2008年当時。「ガラケーでなく、iPhone!」を切望した筆者が求めたのは、ポケットに入るモバイルパソコンだった(つまり、筆者が考え得たのはW-ZERO3のような端末だった)。しかし、iPhoneはマルチタッチディスプレイの活用というアイデアを得て、『ポケットに入るモバイルパソコン』以上のカタチに進化した。

『極力小さな端末、極力大きな画面』の果ては?

筆者は、究極的にはスマホはディスプレイのない『処理と通信』を行う端末になると思っている。

『極力小さな端末、極力大きな画面』を求めるのは無理がある。どこかでディスプレイはグラスや網膜に投映するか、直接脳内に送り込むとか、何か別のカタチになるのではないかと思う。となると、インターネットと接続できる通信機能と、プロセッサがあればいいということになる。

指紋登録など初期設定は、Android OSを搭載しているBALMUDA PhoneもiPhoneと大きな違いはない。

しかし、その、『ディスプレイはグラスや網膜に投映するか、直接脳内に送り込む』いう手段はまだまだ手に入りそうもないので、当分は『極力小さな端末、極力大きな画面』を追求し続けることになるのだろう。

とても小さな充電アダプターと、盆栽皿のようにシンプルな非接触充電器。

使ってみたら、何かが分かる?

『そうではない! 理想のサイズはiPhone 3Gで、それは変えずに優れた使い勝手をクリエイトしよう』というのがBALMUDA Phoneなのだと思っている。

いや、使ってないのに筆者が断言するのもなんなのだが。だから、これからお借りしたBALMUDA Phoneをしばらく使ってみようと思う。

最初に書いた通り、筆者はiPhoneを気に入っている。機能的にも、デザイン的にも気に入っている。セキュリティの能力、統一された使い勝手、iCloud、Mac、iPad、Apple Watch、AirPodsなどとの連携が生む便利さは他に勝るものはないと思う。

しかし、高性能化、大画面化というエスカレートの果てにあるのは常に破滅であり、マーケットの再構築だ。恐竜を見ても、『高性能な日本のケータイ(ガラケー)』の進化の果てを見てもそれは明らかだ。

BALMUDAがその先を見たいと望んでいるのは(今のところ成功はしていないと思うが)確かだと思う。Windows Phone、トリニティの『NuAns NEO』、Tizen、Firefox OS、Black Berry……幾多の『第3軸』が成功しなかったのはたしかだが、だからといって、永遠にiPhoneと、一般的なAndroidだけでいいというものでもないだろう。

角を丸くして本体のエッジギリギリまで拡大されたディスプレイ。手に馴染むアールのついた本体。そして、洗練されたデザインの非接触充電器。 何か、従来にないものを作りたい……という欲求は感じる。

ACCNの「タクちゃんしばらく使ってみてよ」という言葉にしたがって、しばらくBALMUDA Phoneを使ってみようと思う。何か気がついたら、またレポートする。

(村上タクタ)

 

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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