感度の高いセレクトが光る横浜の専門店で、ヴィンテージ眼鏡への扉が開く。

今や眼鏡は視力矯正具という本来の目的を飛び出して、ファッション小物のひとつと言っても言い過ぎじゃない。日々のファッションを楽しむように、眼鏡もコーディネイトできれば上級者。でもせっかくだったらちょっとウンチクがあってクセのあるモノも持っていたい。そんな人たちの救世主となるのがヴィンテージ眼鏡。現代の眼鏡とはひと味違ったデザインや作り、それに年月が生み出す風合いは、その時代ならではの特徴を持っている。そんな眼鏡を探したいなら横浜にある「素敵眼鏡 michio」に行くべきだとお伝えしたい。その独特なヴィンテージ眼鏡のセレクトはファッション感度が高い業界人にも驚きと納得と知識を教えてくれる。

独自のセンスで国内外からバイイングしたヴィンテージ眼鏡が雰囲気のある空間に佇む。

横浜のランドマークである大桟橋やシルクセンターの近くにある築約100年という雰囲気のあるビル。映画やドラマのシーンを思わせるクラシカルな空間を店舗にした「素敵眼鏡 michio」。

店主であるミチオさんは元古着のバイヤー。

「昔から洋服だけでなく、クルマやバイクでも、とにかく旧いモノが好きで、古着に始まって今では眼鏡がメインのビジネスになりました。ヴィンテージの眼鏡はそれぞれの国の文化やデザイナー、それに製造していた工場などによって、それぞれの個性が特徴です。知れば知るほどおもしろくなって、2016年にヴィンテージ眼鏡の専門店を出すまでになりました」というヒストリー。

といっても店内にあるのは、誰もが想像しがちなヴィンテージ眼鏡店とは良い意味で違う。アメリカもあれば、英国、フランス、それに日本のヴィンテージまで。すべてミチオさんのセレクトで集められたもの。今では約3000本のヴィンテージを所有するほどになったという。

もちろん、ヴィンテージなので、一点物がほとんど。

といっても、手が届かないほどのスーパーヴィンテージばかりではなく、買いやすいプライスのヴィンテージをあえてメインにセレクトしているのもミチオさんらしい。

そんな一期一会の出会いにワクワクしながらゆったりとしたクラシカルな空間で眼鏡を選ぶ。そんな楽しい時間を提供してくれるのがここなのだ。ヴィンテージ眼鏡の挑戦したいならまずは横浜へ進路をとれとお伝えしたい。

セレクトした眼鏡のディスプレイにも良い意味でひと癖ある。

ギャラリーのようなショップにしたかったというミチオさんの思いを具現化した店舗は、あえて広い空間をぜいたくに使ったディスプレイ。ちょっとしたコーナーそれぞれに店主の感度の高さが光る。旧いモノが好きならば、隅々まで見渡したくなる衝動が抑えきれない。

スコットランドのスコッチ「オールドパー」のボトルとKFCのカップと古本を合わせるディスプレイ。和洋の絶妙なバランス感覚にヴィンテージ眼鏡が佇んでいる
絵画に眼鏡をかけさせるだけでなく、アンティークのボトルにドライフラワーを挿して並べるなど、いわゆる「ふつー」の眼鏡店では味わうことのない世界観がうれしい
ハーマンミラーを代表する名品であるイームズデザインのプライウッドチェアの上には眼鏡をあえて掛けさせたバボちゃん! その高すぎる感度は勉強にしかならない
1958年製のトラのぬいぐるみのハンティングトロフィはショップの守り神的なキャラクター。もちろんヴィンテージ眼鏡をかけて店内の世界観を統一させる。恐れ入ります
米国初のソフビ製キャラクタードールとして名高いハンガーフォード社製のチャーリー・ブラウンもライトスタンドにカスタムされてひょっとこのお面をセット。ヴィンテージ眼鏡を見る前にそのディスプレイに目が行ってしまっていいものか

今、旬なのは英国や日本のヴィンテージ。

眼鏡に詳しくなくても、雰囲気やカラー、それにシェイプなど、まずは自分のお気に入りを選べばいいよというのがここのスタンス。そうして選んだモデルがどんな年代、どんな国のモノでもいいんです。ギャラリーのような空間でじっくりと選べる。そんななかから、店主ミチオさんのおすすめヴィンテージをピックアップしてもらった。

英国製Hilton Classicの1970年代のモデル。14カラットのロールドゴールドになり、眼鏡工房であるアルガワークスがまだ英国で質実剛健な製品を作っていたころのモデル。6万6000円
1989年にフランスで誕生した眼鏡ブランドであるMATSUDAの2000年代初頭のモデル。テンプルに入る手の込んだ装飾が秀逸。MATSUDAは2000年ころのモデルを数多くストックしている。これは2万7500円

オリジナルモデルもちらほらと。

ストックのほとんどがヴィンテージだけど、最近ではオリジナルアイテムも登場。どれも数々のヴィンテージ眼鏡を見てきた経験値を落とし込んだデザインやシェイプが秀逸。ヴィンテージはハードルが高いと思っている方はまずはオリジナルからというチョイスも可能。

オリジナルブランドの「一寸一杯」はウディ・アレンがかけていた眼鏡をモチーフに、日本製でアレンジした飽きの来ないデザイン。数々のヴィンテージモデルを見てきた経験が凝縮された1本。2万7500円
2022年にルノー・ジャポン公認でコラボレーションしたルノー・カングーをモチーフにしたサングラスである「Kanglasses(カングラス)」はまだ数本の在庫あり。カングー乗りはぜひ。各2万円

【DATA】
素敵眼鏡 michio
神奈川県横浜市中区海岸通1-1
ジャパンエクスプレスビル2F
13時~19時 水曜日定休
https://niceglasses.thebase.in
https://www.instagram.com/sutekimeganemichio/

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

Pick Up おすすめ記事

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...