試験に出ない(笑)、アメ車(アメリカ旧車)のボディスタイルに見る種類豊富な多様性。

1970年代まで、世界のモータリゼーションをリードしていたアメリカ。オイルショック以降は日本や欧州車の台頭によって、その差は縮まったけど、かつて世界をリードしていた時代は、ユーザーの好みやライフスタイルによって、同じ車種でも多くのボディバリエーションが存在していた。そんな往年のアメリカ車に存在した基本的なボディスタイルを紹介。現代では4ドアボディでかつてのセダンよりもSUVやクロスオーバータイプが主流だけど、当時のアメリカには現代ではまず存在しえないスタイルもあるなど、各メーカーによる多くの試行錯誤も見ることができて実におもしろかったりする。

ドアの枚数だけはない多様なボディスタイルがおもしろい。

多民族国家であるアメリカでは、人々の文化やライフスタイルも多種多様。そんなお国柄も手伝って、アメリカの自動車の歴史には多くのボディスタイルが存在していることが当たり前だった。それもアメリカ国内で自動車産業が元気だった背景があったからこそ。現代車両ではボディバリエーションもシンプルになったけれど、かつてはメーカー側も試行錯誤をしながら多くのボディバリエーションにチャレンジしていた。

クルマにあまり興味が無い人にはハイレベル間違い探しのような違いだけど、それぞれのスタイルに需要があったからこそ存在していたのは事実。かつてのアメリカ車には同じモデルでも2ドアからコンバーチブル、それに4ドアやワゴンまで存在していることも珍しくなかった。現代車両ではなかなかお目にかかれないデザインも存在していたのは、まさに旧車ならではなのかもしれない。

そのなかでも基本的なボディスタイルを挙げてみようと思ったら、それだけでも14種類! それぞれの亜種もあるので、いかにバリエーションが豊富だったかがよくわかる。

1.2ドアセダン

世界的にもスタンダードな2ドアの箱形スタイルのひとつ。セダンとはBピラー(ドアのすぐ後方の柱)が存在しているボディスタイルのこと。このBピラーと呼ばれる柱があることからアメリカではポストセダンとも呼ばれている。いわゆるスタンダードな昔ながらの箱形のスタイルで、おっさん臭いけれど、ドラッグレースなどではボディ剛性が高くなるセダンボディが好まれたという歴史もある。写真は1963年式フォード・フェアレーン2ドアセダン(Photo by Ford Motor Company)

2.2ドアクーペ(ハードトップ)

Bピラーが存在せず、この写真のように窓を全開にすれば開放感あふれる2ドアモデルが2ドアクーペと呼ばれるスタイル。後部座席が存在していても、スポーティなルックスになることから、スポーツクーペや2ドアハードトップ、ピラーレスクーペとも呼ばれる。アメリカ旧車のなかではもっとも人気のスタイル。写真は1964年式フォード・フェアレーン・スポーツクーペ(Photo by Ford Motor Company)

3.4ドアセダン

フロントのドア後方にBピラーが存在する4ドアモデルのこと。4ドアモデルのスタンダードなデザインで、いわゆる子どもが絵に描くようなクルマのカタチ。当時のファミリーカーには定番のボディスタイルで、現代になっても生き続けるデザイン。ただし2ドアモデルに比べるとボディサイドが間延びしたように見えるので、スタイルよりも実用性を重んじる人に愛された。写真は1964年式シボレー・シェベル・マリブ・4ドアセダン(Photo by General Motors)

4.4ドアハードトップ

Bピラーの存在しないボディを4ドア化したデザインが4ドアハードトップ。ファミリーカーでもスポーティなルックスは犠牲にしたくないという人にはうってつけのデザイン。前後の窓を全開した開放感はかなりのもので、4ドアながら野暮ったさの無いスタイルではあるけれど、ボディ剛性はセダンに劣ってしまう。現代ではBピラーが見えないようなデザインになる4ドアクーペなるモデルも生まれている。写真は1963年式ダッジ・カスタム880・4ドアハードトップ(Photo by Stellantis)

