軽くて安価なのに、明るいという絶妙な立ち位置
2018年9月にEOS R、ならびにRFマウントが発表されてから6年が経ち、RFレンズもかなり充実してきた。標準ズームもかなり充実してきたが、一般的には選択肢は以下のようになるだろう。
〈24-105mmのシリーズ〉
RF24-105mm F4-7.1 IS STM(7万3150円)
RF24-105mm F4 L IS USM(18万4800円)
RF24-105mm F2.8 L IS USM Z(49万5000円)
〈24もしくは28-70mmのシリーズ〉
RF24-70mm F2.8 L IS USM(34万1000円)
RF28-70mm F2 L USM(45万6500円)
一般的な方だと、RF24-105mm F4-7.1かRF24-105mm F4をお使いなのではないかと思う。もちろん、もっと明るいレンズを求める方もいらっしゃるだろうが、30万円を超えるとちょっとプロの領域だと思う(そして、筆者はプロカメラマンではないので、この記事はプロ向きには書いていない。そのレベルの方は別のもっと専門的な記事をお読みいただきたい)。
筆者もこの2本で悩んで、明るいレンズに関しては別途、RF35mm F1.8 MACRO IS STMとRF85mm F2 MACRO IS STMを買ってカバーすることにして、標準ズームとしてはRF24-105mm F4-7.1を購入した。価格の問題もあるが、普段の取材活動では、軽くて取り回しがいいことが大切だからだ。
筆者の用途から言うと、取材中、撮らないといけないシチュエーションで、確実にピントが合って撮影できることが大切なのだ。撮れるか撮れないかでいうと、最大8段もの手ブレ補正を活用すると、かなり暗い状況でも手ブレせずに撮ることはできる。あとは、ボケを出したければ、RF35mm F1.8とRF85mm F2に交換するというわけだ。
しかし、新たに登場したRF28-70mm F2.8 IS STM(18万8100円)はその両方の領域をカバーしてくれる可能性がある。つまり、それなりにリーズナブルで(18万8100円がリーズナブルかどうかという議論はさておき)、軽くて、しかも普段の撮影で必要に応じて F2.8のボケを演出できる。これは筆者のようなユーザーのために作られたレンズではないか! と思ったのだ。
サイズ感的にも、筆者のEOS R6 Mark IIにジャストフィットだ。
ちなみに、STMレンズであるからか、 Lレンズではなにので赤いラインは入っていない。この点について、キヤノンのエンジニアの方に聞いてみたが、 Lレンズの認証基準は社内的にも非公開とのこと。公開されると、その基準だけをクリアするレンズが登場しかねないからで、あくまでトータルでの性能で基準を満たしたレンズが赤いラインを施されるということだ。
日常使いに使えて、充分にボケる明るさ
というわけで、しばらくお借りして日常使いに使ってみた。
まずは、某所の新製品発表時の取材。
普段遣いで、標準レンズを使いながら、必要に応じてこのボケが出せるのは素晴らしい。これまで筆者はこういう写真を撮るためにいちいちRF85mm F2に交換していた。取材に行く時もレンズを1本に出来るのなら荷物を軽くできる。
自宅で、静物を撮ってみた。
これが一番広角な28mmの状態。
こちらが、望遠端の70mm。比較的コンパクトでリーズナブルなレンズとしては素晴らしいボケっぷりだと思う。RFレンズの素晴らしい点だろう。
インタビューなどにも使って便利だった。他の人の写真を勝手に出すわけにはいかないので、ViXionの取材の時に、筆者を撮ってもらった写真を。
背景がこのぐらいボケれば、ポートレート写真としても使えなくはないと思う。筆者のレベルだと、インタビュー写真にも使える。
広角も望遠も良好
外に持ち出してみた。
ワイド端で風景を入れながら、花を撮ってみた。ここから望遠端で寄るとこんな感じ。
楽しいボケっぷりだ。非常に便利なレンズだと思う。
たとえば、F4の標準ズームと何が違うのか?
