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完全自由なiPad利用にこそ、教育がある——近大附属中高iPad導入10年

『GIGAスクール構想』で日本中の学校にiPadをはじめとしたコンピュータが配布されたが、かならずしもすべての学校で有効に活用できているわけではない。多くのiPad導入校を取材してきた筆者の経験から言うと、『制限の少ない学校ほど成功している』。

約10年前からiPadを導入して、今や『iPadのない教育は考えられない』という近畿大学附属高等学校・中学校の教育改革推進室室長である乾武司先生に、成功する学校へのiPad導入について話を聞いた。

2011年にiPadを使って「これはイケる」と感じた

近大附属中高がiPadを導入したのは、2013年のことだった。

「それ以前からいろいろと検討はしていたんです。2000年当時に、Windowsのネットブックを試したりもしていました。でも全然パワーが足りなくて、私の仕事をするにも性能が足りなかったし、私が足りないと感じるなら、生徒達が使っても物足りないだろうと」

「でも、2011年に発売されて間もないiPadを使っていて『これはイケる』って思いました。自分で出張の時に使ってみても、iPadだけで用が足りる。仕事もできるし、本も読めるし、音楽を作ったりもできる」

すぐに、全校での導入検討を開始し、2013年から導入した。

App Storeの安全性があるからこそ。サイドローディング可能にはしないで欲しい

2013年時点では、まだデータをクラウドにおいていいかなどの議論もあったが、可能な限り生徒に委ねた管理を行った。

せっかく導入するのだから、「学習のみに関わらず、生活のさまざまな場面で活用して欲しい」と、App Storeにあるあらゆるアプリを導入可能な状態にした。

「アップルのApp Storeは、もともとプログラムレベルで全部審査がかかっていますから、個人情報などの大切なデータを盗んだり、セキュリティに問題があったりするようなアプリはありません。公序良俗に反するようなものがありません。だから、我々もApp Storeのものであれば、安心して生徒に使わせられるのです」

「昨今、サイドローディング(App Storeを介さないアプリのダウンロード)を可能にすべきというような議論がありますが、それは絶対やめて欲しいです。我々が安心して使える状況だから、生徒達に安心して使わせられる状況であるはずです。これがたとえば、情報漏洩リスクがあるアプリとか、ハックされるリスクがあるアプリなどをインストールできる状況になってしまったら、生徒達にリスクがあるのはもちろん、一般ユーザーの方にとっても危険なはずです」

たしかに、子供や高齢者の方が使う可能性のあるデバイスだからこそ、現在の安全性の高い状況は重要だ。

生徒は自由にアプリをインストールできる

同校では、アップルのマネージドApple ID(管理対象Apple ID)という仕組みを使わず、個人のスマホのアカウントで運用しているので、生徒達が自由にアプリをインストールできる。

全体のアカウント管理にはもちろんMDM(モバイル・デバイス・マネージメント)が使われており、学校のWi-Fiのプロファイルや、学校独自のアプリなどがインストールされる。

「現在、アプリなどに制限はかけていません。もちろんMDMを使えばそういうこともできます。ただ、できる限り子供たちの自主性に任せていきたいと考えてきました」

自主性に任せる方針に、保護者の方からの『不安だ』というような意見はないのだろうか?

「そういうご意見は聞いた事がありません。ウチは私立です。『iPadを自由に使わせますよ』ということは、募集要項にも書いてあります。しかも、入学時に時期によっては10万円以上したiPadを購入してもらっています。ですから、保護者の方は最初からウチのやり方に賛同下さってる方だけがいらっしゃってると思います」

いろんな問題は起こるが、そこにこそ教育がある

YouTubeや、SNSも自由に使わせているということで、問題は発生しないのだろうか?

「YouTubeは、教師側から授業の参考動画を多めに伝えるようにしています。生徒がそういう動画を見ると、YouTubeからリコメンドされる関連動画もそういうものが増えていきます。そうやって、意図的に関連動画の方向性を誘導しているというのはあります」

「SNS関してはもちろん、いろいろ問題も起こります。でも、SNSを使っている前提ですから、いろいろと相談にも乗れますし、指導もできます。iPad導入以前は、本校でも携帯端末の所持自体を禁止していた時代があります。そうなると、SNSをしていないというタテマエですから指導もできません。問題点を見ないフリをしていたワケです」

「いろんな問題は起こりますが、そこにこそ教育があるワケです。当時の方針を決めた校長が『万引きがあるからといって、店を開かんわけにはいかんよな』と言っていました。もし、在学中使わせなかったとしたら、卒業した途端に指導をされないまま、いきなりSNSを使い始めるわけです。その方が問題だと思います」

もちろん、SNSの問題や、著作権、個人情報などについては、情報教育の授業であらかじめキチンと指導もされるそうだ。

自由に使わせて、きちんと正しい方向に導き、指導する。『いろんな問題はありますが、そこにこそ教育があります』という乾先生の言葉に、非常に大切なものがあると思う。

(村上タクタ)

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村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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