5.2ドアコンバーチブル

2ドアクーペ(ハードトップ)のボディデザインを踏襲しながら、ルーフ(屋根)が開閉できるオープンカーのこと。欧州ではカブリオレ、日本ではオープントップとも呼ばれる。かつてはキャンバス地のソフトトップが主流だったが、近年では折りたたんで格納できるメタル製トップが開発され、クローズド時には2ドアクーペ的なスタイルになるモデルも存在する。アメリカには衝突安全基準が厳しくなる1970年代くらいまでは多くのモデルでコンバーチブルの設定が存在した。写真は1970年式ダッジ・チャレンジャー・コンバーチブル(Photo by Stellantis)

6.4ドアコンバーチブル

コンバーチブルというと2ドアモデルがベースになっているのが主流だけれど、アメリカにはかつて4ドアのコンバーチブルも存在した。写真は1964年式リンカーン・コンチネンタル・コンバーチブル(Photo by Lincoln Motor Company)で、これまた珍しい観音開きの4ドアにして、大きなソフトトップは電動でトランクの中に収納されるというモデルだった。4ドアのフルサイズボディでルーフを開けたスタイルは、ボディの長さがかなり強調されて独特な存在感に。現在ではおそらく衝突安全基準をクリアできないデザインは、まさに時代が許したスタイルである。

7.ロードスター

後ろの座席の無い純粋な2シーターボディでルーフの無い形状のこと。戦前はホットロッドのベースとして人気なフォード・ロードスターなどがスタンダートだったが、時代とともにスポーツカーの定番スタイルとなり、アメリカ車ではシボレー・コルベットなど、限られたモデルで現在も存在している。格納できるソフトトップがあるので2ドアコンバーチブルの亜種ではあるが、2シーターにかぎりロードスターと呼ばれる。かつてはルーフの無いピックアップトラックであるロードスターピックアップなんていうスタイルも存在した。写真は1960年式シボレー・コルベット(Photo by General Motors)

8.ファストバッククーペ

2ドアボディを基本としながらボディ後方がなだらかにひと続きのラインで傾斜したデザインになるボディのこと。わかりやすく言えばトランク部分が独立したデザインになっていないスタイルで、アメリカ車では初代フォード・マスタングを筆頭に、各社が1960年代中盤以降に登場させた2ドアクーペの亜種がこれ。同じようなデザインは日本車や欧州車にも登場して、スポーティなルックスのクルマの代名詞になった。似たようなデザインでトランクスペースがリアガラスごと開閉できるデザインはハッチバックと呼ばれる。写真は1965年式フォード・マスタング・ファストバック(Photo by Ford Motor Company)

9.4ドアワゴン

4ドアセダンのトランクスペースの上部を拡大し、乗車スペースと荷物スペースが一体となったボディデザインがワゴン。元々ステーションワゴンと呼ばれていたのは、駅の送迎に人や荷物を積んでいくのに重宝するモデルということでそう呼ばれた。現代ではワゴンという呼び名が牧歌的すぎるせいで、シューティングブレーク、エステート、バリアントなどといった名前で呼ぶブランドも多い。写真は1957年式マーキュリー・コロニーパークワゴン(Photo by Ford Motor Company)

10.2ドアワゴン

ステーションワゴンというと4ドアモデルが一般的なイメージだけど、かつてのアメリカでは2ドアワゴンの存在も珍しくなかった。これはパーソナルユースで趣味の荷物なども積載できるように考案されたデザインで、アメリカでは旧くはランチワゴン(カウボーイなどが牧場で使用するワゴン)などという名前でも呼ばれていた。一人一台のお国柄らしいボディデザインかもしれない。写真は1957年式シボレー・ベルエア・ノマドで、これは当時の最高級ワゴンという位置付けで販売されていたモデルで、4ドアモデルのワゴンよりも高価格だった(Photo by General Motors)