では、なぜこのレンズが、他のレンズに対してリーズナブルなのかを他のレンズと較べながら考えてみよう。
左が筆者が普段使っているRF24-105mm F4-7.1 IS STM(7万3150円)。右がその上位版とでも言うべきRF24-105mm F4 L IS USM(18万4800円)。中央が今回の主役であるRF28-70mm F2.8 IS STM(18万8100円)。
28-70mmはF2.8という明るさとともに、コンパクト、低価格を実現している。対して、RF24-105mm F4はLレンズの称号を持ちながら明るさはF4に留まる。価格もほぼ同じ。
ではRF28-70mm F2.8が、明るさと軽さを得た代わりに失ったものは何なのか?
まずは、こちらの写真を見ていただきたい。RF28-70mm F2.8のワイド端だ。
続いて、RF24-105mm F4の広角端。
わずか4mmの差だが、かなり広い範囲が写っていることがお分かりいただけるだろう。この差が後ろに下がれない室内などでは大きく響く。普段の取材で28mmだとちょっと厳しいと感じることは多かった。
続いて、RF28-70mm F2.8の望遠端。
F2.8のおかげで、背景から浮き立って見えることがお分かりいただけると思う。
続いてRF24-105mm F4で同じ焦点距離にしてみた。
F2.8と、F4の差で、こちらはボケが少し少ないことがお分かりいだだけるだろうか? この点がRF28-70mm F2.8のストロングポイントだ。
しかし、RF24-105mm F4は105mmまで寄れる。
RF24-105mm F4は逆に、この最大焦点距離を使ってボケを作り出せるのだ。
24mmと28mm、70mmと105mmというズーム域の差は大きい。望遠の方は足で稼げばいいのだが、広角側は部屋の中などでもう下がれないことが多い。筆者の取材でのシチュエーションでいえば、広角側の4mmの方が欲しいことが多かった。
筆者にとって残念な点
もうひとつ欠点があった。このRF28-70mm F2.8、最大撮影距離が大きく、寄れないのだ。
実は、筆者にとっては、これがこのレンズの一番残念な点だった。
まず、RF28-70mm F2.8の望遠側で可能な限り近寄って撮影。AFでピントが合うのはこの画角まで。
開いてみると周囲がボケてはいるが、製品の詳細撮影をするには少し寄り切れていない(まぁ、解像度を必要としないウェブ記事ならトリミングという手はあるが)。ちなみに最大撮影倍率は0.24倍。
対して、RF85mm F2なら、ここまで寄れる。iPhoneの超広角カメラのレンズの撮影の記事なら、この写真の方が細かい情報を伝えられるだろう。ちなみに、最大撮影倍率は0.5倍である。
レンズ選びとは自分に必要な要素の取捨選択
というわけで、明るくて、コンパクトで、価格もリーズナブルであることに間違いはない。STMであることのデメリットはもはやあまりないから、とてもいい選択肢だと思う。
筆者の取材シーンでいえば、これ1本で、普段使いの取材の多くのシチュエーションで使えるし、ボケ味を演出してポートレートカットなどにも使える。とても便利なレンズだ。
一方、若干、足りない点としては、ワイド端、ズーム端の不足だろう。ポートレートなどで使うなら問題ないが、取材などで部屋全体を写したいとか、立ち位置が変えられないけど、もっと寄りたい……というようなシチュエーションはまま起こりえる。
そして、筆者にとって一番の問題点は寄れないこと。商品写真を撮ることが多い筆者としては、RF24-105mm F4-7.1やRF85mm F2を手放して、このRF28-70mm F2.8に絞る……ということはできないと感じた。もちろん、買い足せる経済的余裕があれば欲しいレンズなのだが。
手軽にフットワークよくポートレートを撮ったりするのにはとてもいいレンズだと思う。欲しいけど、惜しい。筆者にとってはそう感じるレンズだった(もちろん、その性能が欲しいならお金を出せという話である)。つくづくレンズ選びとは、取捨選択なのだなぁ……と思う。
(村上タクタ)
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