11.ピックアップトラック

アメリカではセダンよりも販売台数が多いのがピックアップトラック。乗車スペースのキャビンとベッド(荷台)が独立しているスタイルで、キャビンには2ドア、1.5枚ドア、4ドアなどがあり、ベッドもロングとショートが存在。さらには後年には2駆と4駆などもチョイスできたことから、仕事からプライベートユースまで、オーナーのライフスタイルに合わせた組み合わせができた。戦前にはロードスターピックアップと呼ばれるオープンボディのピックアップトラックも存在していた。フルサイズのピックアップトラックは非常にアメリカ的。写真は1978年式フォードF-150(Photo by Ford Motor Company)

12.セダンピックアップ

アメリカらしい独特なボディデザインともいえるセダンピックアップは、ボディ前方がセダンのキャビンで、後方がピックアップトラックのベッドになっているというモデル。ピックアップトラックながら乗用車としての乗り心地やスポーツ走行までも可能なことで、長らくアメリカ車ならではのボディスタイルとして一般化していった。有名なのはフォード・ランチェロとシボレー・エルカミーノの存在。日本に存在したサニートラックやクラウンピックアップはこれらのアメリカ車にインスパイアされていたのは明らか。異形のフォルムがなんとも独創的。写真は1967年式シボレー・エルカミーノSS(Photo by General Motors)

13.バン

箱型のボディが特徴のバンは、もともとはコマーシャルユース(商用)で開発されたボディで、ピックアップトラックのシャシーがベースになっていたのが主流だった。エンジンが通常のクルマと同じようフロントノーズのエンジンフード内に収めているタイプと、エンジンフードの上までキャビンをレイアウトするデザインで積載性能をより高めたキャブオーバータイプが存在。レジャーの多様化で、現代ではプライベートでのバン需要も高まったことで、商用の簡素なデザインだけでなく人も荷物も載せられるモデルも存在する。もともとはフルサイズボディのフルサイズバンが主流だったが、1980年代には乗用車のシャシーにワゴンボディを拡大したボディを持ったミニバンが生まれてファミリー層の定番ボディになった。写真は1996年式ダッジ・ラムバン(Photo by Stellantis)

14.SUV

ピックアップトラックのシャシーに、ワゴンボディを架装し、4WD駆動のパワートレインで積載能力と悪路走破性の高さを両立させたのがSUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)。ステーションワゴンに変わって市民権を得たボディスタイルで、そのユーティリティの高さが人気となり、それまでのセダンの存在が希薄になるほど多くの人に受け入れられた。近年ではセダンなどの乗用車のコンポーネントを使って、SUVのボディを架装するというクロスオーバーも誕生。これはピックアップトラックほどのヘビーデューティなスペックを必要としない街乗り用SUVという位置付けで生まれ、現在ではこちらが主流になっている。写真は1995年式フォード・ブロンコ(Photo by Ford Motor Company)

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

歴史に残る空軍服を、いま再び。機能美が息づく「中田商店」のモーガンメンフィスベル

  • 2026.10.02

メンフィス・ベル号の機長、ロバート・K・モーガン氏との交流から始まったモーガンメンフィスベルは第二次世界大戦期の空を支えたフライトウエアを現代に蘇らせる中田商店のオリジナルブランド。極限の環境で求められた機能と、色褪せない完成されたデザインが魅力の航空服を紹介する。 R.A.F. Irvin She...

日本の技で蘇る、旧きよきアメリカンベーシック。100年前の起毛機を使った「DISCUS」のスウェット

  • 2026.09.18

「ディスカス アスレチック」の「MADE IN JAPAN」プロジェクト。和歌山で受け継がれる約100年前の起毛機とそれを支える職人の技。そのこだわりから生み出されるスウェットの魅力を追った。 スウェットの裏側に宿る百年起毛 1973年、アメリカで誕生した「ディスカスアスレチック」。その歴史を日本の...

名作[ハリケーントップ]誕生から40周年! 「CHUMS」の「ハローウェア」が再登場

  • 2026.09.23

「チャムス」の名作[ハリケーントップ]の誕生から40年を迎える今年、「ハローウェア」が再登場する。そのコレクションを紹介する前に、まずはブランドが歩んできた歴史を紐解いていこう。これまでの歩みを知れば、「ハローウェア」をもっと楽しめるはずだ。 ハロー、懐かしくて新しいチャムス サングラスを川に落とさ...

TRUE SWEATWEAR, MADE IN JAPAN. “未来のヴィンテージ”となる究極のスウェット。

  • 2026.09.29

スウェットやTシャツを中心に、高品質なプロダクトを創り続けるジャパンブランド「RIDING HIGH」。生地や糸より前の“綿”から開発するなど、徹底的なモノづくりの姿勢は国内外で高い評価を獲得している。そんな彼らが生み出すプロダクトは、すべてメイド・イン・ジャパンである。 [caption id="...

全16色! 10年以上のロングセラーを誇る「HEATH」の名作ネルシャツが超人気なワケ

  • 2026.09.30

秋冬のアメカジ服の定番、ネルシャツ。横浜のセレクトショップHEATHが手がけるオリジナルブランドBLUE PORTのネルシャツが10年以上のロングセラーを誇るとのことで、その人気の秘密に迫る。 【理由①】優れたコストパフォーマンス ディテールやシルエットにもこだわった高いクオリティに対して、なんと税...

Pick Up おすすめ記事

Why Banana Republic? 2nd編集部イチ押し「バナナ・リパブリック」アイテムと、ブランドの魅力を徹底解説

  • 2026.09.16

1978年にアメリカ・カリフォルニア州で創業したバナナ・リパブリック。クラシックとモダンが共存する唯一無二のスタイルや歴史を紐解くことで、我々が彼らのプロダクトを手に取るべき“理由”が見えてくる。(記事をご覧いただいた方への特典を最後に紹介しています) [caption id="attachment...

2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4人が集結! EDWINと考えるトラッド学

  • 2026.09.15

本誌でも何度も紹介してきたEDWINのコンセプトショップ限定アイテムは、普遍的なデザインとそのクオリティの高さから2ndが理想とするトラッドスタイルともばっちりハマる。今回は初の試みとして、2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4名で“EDWINで作るトラッド”を考えてみた。 20代らしくアクティ...

時間を重ねて、ヴィンテージになる。「RAGGY CLOTHING」の何年先も、格好いいと思える服

  • 2026.10.02

時代が変わっても、色褪せない格好よさがある。「ラギークロージング」が大切にするのは、流行に左右されない普遍的さ。アメリカンカジュアルの王道を、いまの時代に自然に着られる1着へと仕立てる。 旧きよき服を現代の日常に アメリカンカジュアルの王道を見つめながら、現代の日常に馴染む服を作る「ラギークロージン...

毎日に、最良の定番。B.V.D.の「GOLD」は昔ながらの良さと、いま欲しいバランスを兼ね備えたTシャツ

  • 2026.09.16

長く愛されてきた定番には、変わらない理由がある。B.V.D.の「GOLD」もそのひとつ。肌着として培ってきた心地よさをそのままに、今の気分で一枚でも着られるリラックスフィットが加わった。昔ながらの良さと、いま欲しいバランス。その両方を備えた、新しい定番のかたちを見ていこう。 変わらない着心地にゆとり...

TRUE SWEATWEAR, MADE IN JAPAN. “未来のヴィンテージ”となる究極のスウェット。

  • 2026.09.29

スウェットやTシャツを中心に、高品質なプロダクトを創り続けるジャパンブランド「RIDING HIGH」。生地や糸より前の“綿”から開発するなど、徹底的なモノづくりの姿勢は国内外で高い評価を獲得している。そんな彼らが生み出すプロダクトは、すべてメイド・イン・ジャパンである。 [caption id="...